日本の子どもたちは「成長のピーク」が早い? となると、セレクション時期なども見直す必要があるのではないか

2019年08月23日

育成/環境

Jリーグクラブの監督を務めながらも、育成視点を持ち続けるシュタルフ悠紀氏。ベルギーの育成コンサルティング企業『ダブルパス』で働いていた際に「日本の子どもたちは欧州の子どもたちに比べて発達発育が早い」ことを知った。これは選手育成を語るうえで大きな問題があるという。

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取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部


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年齢特性に応じたレギュレーションは大切

——ピッチの作り方で言えば、日本だと単純に「ジュニアなら通常サイズを半分に割ればいいじゃないか」みたいなことで済ませますけど、もっと発育発達やレベルによって臨機応変に変えてもいいのかなと思います。先日見た地域の試合では、2年生が6年生用の8対8を行っていました。

悠紀「JFAも試験的に、中間ゴールへの取り組みをするという話を聞きました。私が去年S級ライセンスの講習を受けた時にそういう講義がありました。今は少年用ゴールから大人用のゴールに一気に変わりますが、そこに中間ゴールを導入しようとしているようです。特に日本人は身長の伸びがそれほど急激に成長しないので、すぐゴールが入って拮抗した試合が成り立たせられないことが多々あるから、中間ゴールを開発してるようです。JFAも色々と考えてくれています。

 私たちが運営しているレコスリーグは5人制、7人制、9人制を導入しました。ジュニアユースに上がったら11人制になります。やはり8人制から一気に3人が増えるその違いは思いのほか大きいと思います。2年間で2人ずつ増えるくらいだったら子どもたちにとってスムーズなのかな、と」

——日本だと、それぞれの指導者が試合設定をどう刻んでいるのかが疑問です。取材している側の肌感覚ですが、何となく5人、8人、11人…低学年では、5人制でやってるところとやってないところがあります。ちゃんとサッカーを教えようという指導者たちが集まっている地域などは自主的に5人制でやっていたりするのが現場レベルでのことです。

悠紀「それはGKを入れて5人?」

——そうですね。あと、ゴールのサイズももう少し考えるべきかな、と。ポルトガルは横が6mだそうです。先日、スポルティングCFのU11の監督さんに話を聞いた時にそう答えてくれました。日本よりも左右に50㎝ずつ横に長いから、しっかりとコースを狙う意識が高かったです。実際に左右のコースを狙うのがうまいですし、自然にシュートもそういう狙いを持つようになっています。「しかもGKはそれに自然に対応していくから、育成という観点でも僕らはそうやってます」と言っていました。

悠紀「大事なことは、意図を持って何かをやって、それを信じて一定期間は進むことだと思うんですよ。でも、日本サッカーはまだコピーの段階で、しかも意図を追求しないでコピーしてしまっている部分がある様に感じることがあります。それが何で、どういう意図でその国がやってるのかとか、それをしっかり理解して解釈せずにコピーしたらマイナスに働く可能性もあります。そこが次のステップなんじゃないかなと思いますね」

——そこで、きちんと意図を持ってやり切ってしまわないと、その次の課題が見えないというのはありますよね。

悠紀「私が『ダブルパス』で一緒に仕事していたベルギー人のマークという同僚がいたんですけど、彼はベルギーサッカー協会の改革を続けてきた人物でした。マークが口酸っぱく言ってたのは『一回何かを決めたら、5年間はやれ』と。「5年間やらないと本当にいいかどうかがわからない。もし3年くらい経って『なんか違うかな』と思っても、5年くらいはやらないとダメなことも何がダメなのか本当の意味でわからないから、ということは口にしていました。『5年後でも手遅れじゃない。でも、3年で違うかなと変えてしまったものも、5年後に身を結ぶこともがあるかもしれないから、しっかり自分が考え抜いて一つ決断してこれをやるとなったら、最低でも5年間は我慢する時間が必要』だと言ってたのは、私も『なるほどな』と思って参考にしています。

 やはり育成一夜にして成らないから。

 結果もすぐ見えてこないのが育成だし、ある程度の根気というものが求められると思うんです。だから、5年間が経ったからレコスリーグのレギュレーションも変えたんです。U-8はそれまで7人制だったのを、5人制にしました。そして、U-10にはリトリートラインを入れました。賛否両論ありますけど、とりあえず5年間はやってやろうと思っています(笑)」


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