GK育成は「ボールは怖くない」と思わせる環境作りからスタートする【5月特集】
2019年05月22日
育成/環境
具体的にGKのトレーニングは何をすべきか
――実際にジュニア年代のGKたちにどんなことを教えるのでしょうか?
ピント「まず、ボールを怖がらないというところからですね。体に当たっても痛くないゴムボールみたいなものを使って、それに対して突っ込んでいくようなトレーニングをさせたりしています。そうすると、ボールが柔らかく遊び要素が強くなるので逆に楽しいようです。GKとしては『やっている感』、『守っている感』が出るんですよね。本当はもっといろんな用具があれば、ボールを大きいものから小さいものにしたりして、GKに不可欠な感覚的なものを身につけられます。実際にやっているほうも楽しいから『もっとお願いします』という雰囲気になっていきます。そこからキャッチとか、ステップとかという風に動きを持たせながらGKという認識を深めていってあげる」
――具体的にどういう風にやっているんですか?
ピント「例えば、3年生くらいまでは上のボールに対して手を出すのが遅いんです。まずは、手を広く使うことを覚えさせます。みんな小さくしか手を出せないし、そういう反応しかできないんです。だから、もっと広い範囲で手を出させるような練習をしています。『ちょっと届かないです』くらいのところにボールを投げるんです。そこから少しずつ近づけていくと、『届きました』という感覚がつかめる。『じゃあ、そこが君の一番高いところじゃない?』と自分の手が届く範囲を把握させるわけです。ジュニア向けのGKスクールでは、ようやく徐々に手が出てくるようになってきました。
ウオーミングアップではワイワイ感を出してGKが楽しいことを理解するためにボールの投げ合いをしたり、手を使った鬼ごっこや鳥かごをしたり、寝転んだ状態でボールと戯れたりして、いろんな状態や状況でボールを触ることを覚えていくような練習メニューを考えています。要するに、ボール遊びですよね。ボールを持っていることが楽しいと思えないと、GKが楽しいと思えません。ジュニア年代では、体全体を使ったトレーニングをやらせています。
よく言うのですが、スルーパスに対してGKが突っ込むときに、だいたい手から先に出していくんですよね。でも、手から先に出してしまうと、相手のリアクションへの対応が難しいんです。つまり、決め打ちになってしまいますし、シュートに対する面積も狭くなってしまいます。だから、僕は『おへそから行け』と伝えています。『おへそから低く』と。
向かってくるボールは体に当てさえすれば防ぐことができるからいいとして、万が一足先でチョンと交わされたり浮かされたりしたときに手を出す分の余裕を作っておくと、逆を取られた場合もまだ足が残っているんです。GKはいろんな可能性を考えてプレーするポジションだと考えています。決め打ちではゴールを守ってはいけないんです。
おそらく、みんな体中心でボールに向かうのが怖いんです。顔を近づけたほうが安全だと思っているんです。でも、顔のほうがシュートをされたら危ないし、自然に背けたくなるでしょう。だから、そこはもっと練習させないといけないと感じています。顔よりも体のほうが頑丈ですし、GKは怪我をしないように自分を防御する術も知っておかないと危険です。例えば、顔から突っ込んだ場合、『相手の膝が頭に当たって交代しました』ではせっかくのチャンスも台なしです。私自身も顔を蹴られた経験はありますし、小さいころからフィールドの選手と同じようにGKにも最低限の理論的な守り方は指導すべきです。それは自分の身を守る意味でも。
3年生くらいまではGKに特化して練習をしなくてもいいと思っているんです。サッカーというスポーツを理解するためにもフィールドだけで十分です。正直、小学生のうちはGKとして専門にプレーしなくてもいいと思っているくらいです。現代サッカーはフィールドのように足を使えないといけないのもあります。どうしても早くGKを始めてしまうと、サッカーとしての、フィールドから見たポジショニングの感覚を身につける機会が少なくなってしまいます。私は小学生からGKをやっていましたが、思い返すと結構適当でした。本格的には、中学2年生くらいからトレーニングをしました。
例えば、手でスローしてDFにボールを配給するにしても、フィールドの感覚がなかったら守備の選手がボールをもらいたいタイミングが分からないし、準備も整っていないのにパスをしたら『えっ』となってしまいます。きっと分かり合えないことが多くてミスも増えると思うんです。DFが『このタイミングで出せよ』『ここに出せよ』というような言い合いにもなってしまう。
だから、本当はフィールドの選手がもっとGKをやってみてもいいと感じるし、ジュニア年代の間は『決まったポジションだけをする』というのはやめたほうがいいと思います。うちのスクールでは3年生くらいからGKをやりたいという子が多く、自然にそのくらいの年代からの指導になっています」
カテゴリ別新着記事
ニュース
フットボール最新ニュース
- 近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.04.24
- 「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.04.24
- 【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.04.24
- リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.04.24
- 前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.04.24
大会情報
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 大阪大会】フォトギャラリー2024.03.10
- 【卒業記念サッカー大会 第17回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2024.03.09
- 【卒業記念サッカー大会第17回MUFGカップ 愛知大会】フォトギャラリー2024.03.09
お知らせ
人気記事ランキング
- 全試合日程・組み合わせ・会場一覧「JFA 第48回全日本U-12サッカー選手権大会」
- 全試合日程・組み合わせ・会場一覧「JFA 第47回全日本U-12サッカー選手権大会」
- 全試合日程・組み合わせ・会場一覧「JFA 第45回全日本U-12サッカー選手権大会」
- 「ごく普通の選手だった」日本代表のエース大迫勇也が”怪物ストライカー”になるまで
- 「2022ナショナルトレセンU-14 後期(中日本)」参加メンバー発表!
- 子どもがプレーを「自ら決断する」意味。パルメイラスU11監督が語る指導の本質【6・7月特集】
- 本田圭佑考案の4人制サッカー全国大会「4v4 JAPAN CUP 2024」ファイナルがABEMAにて無料生中継決定!全国から総勢98チームが集結!
- 関東選抜メンバー発表!【関東トレセン交流戦U-15】
- 「2023ナショナルトレセンU-13(後期)」参加メンバー発表!【東日本】
- 練習中にふざける高学年