久保建英の股関節の才能はメッシを超える――才能を本当の実力に変えるための課題

2020年01月24日

フィジカル/メディカル

昨年5月に『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』を上梓した高岡英夫氏は、「運動科学」という分野の創始者であり、さまざまなアスリートの身体の動かし方や使い方を世界最先端の方法で研究・分析している。そんな高岡氏が日本サッカー界で最も注目を浴びる久保建英選手の才能と未来について、股関節を中心に詳細を分析してくれた。

著●高岡英夫 写真●Getty Images


【前回】「運動科学」の第一人者が解く、日本代表選手の身体意識――日本サッカー界に大きな希望あり


FC Barcelona v RCD Mallorca - La Liga

まだまだ発展途上の股関節

 久保建英選手の身体意識図をご覧ください。

図4

図4 久保建英のセンター ©2019 Hideo Takaoka 運動科学総合研究所

 細径軸がキレキレになりながらも何本も絡み合うようにつながっているのが分かります。これは、軸ができつつあるまさに典型的な成長状態といえます。体が凝り固まってしまった大人の選手の場合、軸を描くと、ひん曲がった軸が体のいろんなところにポッポッとあって、なかなかキレイには立ち上がっていきません。そのような軸に比べれば、キレキレでもダーッと何本も重なり合いながら上下につながっている久保選手の軸の方が、はるかに可能性、将来性があります。

 久保選手の軸を見ると「なんだ、メッシに比べると全然できていないじゃないか」と思われるかもしれません。たしかにある意味ではその通りなのですが、図を見ると、まさに伸びようとしている、発展途上の選手だということがハッキリと分かるのです。

 そして、くだんの股関節ですが、久保選手の身体意識図を見ると、股関節あたりに縦線があり、それを取り囲むように何本もの線や、小、中規模の円がごちゃまぜにあります。これはどのような状態なのかというと、まさに股関節の発展途上における迷いや苦悶を表しています。

図5

図5 久保建英の股関節 ©2019 Hideo Takaoka 運動科学総合研究所

 股関節は非常に大きな関節です。股関節のどこに身体意識の中心、つまり股関節の本当の機能の中心がなければいけないかというと、実際の股関節のより内側寄りの位置で大きさもずっと小さいのです。具体的には、直径数ミリ程度です。股関節は、人によって大きさはまちまちですが、骨頭だけを測っても3〜4センチくらい、外側までひっくるめると5〜6センチくらいの大きさです。その中の数ミリくらいの大きさが、股関節の中心である「転子」です。

サッカー史上最も優れたレベルの転子を持つ

 股関節は、三次元に働く人体最大最強の関節にして、最も重要な関節です。股関節の機能を最大限発揮するには、転子ができていないといけないのですが、皆なかなかできません。『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』では、このことの原因を6つの重要な要素に分け「六大重要性」として解説しました。さらに股関節は、3つの鈍感性、つまり3つの鈍感な根本的性質を同時に持っています。こんなに重要なのにもかかわらず鈍感だということは、誰にとっても開発の可能性が圧倒的に多く残されているということです。重要性が1つしかなく、鈍感性が全くないのであれば、もうとっくに誰でも開発できてしまっているでしょう。現実の股関節は、それとは真逆な状況にあるのです。

図6

図6 六大重要性と三大鈍感性 ©2019 Hideo Takaoka 運動科学総合研究所

 だから、日本で一流と言われるようなトップ10数名のサッカー選手でさえ、転子はなかなか正しく形成されていないのが実状です。選手も皆上手くなろうとしていますから、様々なトレーニングや実際の試合、いろんな試みの中で、良いポジショニングや走り、ドリブル、パス、シュートを心がけていますが、そうなると股関節にいかにきちんとした転子をつくるかという話が重要になってきます。転子の形成は、普通のボール練習や試合では意識的にはとてもできませんから、潜在下の脳が真剣になって取り組むことになります。しかし、それでもなかなかできない。一方、メッシとか、クリスティアーノ・ロナウドとかサッカー界の歴史に残るような選手たちは、この転子が大変良い形でできているのです。

 久保選手の転子はどうなっているのかというと、詳細かつ慎重に分析をした結果、実は、世界のサッカー史上最も優れたレベルの転子を持っている選手の一人だということが分かりました。それは先天的なものです。私は、あのキング・ペレから始まり、ヨハン・クライフやジダンなど様々な真のトップ・オブ・トップの選手を、サッカーだけでも100人以上分析してきていますが、久保選手は、その中でも先天的な才能としてはトップレベルの転子を持っているのです。だから、あの小学校高学年から中学生くらいの頃に素晴らしく動的ポジションが良く、また立ち方や歩き、全力ダッシュからドリブル、シュートまでもが圧倒的に優れていたのです。さらに、股関節は視覚認識にも大変良い影響を与えることが実験で分かっていますから、これだけ股関節が良いと状況を見る力、判断能力までもが高くなります。

股関節と判断力の関係

 サッカーの判断能力というのは、普通の人の仕事環境、つまり事務職や営業職、レストラン等の飲食業のような現場で必要となる判断能力とは、共通部分もあるものの多くの点で異なるものです。常に瞬間瞬間、数秒先から長くても十数秒先、ほとんどの場合は、0コンマ何秒から数秒先の未来予測的な、瞬間瞬間で必要とされるような判断能力なのです。股関節に良い転子が形成されると、その判断能力が非常に優れてくるのです。久保選手の場合、この転子が先天的に備わっており、私の分析によれば、世界的に見ても最高レベルです。

 しかし、この転子がそのまま彼の股関節、さらには全身体を支配できているかというと、そうではありません。中学3年生以降から、その先天的に存在する優れた転子を取り囲むように、特に股関節の前面にいろいろとゴチャゴチャした硬縮的な身体意識が形成されてきてしまっているのです。つまり、様々な身体意識が整理できないまま不定形に、擬態語でいうとゴチャゴチャに形成されつつある、というのが現状です。

 なぜ、そのようなことになるのでしょうか。その前に一言だけ言わせていただくと、どれだけその先天的に優れた転子を邪魔せずに、むしろその先天的転子をよりクッキリと強化しながら、その優れた転子が股関節とその周囲の組織から全身を支配する装置として完成に向かっていけるかどうかが、将来久保選手が本当にメッシのレベルに到達できるかどうかの分かれ道になります。

 私は高度能力学の専門的研究者として、久保選手にはメッシを超える可能性があると考えています。久保選手の先天的な転子は、厳密に言ってメッシの先天的転子よりも優れているからです。では何が彼の転子を邪魔しているかというと、一番の原因は、中学生の後半から大人になり始めてきているということです。大人になろうとすると、精神的にも肉体的にもズバリ何が要求されるようになるでしょうか。そうです。それは「たくましさ」特に日本的風土での「たくましさ」です。実は、特殊日本的な「踏ん張る、頑張るたくましさ」というものが、この転子を邪魔する様々な根本的要因になっているのです。


【プロフィール】
高岡英夫(たかおか・ひでお)
運動科学者、高度能力学者、「サッカーゆるトレ」「球軸トレ」開発者。運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長。東京大学卒業後、同大学院教育学研究科を修了。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、企業経営者、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」をはじめ「身体意識開発法」「総合呼吸法」「ゆるケアサイズ」など、多くの「YURUPRACTICE(ゆるプラクティス)」を開発。多くの人々に支持されている。


【書籍紹介】

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『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる! 』
股関節を三次元に使いこなすことが、超一流選手への最短距離
最も鈍感な関節がフル稼働! トップアスリートは爆発力が違う
『股関節脳』理論に基づく「走る」「打つ」「投げる」「蹴る」の力を引き出す最先端のメソッドを紹介。


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