共通理解「いのちの危機」が新たな試み“久我山クリニック”を生んだ

2019年07月31日

育成/環境

      
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【國學院久我山高校サッカー部の清水恭孝監督】
      
清水監督が考えるサッカー、選手に抱く夢

――トレーニングの質の部分で、一番意識されているのはどういうところでしょうか?
 
清水「シーズンに入れば、週末のゲームに向けたコンディションが一番大事ですね。ただサッカーの質のところでいうと、常に状況判断、ポジショニング、ボールコントロールの3つがうちのベースになると思っています。これは前任者の李さんも、私が指導者を始めたころからずっと口にしていたことなので、そこは大前提としてあるのかなと考えています。それこそ久我山の全カテゴリーの選手たちにも『この3つは必ず求められるよ』と常々伝えています。トップチームになると、もうちょっと求められるものは出てきますが、状況判断、ポジショニング、ボールコントロールの3つは外せません」
 
――その中で、トレーニングのときに監督が一番求めているものは何でしょう?
 
清水「んー、どれかが欠けてもダメですね。ボールコントロールがよくても状況判断が悪ければ意味がないし、状況判断がよくてどんなに頭が賢くても技術がないとダメですから。個人の質的な優位性…久我山には日の丸を背負う選手がいないので『個でやっつけよう』と、まともにやっていては太刀打ちできない相手もいます。
 
 だから、位置的な優位性で差を詰めるというか、『自分の立ち位置をもっとよくして、駆け引きをすることによって個人の質的な優位性がなくても位置的な優位性だとか、ポジショニングだとかでチームの優位性は作れるだろ?』というのは求めています。だから、この3つはどれが一番大事かというのは難しいですね」
 
――年間でいうと、チーム作りの流れはあるんですか?
 
清水「大まかにですが、冬の選手権が終わって新チームが立ち上がり、『いかに自分たちでボールを握るか』というベースのものを徹底的に与え続けていく感じです。守備の部分もまったく言わないわけではないのですが、チームとして守ることより一人ひとりがどれくらいやれるかに守備はフォーカスしていきます。攻撃においては、点を取るポイントだとか、どこでやっつけるのかとか、どうやってボールを運ぶんだとか、ビルドアップは何のためだとか…そういうことはずっと伝えています。
 
 インターハイまではそういうところで進んでいって、それが終わったあたりから選手権に向けて、攻撃でできている部分と守備をどう連携させていくか。それは攻守の切り替えを含めて。今、これからやろうとしてるのは、相手のプレッシャーの向きというか、ベクトルのようなものも自分たちがコントロールできるくらいにボールを動かして、それに食いついたらパッと裏を取るとか。そういうことができるくらいに相手を見られるようになってきたらいいなと思っています。もちろん、できるかどうかわからないですけど、そういうことにアプローチもしてます。相手の向きを見なさい、と。
 
 彼らは頭を使わせるところは本当に賢いです。単純に足が速い、背が高い、すごくうまいとかそういうことではなく、ボールコントロールと状況判断とポジショニングがよければ、チームとして力がつけられると思っているので、それにプラスして、そういったサッカーの肝の部分を身につけていかないと、上のレベルでは通用しない気がするんです。プロに行った子たちを見ていたり、話を聞いていたら、うまいんだけど、上のレベルでは通用していないなという実感があったりして。
 
 だから結局、上のレベルで戦っていくためには、どういう意図があってそこに立っているのかとか、相手をどこでやっつけるのかとか、こういう状況のときにはここがこうなるでしょうとか、サッカーのことを彼らがもっと理解していかないと、上ではまったく通用しないことがわかってきたので、そういうことも彼らに伝えていってあげないとなと思います。
 
 久我山に来たとき、どうしても進学の多い学校なので、みんな大学に行くんです。なんとなくいい大学に行って、いい会社に入って…みたいな。そのためにサッカーをやってますみたいな感じだったのを、ちょっと変えたかった気持ちもあるんです。(大学を含め)7年かけてプロにしたい、と。フィジカル的なアプローチもして、サッカーのクオリティで言うと、単純にうまくするだけじゃなくて頭の中も上のレベルで通用する、適応できるような能力をつけていかないと難しいだろうなという思いで、今はいろんなアプローチをしてます」
 
――その考え方って、学校の方針とは合いそうにない気がします。競技志向というか。
 
清水「そうですね。でも、顧問の先生にも伝えたことがあります。私のそういうアプローチの仕方に対して、学校側から『いや、それは違うよ』とは反論されたことはありません。『任せてるから』という感じです。もちろん、もし学校から『それは困る』と言われたら、私がやめたらいいだけです。私たちが学校を変えていこうとするのではなく、私たちがしていることを学校が評価をするのだと思うんです。
 
 プロを目指しながらもなれなかったとき、またプロが終わったときに『君たちの学力が高かったことが、次にも生きるだろう?』といったことが大切なのではないか、と。進学校なので『勉強しろ』とは言われても『勉強しなくてもいいよ』とはなりません。だからといって、サッカーを疎かにするのも文武両道ではありませんよね? プロを目指してなれなかったときに、きちんと大学に行く道、行った道があれば必ずプラスになります。
 
 でも、いい大学に入りたいから、入ったからとサッカー選手になる夢を諦めるのも違うと思うんです。そこもチャレンジしろよという感じです。両方を追い求めることが文武両道の真の姿ですし、高校の3年間はサッカーだけをやってればいいということでもありません。
 
 李さんが語っていたんですが、ワールドカップを掲げる選手が出てくるのもうれしいけど、『もしワールドカップを渡す人間が出てきたら、これはまたすごいことだよね』と。それには頭が必要になってくるだろうし。『例えば、FIFAに入るとか、日本サッカー協会に入るとか、そういう人材を輩出するのも面白いよね』と言っていて、『あー、面白い発想をするな(笑)』と」
 
――すごく面白い捉え方ですね。
 
清水「その場合、そういう風になる人間が実際のサッカーである程度のレベルではないと、その世界ではなかなか上を目指せないと思うんですよね。サッカーのことを何も知らない人間が、多分、日本サッカー協会にはいないでしょうし。元選手だからそこにいるのもおかしいですが、やはり文武両道で二つを持ってる人たちが一番です。私はプロのキャリアもないのでどこまで伝えられるかわからないですけど、プロの経験がある方が絶対いいと思うんです。そういった意味では、うちの選手たちは勉強もできるし、サッカーもうまいしと、そういうキャリアを積めるチャンスがあります。もしそういう場所に立ったら、こんなにすごいことはないなとワクワクしています」
 
――話は尽きないのですが、ちょうどいい時間になってしまいました。文武両道を実践している高校ならではの話を聞くことができました。本当にありがとうございました。
  
※8月の特集第1弾は8月7日に公開予定です
    


【7月特集】夏のトレーニングを見つめる


<プロフィール>
清水恭孝(しみず・やすたか)
1972年10月13日生まれ。現役時代は市原緑高校、立正大学でプレー。2010年から國學院久我山高校サッカー部のコーチ、2015年から監督。監督就任初年度の全国高校選手権で準優勝。強豪校としては異例の朝練禁止、原則18時下校の条件で練習を行う。選手の多くが大学進学を目指し、文武両道を高いレベルで実践している。外部の派遣指導者として結果を残す指導者の一人。


 

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