日本の子どもたちは「成長のピーク」が早い? となると、セレクション時期なども見直す必要があるのではないか

2019年08月23日

育成/環境

日本の子どもは欧州の子どもより成長が早い!?

——ある程度長い期間やらないと、検証がしっかりできないですよね。

悠紀「日本には良い意味で改善の文化があると思います。ただ、長いスパンで考えると、その改善の文化が粘り強い検証の邪魔をしているのかもしれません。すぐより良くしようとやり過ぎるのも、もしかしたらあまり良くないのかもしれないです。良いものがあるなら、一回それを継続的に質を高めていく部分にパワーを使うといいんじゃないかな。

 あと、これはあまり知られていませんが、ダブルパスで仕事をしている時にいろいろ調べたところ、日本は世界に比べて発達発育が早いんですよね」

——へぇー。

悠紀「意外かもしれないのですが、だいたいヨーロッパの子どもの男子、成長のピークと言われるPHVという一番成長が加速するピークポイントが、平均値を調べてみると13.6歳くらい。でも、日本人は12歳ぐらいだったんですね。それを見た時に、『これはマズイな』と思いました。なぜなら成長のピーク時にセレクションが多くなる年代と重なっているからです。つまり、日本の子が一番体のバランスを崩してる時期に、ジュニアユースのエントリーになっているわけです。

 一番、フィジカルとして差が出ている歳なんですよね。だから、セレクションをもう一年くらい早くやるか、もしくはもう一年くらい遅くしないと発育発達の面からきちんと選手の実力を評価できないのかな、と。

 ちょうど日本の小学校6年生は、子ども同士で身体的に一番差が出る年齢なんです。ヨーロッパだと、中学校1年生〜中学2年生。ということは、差が出る時期にセレクションを行っているので、取りこぼしがすごくあるのではないかというのが、一つ懸念していることなんです。例えば、心肺機能は何歳で向上しやすいなど、いろいろあるじゃないですか。発育発達の観点がズレていると根本も揺らいでしまいますから。ある意味、年齢特性の部分も海外からコピーとしてしか情報が入ってきていません。アジア人や日本人のピークに基づいた分析結果ではないから、今の日本の育成は、もしかすると全部がズレている可能性もあります。

 だから、ゴールデンエイジは日本人は実際12歳くらいではすでに終わっている可能性もあるんです。もちろん、アベレージ的な話です。アベレージだと12歳くらいで身体的な成長のピークを通り越していて、成長にバラつきが出てきます。でも、そういう時期に走り込みなど負荷の高いことをしていたりします。だから、そこでスポーツ障害が出てしまうのかなとも、想像ですが、感じます。オスグッドとか、本当に日本の子どもたちはケガが多いから。

 そこは本来なら専門機関などと共同で研究し、しっかりと数値化を測るのがいいと思います。

 簡単に計算できますから。何歳の平均身長が何㎝など、ネット上に国が資料として出しているので。2年前に計算した時は、確か平均が12歳くらいでした。ドイツはベルギーよりはちょっと早くて13.4歳で、ベルギーは13.8歳だったと思います。もちろん国によって違います。いずれにしろ年齢特性を考える場合も、選手の成長過程でピークがどこにあるかをしっかり把握することが大切です。

 Jクラブのようなアカデミー規模でフルタイムのコーチがいるところは、自分が指導するカテゴリーの選手の数値は全部計って個別化し、その成長度合いに合ったトレーニングを考えてもいいはずです。でも、現実は『どういうように勝つか』に力を使っちゃうから、時間の使い方も考える必要があるのかな、と。何が子どものために時間を費やすことなのか」

——なるほど。意外と「ジュニア年代の時は他国に勝てる」という現象も、成長が早いから起こることなのかもしれないですね。

悠紀「そう、だから日本人の子たちはコーディネーション能力が高いんですよ。その年代の頃ですが、フィジカル能力も高いですし。一年早くゴールデンエイジが終わってるから、技術力も高いわけです。だから、それを調べた時は『理に適ってるなぁ』と思いました。しかも、日本の指導者はジュニア年代なのにチーム強化をするでしょう? だから、チームとしての完成度が高いわけです。

 今年、私が運営する『レコスユナイテッド』はスペインの大会に出場したのですが、同じグループリーグにマンチェスターCがいました。負けたんですけど、2位通過して決勝トーナメントの一回戦がFCバルセロナでした。バルセロナを相手にずっとハイプレスをかけて、残り5分まで1対0で勝っていました。でも、結局その後の年代からバルセロナなどの選手たちはすごく伸びるわけです。ということは、差がどんどん開く一方。でも、事実として言えることはジュニア年代はやれるなということ。

 その現実をどう受け止め、現場で生かすか。

 間違いなく、ジュニア年代の日本の子たちはレベルがものすごく高い。けれども、やるべきことに時間を割くことなく勝つための時間に費やしている分、後でツケが回ってきているんです。そのやり残しの部分が、差につながっているんじゃないですかね。ゲームで言えば、裏技的に指導してしまっているから。強いU-12は作れますけど、その中から強いU-18がまた育つかと言ったら、それはまた別問題です」


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