欧州とJリーグにある“大きな差”。欧州トップクラブから学ぶ守備戦術

2020年02月03日

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ビルドアップやゴール前の崩しの再現性が高まる現代サッカーにおいて、対抗する守備戦術も明確でなければ守り切れる時代ではなくなっている。だが、欧州では当たり前に押さえられている守備原則も、 未だに突き詰められていないように見えるJリーグのチームも存在する。 日本サッカーがまず押さえるべき守備の大原則について岩政大樹氏が提言する。

フットボール『戦術』批評より一部転載

文●岩政 大樹 写真●Getty Images


アトレティコマドリード-レアルマドリード

必ず押さえるべき守備戦術の二大原則

 1年前から始めたメルマガ『PITCH LEVELラボ』の中で、サッカーの原則について議論を交わすLIVE配信を行っています。ある試合の中で頻繁に見られたシーンから見つけた原則の話をすることもあれば、ある監督のチーム作りにおける原則を考えてみることもある。選手たちの「判断」や「能力」の話をする前に「原則」がどこにあるのかを様々な視点から探っています。

 その中で、あるとき思いついた守備におけるチーム作りの原則があります。少し長いのですが「高い位置で守備をする時の相手のボランチの抑え方を明確にしておくべき原則」と「低い位置で守備をする時のゴール前の“5人目”を明確にしておくべき原則」です。長すぎてすみません(笑)。

 「高い位置で守備をする時の相手のボランチの抑え方を明確にしておくべき原則」は読んで字のごとく。ハイプレスをチームに求める場合には、相手の中盤の深い位置(ボランチの位置)にいる選手へのプレスのかけ方を明確にしておくことが肝要だということです。

 例えば2トップのチームなら、開くセンターバックと二人の間に立つボランチとを、いつ、どのように捕まえていくのか。そしてそれに連動して中盤の選手たちはどのように前に出ていくのか。2トップだけでは当然人数が足りないので、全体のメカニズムで設計をしなければなりませんが、その際に、少なくとも〝相手ボランチの消し方〞だけはチームを作る上で明確にしておくべきだという原則です。

 「低い位置で守備をする時のゴール前の“5人目”を明確にしておくべき原則」とは、ゴール前を守るときに、特に4バックのチームが4人しかいないディフェンスラインに、中盤の選手の誰が、いつ、どこに降りていくことで“5人目”とするか、を明確にしておかなくてはならないという原則です。最後の3分の1は構造的に4人だけでは守り切れないからです。

 特にサイドを幅広く使われた時に、ゴール前を守らなければならないセンターバックはサイドバックのカバーで外に出るべきか、ゴール前に留まるべきかで迷いが生じます。

 センターバックがカバーに出るなら、誰がゴール前を埋めるのか。ゴール前に留まるなら、中盤の選手の誰がサイドバックのカバーに入るのか。そして、そのカバーとはサイドバックの内側か、外側か。何れにしても、”5人目”が誰になるのかをあらゆる場面について明確にしておかないといけません。

 この2つは言われてみれば当然のことかもしれませんが、昨今のサッカー界の潮流である“ビルドアップ”と“ゴール前の崩し”の再現性に対抗するためには、その明確化がより求められているように感じます。

 そう考えついたのは、ヨーロッパとJリーグとを見比べていて、ここに大きな差が見られると感じたからです。

 例えば、レアル・マドリードは相手ゴールキーパーがボールを持つと、相手センターバックにフォワードが、その背後で受けようとする相手ボランチには中盤の選手が、その背後にはセンターバックが、と、どんどん前から順番に掴みにいって全体がマンマークのようになりハイプレスをかけていきます。当然背後にはカバーがいなくなるわけですが、そこは個で守れるセンターバックの存在と、あとは、例えうまくボールをつながれたとしても、時間をかけて相手の攻撃を遅らせれば、また全体で守備ができるという次のプランもセットで設計されています。

 アッレグリ時代のユベントスはよりそれが明確でした。敵陣では前から掴みにいってマンマーク。そこを剥がされたら自陣でブロックを組んで守る。そのメリハリが実に美しいチームでした。

 サッリに変わった今年のユベントスは考え方が少しだけ違います。システム自体が4-3-1-2になったことで、2トップが相手センターバックを掴みにいっても、相手ボランチにはトップ下の選手が掴むことができる形になりました。それによりスペースはサイドに限られ、相手は主にサイドへの展開を狙います。それに対しては、インサイドハーフ、もしくはサイドバックの選手が勢いを持って相手サイドバックまでプレスに飛び出していきます。

 最終的には、前から掴みにいってフリーで待つ相手選手がいなくなるようにしてはいるものの、サッリのユベントスの場合は、“マンマーク”というより、”中央抑えからサイドへの誘導”を意図して設計されています。

 いずれにしても、キーは「相手ボランチを誰がどのように掴むのか」が明確になっていること。そのおかげで、相手の次なる手に全体が迷いなく突っ込むことができています。

マンチェスターシティ-マンチェスターユナイテッド

相手ボランチを抑えるための徹底した決まり事はあるか?

 近年、より多いのは、1トップに1トップ下で守備のスタートポジションを取り、トップ下の選手が相手ボランチを消しつつ、機を見てセンターバックにプレスをかける守り方です。

 マンチェスター・シティも最近ではデ・ブライネがこのトップ下の役割を担っていますし、Jリーグでも川崎フロンターレの中村憲剛選手がこの役割を得意としています。これも相手ボランチを抑えた上でプレスに行くのがポイントです。

 考え方としてはバルセロナが伝統的に行っている守り方もこれに似ています。今はメッシがいることで少し変わってはいますが、1トップに加えてインサイドハーフの選手がマークしていた相手ボランチを消しながら相手センターバックに出ていくことをプレスのスイッチとする。今はヴィッセル神戸にいるイニエスタ選手もこれが非常にうまい選手です。

 またハイプレスといえば、今やブンデスリーガの代名詞。近年では各チームがシステムを頻繁に変えながら“プレス合戦”を行っていますが、このシステム変更の際の決め手の1つに「相手ボランチの抑え方」があるように見えます。

 メンヘングラードバッハやシャルケ、ライプツィヒなど、好調なチームはいずれもハイプレスを武器として持っています。そして、いずれのチームもいくつかのシステムを使い分けていますが、大事なことはシステムを複数持つことではありません。ハイプレスを成立させるためやりやすくするため、迷いをなくすために、守備のスタートポジションをいじって、もう一度流れを引き戻そうと考えているのでしょう(攻撃のために変えることももちろんある)。

 そのための視点の一つが「相手ボランチを抑えられているか」であることは明白です。

つづきは発売中のフットボール『戦術』批評からご覧ください。


プロフィール
岩政大樹(いわまさ・だいき)
1982年1月30日生まれ、山口県出身。東京学芸大から鹿島アントラーズに加入し、2007年からJリーグ3連覇に貢献した。3年連続Jリーグベストイレブンに選出された。2010年南アフリカW杯日本代表。13年に鹿島を退団したあとタイのテロ・サーサナ、ファジアーノ岡山、東京ユナイテッドFCを経て18年に現役を引退。ベストセラーとなった『PITCH LEVEL』(KKベストセラーズ)でサッカー本大賞2018受賞。解説や執筆を行うかたわら、メルマガ、ライブ配信、イベントを行う参加型の『PITCH LEVEL ラボ』を開設するなど、多方面に活躍の場を広げている。


フットボール戦術批評

【商品名】フットボール『戦術』批評
【発行】株式会社カンゼン
2020年2月6日発売

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