指導者と保護者の「問いかけ力」は子どもの考える力を培う【3月特集】
2019年03月20日
コラム
指導者と選手が見ている状況をシンクロさせる
何のために状況を確認する問いかけをするのか?
それは、指導者と選手の見ている絵をシンクロさせたいからではないだろうか。なぜなら双方の目に映る絵が互いにシンクロしないと、指導者が選手に対して「状況を把握させ、選択肢を考えさせ、選ばせる」ことを求めることができないからだ。
ようするに、「考えることを子どもに要求する」ために、一番初めに指導者がアプローチすべきことは「自分が目にしている状況」と「子どもたち一人一人に見てほしい状況」とを具体的にシンクロさせる作業だ。ならば、どのようにして指導者の目にする状況と子どもの目に映る状況を一つずつ合わせていったらいいのだろうか。
ここでようやく「何を見るのか」というテーマにたどり着く。
最低限見るべきものは、敵と味方とスペースだ。指導者の場合は、そこに目的となる練習テーマが加わる。例えば、シュートがテーマならゴール、ゴールなしのポゼッションがテーマならボール保持。いずれにしろテーマ=目的を達成する経験を数多く積ませるためには、指導者が目的に応じて「選手にどう敵と味方とスペースを認識させるか」を考え、問いかけを行うことに収束していく。
例えば、サッカーに出会ったばかりの子どもが「考えろ!」とか「今どんな状況?」とかと問いかけられたらどうだろう? きっと頭の中には「???」が浮かんでいるはずだ。そして、その状態に気づいていない指導者から「こうだろう」「ああだろう」と言われても、選手にとっては「そうなのかな……」というくらいの理解が関の山。もう一度プレーを進め、先ほどのシーンと似た場面でプレーを止めて子どもたちに振り返りを求めても、さっき指導者が言ったことを繰り返し答えるだけ。実際には、その状況を本当に把握しているかはわからない。
つまり、子どもの考える力をアップさせていくために大事なことは、指導者の「問いかけ方」にあるということだ。
そこで、3月の特集は「問いかけ方」をテーマに、しつもんメンタルトレーニング代表を務める藤代圭一氏に取材をお願いした。氏は教えるのではなく、問いかけることでやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」の考案者。現在、全国各地のスポーツチームや学校教育の現場で指導者や保護者、教育関係者にワークショプなどを開催し、問いかけることの重要性を伝えている。
また、藤代氏は教育に力を入れる国々を訪れる勉強家でもある。過去、スウェーデンやドイツなどで良いとされる教育法の取材もしている。最近では、100年以上の歴史があり、世界140か国以上の実践園がある「モンテッソーリ教育」の取り組みもドイツのミュンヘンで視察を行ったという。氏は人間の心理的な背景をもとに幅広い知見を持った人物だ。今回のインタビューでは、指導の前提として必要な人との信頼関係の築き方、自主性と考える力との関係などアカデミックな観点からも学びを深めていきたい。
ちなみにサッカー指導における信頼関係の重要性については、昨年10・11月の特集「トレーニングをデザインする」で倉本和昌氏にインタビューをした際も「『目指すサッカー』がない指導者が明確な言葉を子どもに伝えられると思いますか?」の4ページ目で触れている。今回の藤代氏のインタビュー内容においても補足となるので付け加えておきたい。
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