今だからこそ考えたい活動休止期間中のメンタルの持ち方。シュタルフ悠紀監督に聞く

2020年04月15日

インタビュー

令和2年4月7日から5月6日までの30日間、新型コロナウイルスの感染が都市部で急速に拡大していることから、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、及び福岡県の7都府県に緊急事態宣言が発令されました。海外で見られる都市封鎖(ロックダウン)ではありませんが、密閉、密集、密接のいわゆる『3つの密』を避ける行動を徹底し、感染拡大の防止が求められています。子どもたちにとっても、学校が休校になり“サッカーどころではない”状況がつづきますが、サッカー少年・少女であれば、やがて騒動が収束へと向い、また再び、仲間とグラウンドに集まってボールを蹴る日を思いながら、心身のコンディションを整えておきたいことでしょう。そこで今回『ジュニアサッカーを応援しよう!』では、Jリーグ(Y.S.C.C.横浜)の監督であると同時に育成年代の指導現場にも立ち続けているシュタルフ悠紀リヒャルト氏に「困難な状況下におけるサッカー選手のメンタル」をテーマに電話でのインタビューを実施しました。そのインタビューを2回にわたって掲載します。

取材・文●山本浩之 写真●ジュニサカ編集部


シュタルフ悠紀

Jリーグ(Y.S.C.C.横浜)監督・シュタルフ悠紀リヒャルト氏に聞くサッカー選手の心(メンタル)の持ち方

――Y.S.C.C.のオフィシャルサイトで「クラブ全体の活動休止及びクラブスタッフ在宅勤務のお知らせ」が発表されました。活動休止前にシュタルフ悠紀監督は選手やスタッフにどのようなお話しをされましたか?

私は4月7日(火)の午前中に選手たちと会いました。それまでも新型コロナウイルスの影響でリーグ戦が延期になり、いつサッカーができなくなるのかわからない状況でしたが「みんなが集まってサッカーができるだけ、まだ幸せなことだと考えて取り組んでいこう」と声をかけながら練習をつづけてきました。しかし、いよいよ緊急事態宣言の発令が近づいてきた中で、僕らJリーグのクラブが、いま一番世の中のためにできることを考えると、それはチームが練習をつづけることではなく、活動の自粛をして新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことでした。「自分たちが活動の自粛以外にできることを考えていこう」という話をして解散しました。

――すぐ翌8日から、Y.S.C.C.のSNS(twitterInstagram)やYouTubeでハッシュタグ「#Stay Home ~YSから皆様へ」のついた動画リレーが配信されましたね。

そうですね。Y.S.C.C.では2系統の動画配信を用意しています。まず、ファンやサポーター、一般の方にも見ていただけるようにオープンなものでは、スタッフと選手全員によるフリーテーマの動画リレーを始めました。第1回目は僕が担当して、バランスや集中力を養うためのトレーニングを紹介しました。テーマは各自が自由に決めて、次の人を指名していきます。大体1カ月ぐらいで全選手とスタッフ全員がつながります。もう一つは、スクール会員限定のYouTubeチャンネルです。スクール生に向けて選手とスタッフ全員が一般公開のものとは異なるトレーニングメニューをアップしていきます。

――活動休止期間中のトレーニングについて教えてください。

チームで自主練習のメニューを用意しています。基本的には私が出したアイデアをベースにテクニカルスタッフと細かいところを詰めていき、理事長や強化担当もまじえたテクニカルミーティングで提案します。さらに選手会(キャプテン・副キャプテン)にも打診して、みんなが合意のうえで形にしていきました。ただ、ボールを使ったトレーニングはなかなか難しいので、アスレティックパフォーマンスコーチの考えてくれたフィジカルトレーニングがどうしても多くなります。選手たちには数日分の練習プランを配布して、トレーニングメニューは選手自身が選べるよう選択肢を設けています。もちろんトレーニングには狙いがありますので、いくつかの条件はありますが、毎日同じにならないように、いまは5つのメニューから選んでもらっています。

――3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けるためには、選手は1人でトレーニングをすることになるのでしょうか?

1人での練習になりますが、選手には4人一組のグループをつくりました。週に2日はビデオ電話などのオンライン環境を利用したメニューも盛り込んでいます。1人で淡々とやるよりも「もう1セットがんばろうぜ!」と互いに鼓舞できるように工夫したのです。グループは隔週で交代してチームとしてのコミュニケーションをとれるようにしました。

――現時点では、チーム活動を4月19日まで休止する予定となっています。

状況にもよりますが、4月20日(※注)から再スタートを予定しています。ただし決して通常に戻れるわけではありません。チームでは“スロースタート”と言っているのですが、練習回数を減らして、チーム練習と自主練習をバランス良く取り組むイメージです。対外試合は一切行いません。週末を休みにして、平日を自宅での自主練習と小グループでのチーム練習にあてます。

※注:4月20日(月)からの再開は延期となりました。Y.S.C.C.は引き続き活動休止し、選手は自主トレーニングを継続します。

シュタルフ悠紀

サッカー選手には、いつでもパフォーマンスを発揮できる能力が求められる 

――先が見えない不安の中ですが、プロサッカー選手のようなアスリートにとっては一年一年が勝負なわけです。それだけに休止期間が長引けば、メンタルやフィジカルが追い込まれてしまう心配はありませんか?

仮にサッカー選手がプロとして活躍できる平均寿命を30歳としましょう。日本人の会社員の定年退職が65歳として考えてみると、プロサッカー選手の抱える“1年の重み”は倍以上になります。実際の選手寿命は多分もっと若いでしょうから、本当に厳しいと思います。さらにサッカーはハイインテンシティスポーツですから、選手は一度コンディションを失ってしまうと、なかなか元に戻すことができません。特にベテラン選手になればなるほど懸念されます。

――そう考えると、やはりチームでボールを蹴りたいところですが、でも、そこをグッと我慢しなければならないわけですね。

中途半端に自粛をしても意味がありませんからね。これからお話しをすることは私が個人的に思っていることです。何人かの選手には伝えたのですが、サッカー選手であれば、監督から「いくぞ!」と言われたら、どんなときでもパフォーマンスを発揮できなければならないものです。これはサッカー選手には大切な能力です。例えばレギュラーシーズンであれば、控えの選手は90分の試合の中でいつ出番が回ってくるかわかりませんから、いざ「いくぞ!」と言われたときのことを考えて、準備を怠ることはできませんよね。そのレギュラーシーズンの一試合を、いまの状況に置き換えてみましょう。1カ月後に開幕するかもしれない、開幕しないかもしれない、でも開幕することを考えて常に準備をしておく。プロであれば「いくぞ!」と言われたときにパフォーマンスを発揮できなければダメです。プロの世界ではチャンスにパフォーマンスを発揮できない選手は消えていきます。だから、この状況下でのメンタルの作り方は長く厳しいですが、後で「あの経験が活かされた」と思えるようにがんばれと話しました。

――厳しい状況であるからこそ、物事をネガティブからポジティブに切り替える力が大切なのですね。

そうですね。私は現役時代にエリートな選手ではありませんでしたから“雑草魂”というか、つねに「人よりもがんばらなければ道は開けない」と奮い立たせてきました。そう思わなければ、つづけていくことができなかったからです。世界中のサッカークラブをめぐりながら、次の契約先が決まっていない状態でチームを去らないといけないことが毎年のようにありました。先がない不安を毎年のように抱えていたのです。そんな“宙ぶらりん”の状態が、いまの状況(活動自粛)に似ているかもしれません。キツイ状況は同じです。でも、いまをポジティブに捉えるとすれば、所属チームは決まっている状態ですから、いつか自体が収束すれば「サッカーができるだけマシだ」と考えられます。所属チームがなければ、いつトライアウトがあるかわからない、いつ練習参加に呼ばれるかわからない中でずっと自主練習をしながらコンディションを維持しないといけない。そういう意味では、確かにいまは苦しい時期ではありますが、それは“サッカー選手に必要な能力である”と考えて、選手にはポジティブに取り組んでもらいたいんです。僕らY.S.C.C.のチームスローガンは“やってやろうぜ +1(PLUS1)”です。こんな状況にあっても“やってやろうぜ”の精神を持ちながら、新しい能力として強いメンタリティーを“+1(PLUS1)”するための試練だと思って、乗り越えていこうと選手たちにも伝えました。


【つづき】今、親子で考えたいサッカーとの関わり方


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