「運動科学」の第一人者が解く、日本代表選手の身体意識――日本サッカー界に大きな希望あり

2020年01月23日

フィジカル/メディカル

昨年5月に『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』を上梓した高岡英夫氏は、「運動科学」という分野の創始者であり、さまざまなアスリートの身体の動かし方や使い方を世界最先端の方法で研究・分析している。そんな高岡氏が日本サッカー界で最も注目を浴びる久保建英選手の才能と未来について、股関節を中心に詳細を分析してくれた。

著●高岡英夫 写真●Getty Images


FC Barcelona v RCD Mallorca - Liga
写真●Getty Images

身体意識とは何か?

 昨年6月、日本サッカー界期待の新星、久保建英選手のスペイン1部リーグ「リーガ・エスパニョーラ」に所属する世界屈指の強豪レアル・マドリードへの移籍が発表され、大きな話題となりました(現在はレンタル移籍でマジョルカに所属)。
 今回は、昨年5月に出版した『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる!』の特別企画として、久保建英選手の稀有な才能とその可能性について、股関節を中心に詳細に分析していきたいと思います。
昨年7月、世界文化社から刊行された『サッカー球軸トレーニング』(高岡英夫・松井浩 共著)という本で、サッカー界のトップレベルの外国人選手と日本代表選手の身体意識図(図1)を初めて公開しました。

図1―A,B

図1―A 代表的な身体意識  図1―B 三層軸の構造(正面図)

©2019 Hideo Takaoka 運動科学総合研究所

【※身体意識は、高岡英夫が高度能力学研究の過程で発見した、身体と精神の境界領域に空間構造をもって存在する潜在下意識であり、人間の心身にわたるあらゆる能力を本質の側から支配する働きを持つ。古来人間の本質力の中心として重要視されてきた身体を天地に貫くセンター(正中線・体軸)や前頭部・胸部・下腹部に各々形成される上・中・下丹田などがその代表例。これらの身体意識が備わると、格別に偉大、あるいは強大な能力を人間にもたらす、と歴史のなかで伝えられてきた。今日では研究により500種以上存在することが分かっている。身体意識はストラクチャー、モビリティ、クォリティという3つの要因から成り立ち、様々な色(クオリティ別に重性を黒、 冷性を青、熱性を赤で表現)の点、線、面を使って図示、可視化することができ、それを身体意識図と呼ぶ。】

 身体意識には、センターや軸、上・中・下丹田など歴史上多くの人々によって言語化、概念化されてきたもの以外にも、実にたくさんの種類があるのですが、『サッカー球軸トレーニング』では、センターや軸に関する部分と、股関節まわりの二点のみ、ご紹介しました。

 取り上げた外国人選手は、世界のトップ・オブ・トップ選手の代表とも言えるリオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケツの3名です。一方、日本人選手としては、現役の日本代表である大迫勇也選手、南野拓実選手、久保建英選手、柴崎岳選手、堂安律選手、中島翔哉選手の6名を取り上げました。

 ここでは、久保選手を主に取り上げます。彼は、すでに中学生の頃から卓越した動的ポジショニング能力やドリブル、パス、シュート、そして状況認知能力、判断力などを備えており、和製メッシと言われることがあるほどでした。まだ非常に若い選手ですからどれほどの選手になるかは未知数ですが、読者の皆さんの期待も非常に高いと思いますので、取り上げさせてもらうことにしました。

体に軸は複数存在する

 久保選手が本質的にどのくらいの可能性を持っているのかということは、久保選手の写真や動きを見ながら彼の身体意識を詳細に分析していくと如実に分かります。

 軸と言うと、皆さんは背骨の前を通る一本の軸を想像されるのではないかと思います。それはそれで正しいのですが、実は、軸は何本もあるのです。中央に通っている中央軸も、一番細い細径軸から中間の中径軸、太い大径軸まで三層構造をしています。皆さんが通常軸と考えている、あるいは感じられる軸というのは、そのほとんどが細径軸です。野球やゴルフ、フィギュア・スケートなどスポーツにおける軸やセンター、または武道・武術の世界では正中線と呼ばれていますが、これらの身体意識は歴史上、非常に古くからある概念で、細径軸のことを表しているのです。

 さらにその細径軸の外側には、中径軸と大径軸があります。細径軸は数ミリ〜1.5センチ程度、その細径軸の外側の中径軸は3〜5センチ程度の太さです。そして、中径軸のさらに外側にはちょうど左右2つの股関節の間ほどの幅で、10数センチの直径の大径軸があります。このように中央軸は、三層構造をしているのです。(中央軸の左右に通る側軸については解説を省略しています。)

図2

     図2 三層軸の構造(側面図)

©2019 Hideo Takaoka 運動科学総合研究所

 しかし、中央軸が細径軸、中径軸、大径軸の三層構造をしているということは、まだ世界的に見ても誰にも発見されていない状況です。

三層構造の中央軸にはそれぞれ特徴がある

 私の研究はその後着実に進み、軸が個々の選手の中で具体的にどのように存在しているかという詳細な分析までもが可能になっています。その詳細な分析の結果、メッシは軸が上から下まで完全に通っているわけではないものの、三層全てがかなりしっかりとできていることがわかりました。

図3

      図3 メッシのセンター

©2019 Hideo Takaoka 運動科学総合研究所

 中径軸、大径軸には、頭の上空に向かって開いている、円錐を逆にしたようなロート型の軸(上ロート軸)や、逆に地球に向かって開いていくタイプの下ロート軸もあります。メッシを見ると、中径軸と大径軸の両方とも上方に開いていく上ロート軸になっています。下方にも上方に比べると細いのですが、やはり股から下に向かって下ロート軸が通っています。

 機能を見ていくと、細径軸はゆるんで姿勢・体幹や脚のポジションが良くなる、高重心で切れが鋭く動ける、ボール捌きやシュートが正確になるといったような働きをします。一方、中径軸と大径軸は、細径軸を守り支える強力な働きをします。特に大径軸は、強靭な体幹部をつくると同時に、下半身から首や頭、腕の関係性を非常に強靭化していく働きもしています。

 軸は、精神面や認知能力にも大きな影響力を与え、細径軸ができると、ピッチ上がよく見え、高所大所に立った、つまり高い視点に立って物事を見たり、状況判断ができるようになります。そういう意味では、ピッチ全体を見る判断力に繋がるので、細径軸のある選手は自然とリーダーシップを取るような立場になっていくのです。

 一方、大径軸は天地を通貫する柱状の構造で、非常に強大さらには巨大な精神性を作り出すものです。集団の中心になって集団全体を圧倒的に支える人を「大黒柱」と呼びますが、大径軸はまさに大黒柱のような圧倒的な存在感をつくり出します。強い精神力というと、日本では昔から「ハラ」「下丹田」という言葉がありますが、ハラや下丹田はどちらかというと忍耐力・耐久力や冷静さ・落ち着きを担っています。刺激に対していたずらに興奮しないとか、じっくり落ち着いて物事を続けていくとか、そういった類いの精神力です。

 大径軸はハラや下丹田よりはるかに巨大なもので、全てを貫き通す天地にそびえる強大な心、圧倒的に太い魂で全てを通貫するような強さをもたらすものです。こういう大径軸が世界のトップ・オブ・トップ選手たちには、必ず何かしらの形で存在しているということです。しかし、史上最高の選手の一人であるメッシでさえ完全に三層軸が通っているわけではありません。詳細に分析するとよく分かりますが、まだ上達の余地が多く残されているのです。

 それでは、メッシと比べて日本人選手はどうなのかというと、メッシほどではないものの、最近の代表レベルの日本人選手には、球軸が通ってきています。いま説明したようなセンター、軸系のいろんなものが備わりつつあるのです。そういった意味で、日本サッカー界には非常に大きな希望があるのです。


【つづき】鎧のようなたくましい筋肉を付けると、逆に股関節の働きは鈍くなる


【プロフィール】
高岡英夫(たかおか・ひでお)
運動科学者、高度能力学者、「サッカーゆるトレ」「球軸トレ」開発者。運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長。東京大学卒業後、同大学院教育学研究科を修了。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、企業経営者、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」をはじめ「身体意識開発法」「総合呼吸法」「ゆるケアサイズ」など、多くの「YURUPRACTICE(ゆるプラクティス)」を開発。多くの人々に支持されている。


【書籍紹介】

kokansetsu cover1

『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる! 』
股関節を三次元に使いこなすことが、超一流選手への最短距離
最も鈍感な関節がフル稼働! トップアスリートは爆発力が違う
『股関節脳』理論に基づく「走る」「打つ」「投げる」「蹴る」の力を引き出す最先端のメソッドを紹介。


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