受け身にならず主導権をにぎる。マンツーマンではないDFの概念

2019年04月05日

育成/環境

水族館のイワシの群れがワッと動く動きが理想

 このゾーンディフェンスは日本人の特性や性格に合っている――。それもまた松田が常々繰り返して言及してきたことである。

「個の弱さをゾーンディフェンスによってカバーできるということです。もしも守備の方法論がマンツーマンだけならば、アフリカ勢やドイツ人、イングランド人、アジアでいえば韓国人に日本人は個人で勝つことが難しくなってしまう。身体能力や体力面がその局面の勝敗をわける大きなウェイトを占めてしまうからです。だから日本人選手たちは、攻撃でいえば、個で打開し切れない局面をパスワークを駆使して崩すことに活路を見出してきたわけです。

 ならば、守備においても組織で守ることが重要になる。その守備の連動性や規律性が日本人に向いているのではないかと僕は思うんです。マスゲームなどというものはブラジル人は苦手でしょうけれど、日本人は勤勉で、しかも機動力もあるからやろうとすればいくらでもできる。しっかりやれば相当上手だと思うんです。

 それと、これはバクスターが話していたことですが、現代の日本人にそのまま当てはまるかどうかは別として、『日本人には腹切りの文化がある』と言うんです。ミスをしたときに腹を切ってお詫びをする。そういう個人で背負ってしまう精神が日本人には根付いていると。だから、個人の責任、という重荷から解放されるために、みんなで寄ってたかって集団的に連動して守れるという感覚が前提にあれば、個々がリラックスしてプレーできるはずで、守備時においてもクリエイティブな発想も出てくる、それがまさにゾーンディフェンスの考え方の根底にあるものだと言うんです」

 寄ってたかって集団的に連動して守る。一つのボールに対して密集して群がってボールを絡めとってしまう。それが松田が思い描くゾーンディフェンスのイメージである。

「水族館でイワシの群れがワッといっせいに動くでしょう? あの動きが理想なんですよ。その中心にあるのがボールです」

YOKOHAMA, JAPAN - SEPTEMBER 02:  (EDITORIAL USE ONLY) Hiroshi Matsuda, coach of Tochigi SC looks on during the J.League second division match between Yokohama FC and Tochigi SC at Nippatsu Mitsuzawa Stadium on September 2, 2012 in Yokohama, Japan.  (Photo by Masashi Hara/Getty Images)


著者プロフィール

松田浩(まつだ・ひろし)
1960年9月2日生まれ、長崎県長崎市出身。Jリーグでは、栃木SCなど数々のチームを指揮。日本サッカー協会の技術委員および指導者養成インストラクターを務めた後、2018年よりV・ファーレン長崎の育成部長を務める。守備の文化が浸透していないと言われる日本サッカー界において確固たる守備戦術を駆使できる希少な指導者として知られる。

鈴木康浩(すずき・やすひろ)
1978年11月5日生まれ、栃木県宇都宮市出身。法政大学卒業後、作家事務所を経て独立。『フットボール批評』『フットボールサミット』『エルゴラッソ』などに寄稿。


守備戦術2
【商品名】サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論
【著者】松田浩/鈴木康浩
【発行】株式会社カンゼン
【判型】A5判/300ページ
【発売】2015年12月17日発売

日本サッカー協会技術委員を務めた、ゾーンディフェンスのパイオニアが正真正銘の守備メソッドを記した「超ゾーンディフェンス論」。日本に足りない守備の哲学と基本理解。守備の戦術とセオリーを知れば、日本は世界で戦える。


 

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