“ヘディングの名手”が語る「セットプレーにおける駆け引き」
2019年12月05日
戦術/スキル現在はサッカー指導者や解説者として活躍する元日本代表・岩政大樹氏。現役当時は自他ともに認める“ヘディンガー”だった彼が語る「セットプレーにおける駆け引き」とは。岩政氏が信条とする「相手を見る」ことに極意があった。
『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』より一部転載
著●岩政大樹 写真●Getty Images
相手の前でヘディングすることを前提に動きを変える
私が自慢できることは多くないですが、セットプレーの得点力はちょっとした自慢です。身体が大きいので、いつも相手の一番ヘディングが強い選手がマークしてきましたが、それをかいくぐってコンスタントに得点を重ねることができました。プロ15年間の公式戦で70点以上もの得点を積み上げることができたのですから、ディフェンダーとしては悪くない数字でしょう。
そこには高さや強さだけでは語れない理由があります。それを簡単に「駆け引き」と言ってしまえばそうなのでしょうが、私は「相手の心理を想像する」ことだと考えていました。ここまで書いてきてわかるように、「駆け引き」とはつまり「相手の心理を想像する」ことだと言えます。私はいつも「相手」を見ていたのです。
駆け引きの始まりとなる明確な狙いを、私は「相手の前でヘディングする」ことにしていました。
セットプレーだけでなく、サイドからのボールから得点を取るためのコツは、相手の前(ニア)で得点する形を作ることです。なぜなら、相手の背後(ファー)では、スタンディングか下がりながらでのシュートとなり、かつレベルが高くなれば相手ディフェンダーが前でクリアしてしまうケースが増え、さらに相手ゴールキーパーも反応が速くなることで、惜しいシュートに見えてもほとんどがゴールにならないからです。
プロに入り、そのことに気づいた私は、セットプレーの入り方を変えました。大学までは相手の後ろで待ち、高いボールを蹴ってもらって、相手の上から叩くようにぶち込むシュートを狙っていましたが、プロに入ってからは、ボールが来る前に相手のマークを外し、相手の前に入ってニアでシュートを打つように変えたのです。プロでは「惜しい」はいらない。「結果(得点)」こそ全てだったので、私は「相手の前でヘディングする」ことから逆算して動きを考えました。
邪魔だったのはやはり相手です。相手も自分の前ではやらせたくないと警戒しています。相手もニアサイドは当然のように警戒しているのです。
そこで、私は自分が守備をしている時の心理をヒントにしました。
守備者は自分の前では決してやられたくない。しかし、ひたすらマークをしていればいいわけではなくて、ボールも見なければいけません。最終的にはボールに反応しなければいけないからです。
特に、キッカーがボールを蹴る瞬間は必ずボールを見なければいけません。最初のボールの軌道さえ把握してしまえば、その前後は相手の動きについていけばいいのですが、蹴る瞬間は絶対にボールを見なければなりません。
だから、守備者はキックの瞬間に必ずボールと相手を同一視野に収めたいはずです。つまり、キッカーがボールを蹴る瞬間に背中側に回られると困るのです。
そう考えると答えはシンプルでした。私は色々な動きをして相手を惑わせますが、結局はキッカーがボールを蹴る瞬間に相手の背中を取っていればいいのです。そうすれば、相手は私とボールを同時に見ることができません。その位置さえ取れれば、どんなに相手に警戒されていても、相手が〞前にしか目がついていない〞人間ならば必ず、私を捕まえきれるわけがないのです。
だから、色々な選手が言ってくれました。「いつも岩政を警戒しているのに点を取られる」。そのポイントはキッカーがボールを蹴る瞬間の相手との立ち位置だったのです。
そのポイントに立ってからの動きはフォワードの選手を参考にしました。得点をコンスタントに決める選手はみんな同じだったのです。
※続きは発売中の『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』をご覧ください。
<プロフィール>
岩政大樹(いわまさ・だいき)
1982年1月30日生まれ、山口県出身。東京学芸大から鹿島アントラーズに加入し、2007年からJリーグ3連覇に貢献した。3年連続Jリーグベストイレブンに選出された。2010年南アフリカW杯日本代表。13年に鹿島を退団したあとタイのテロ・サーサナ、ファジアーノ岡山、東京ユナイテッドFCを経て18年に現役を引退。ベストセラーとなった『PITCH LEVEL』(KKベストセラーズ)でサッカー本大賞2018受賞。解説や執筆を行うかたわら、メルマガ、ライブ配信、イベントを行う参加型の『PITCH LEVEL ラボ』を開設するなど、多方面に活躍の場を広げている。
【商品名】FOOTBALL INTELLIGENCE フットボール・インテリジェンス 相手を見てサッカーをする
【著者】岩政大樹
【発行】株式会社カンゼン
【判型】四六判/304ページ
【価格】1,600円+税
【発売】2019年3月18日発売
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