ドラゴン桜に学ぶ指導理論。「褒め方テクニック10カ条」とは

2020年06月08日

メンタル/教育

大ヒット受験漫画『ドラゴン桜』には他分野でも通じる「金言」がこれでもかと散りばめられている。もしかしたら悩めるサッカーの指導者にとっては、これ以上の参考文献はないかもしれない。サッカー指導者の顔も持つライター・吉沢康一が、桜木建二の生みの親・三田紀房に、言葉がもたらす価値を『フットボール批評 issue28(6月8日発売)』から一部抜粋して紹介する。

『フットボール批評 issue28』 より一部転載

文●吉沢康一 イラスト●Ⓒ三田紀房/コルク


ドラゴン桜

サッカーでも通用するドラゴン桜の「金言」

 誰も予想していなかった事態に世界中が襲われている。新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)はとどまることを知らない。発祥地といわれる中国の武漢や、当初感染者数が多かった韓国では収束に向かっていると伝えられているが、専門家の中には「第一波はおさまったが、パンデミックとなった現状では、第二波、第三波が襲ってくることも視野に入れておく必要がある」と警鐘を鳴らしている。

 世界中でボールが転がっていない状況が続く中で、サッカー界ももがき苦しんでいることは強いて言葉に出す必要もないのかもしれない。

「今はこんな状況ですけれど、僕は一番すぐに復活できるのは、やっぱりサッカーだと思うんですよね」

 漫画家の三田紀房氏は淡々とそう語る。三田氏は岩手県出身。黒沢尻北高校時代の恩師に国士舘大学出身で、のちに遠野高校で指揮を執った佐々木清偲がいた。第85回全国高校サッカー選手権大会は盛岡商業の初優勝に大きな喜びを感じた。ドイツワールドカップでアルゼンチン対オランダを現地観戦して、その臨場感に加えスケールの大きさを知ると同時に、人類の祭典の中に身を置いたことで、世界がサッカーに対してそのアイデンティティと大きな期待感を抱いていることを理解している。

 三田氏といえば大ヒットした受験漫画『ドラゴン桜』の作者である。ドラマ、舞台化され、韓国にも輸出し、やはりドラマ化となり大きな話題になっている。作品は「受験版スポ根」とスポーツ根性ものを〝受験版〞にしたシンプルなストーリーだが、受験にとどまらず、ビジネス界や他分野でも注目されており、続編『ドラゴン桜2』も連載が開始されるなど高い評価を得ている。

 どうして『ドラゴン桜』が注目されるのか? それは主人公・桜木建二の圧倒的なリーダーシップにある。用意周到にいくつものプランを持っている先見性、歯に衣着せぬ明確な言葉の数々……元暴走族のリーダーでありながら弁護士という設定はいかにも漫画の世界なのかもしれないが、その経歴だけでも一目置かれる抜群の存在感がある。

 主人公の桜木が、傾きかけている三流高校の落ちこぼれ生徒をたった1年で東大合格に導いて、学校を窮地から救い出す。その随所には大学受験という枠を飛び越え、多くの分野でも通じる「金言」が散りばめられている。それはサッカーの世界でも十分に通用するものであり、身につける価値があると断言したい。

主人公・桜木建二の明確な目標設定

 ひとえにサッカーといっても、人それぞれ関わり方は様々である。選手、指導者、サポーターにはじまり、プロの世界であればマスメディア、スポンサー企業、地方自治体にいたるまで、関わりがないところを探す方が難しい。まずは指導現場にフォーカスし、話を進めていくことにしよう。

 中学、高校のサッカー指導の現場では時々、指導者交代という場面に遭遇する。理由は様々だ。公立中学、高校なら転勤によって、ある日突然、これまでの指導体制が変化してしまうことが起こる。ある日突然である。もちろん引き継ぎ事項があるので、噂としては少しずつ広まっていくが、公務員の守秘義務があるため、こうした引き継ぎは秘密裏に進行していき、その顛末は数年後、いや数十年経ってから聞かされたりして驚いたりすることもある。

 転勤の理由は本当に様々であり、その真意がわかってプラスに作用することもあれば、その逆もあるのでわからないから悪いとは言い切ることはできない。新しい指揮官を迎えるにあたって、選手も父兄も、これがプロチームならばサポーターが良いにつけ悪いにつけ〝ざわつく〞のは常である。

『ドラゴン桜』では桜木によって、新しい指導者の所信表明ともいえる、目標設定が明確にされている。「そのために、まずは今年1人東大に合格させます」と桜木は債権者集会で大見得を切る。こうした所信表明は実際に指導現場でも見るこ
とができる。記憶に新しいところでは、浦和レッズの新強化体制が発表された時に「3年計画」が発表された。

 長中期的ヴィジョンを示すことで、こうした所信表明は、ケースにもよるので絶対とは言い切れないが、マイナス的な要素、雑音を取り払うには有効である。

『ドラゴン桜』の作者・三田氏の代表作に高校野球の監督が主人公の『クロカン』という作品がある。そこでも明確なヴィジョンが示されている。明確なヴィジョンを示されることで、読者は安心して作品を読み進めていくことができる。人
を惹きつけるテクニック、ファクターは漫画でも、スポーツでも、それが政治であったとしても、あまり変わることはないのではないだろうか。

「これは自分なりの解釈ですけど、高校野球は『甲子園に行くぞ』『全国優勝だ!』と言いますし、『ドラゴン桜』も『東大入る』『東大行くんだ』と。要するに目標がハッキリしているんです。目指す目標をいかに簡潔に、具体的に伝えるかっていうことが、指導者には求められるんじゃないかなあ。明確に、目標設定を具体的にハッキリ言うことかな」

「承認」と「確認」を盛り込む「褒め方テクニック10カ条」

「うちの子どもは褒められると伸びるんです」という親がいるが、やみくもに褒めたところで子どもは伸びていくわけではない。サッカーの指導者でも「僕は褒めて伸ばします」と胸を張る人もいる。ただ、そういう人に限って褒め方が曖昧で、褒め方そのものにフォーカスできていないことが多い。

『ドラゴン桜』には「褒め方テクニック10カ条」というものが描かれている。『「親力」で決まる! 子供を伸ばすために親にできること』(宝島社)という引用元があるものの、作品の中では論理的、かつ明確に描かれている。言葉よりも実際の漫画を読んでもらえればいいのだが、これはサッカーの指導現場でも使えると断言できる論説だ。そして、サッカーの現場にとどまらず、ビジネスシーンや子育てでも、すぐに実践できる。

 指導者の中には、「褒めること」が苦手な者もいる。いくつかの理由があるが、そういう人は「すぐ褒めると調子に乗って逆効果」「選手の機嫌をとるようで好きじゃない」と考えることが多いようだ。確かに褒めることは諸刃の剣となることがある。ゆえに意図もなく「やみくもに褒める」ことは勧められない。これは気をつけなければならない。あくまでも意図もなくである。「褒める」という行為が、相手ではなく、自分に対しての要素が強く見受けられる場合がある。


つづきは発売中の最新号『フットボール批評 issue28』からご覧ください。


<プロフィール>
三田紀房(みた・のりふさ)
1958年1月4日生まれ、岩手県出身。明治大学政治経済学部卒。代表作に『ドラゴン桜』『インベスターZ』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』など。東大受験をモチーフにした『ドラゴン桜』で2005年第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。現在はモーニング(講談社)で『ドラゴン桜2』、週刊ヤングマガジン(同)で『アルキメデスの大戦』を連載中。


フットボール批評 issue28

【商品名】フットボール批評 issue28
【発行】株式会社カンゼン
2020年6月8日発売

 とある劇作家はテレビのインタビューで 「演劇は観客がいて初めて成り立つ芸術。スポーツイベントのように無観客で成り立つわけではない」と言った。

 この発言が演劇とスポーツの分断を生み、SNS上でも演劇VSスポーツの醜い争いが始まった。 が、この発言の意図を冷静に分析すれば、「スポーツはフレキシビリティが高い」と敬っているようにも聞こえる。

 例えばヴィッセル神戸はいち早くホームゲームでのチャントなど一切の応援を禁止し、 Jリーグ開幕戦のノエビアスタジアム神戸では手拍子だけが鳴り響いた。 歌声、鳴り物がなくても興行として成立していたことは言うまでもない。

 もちろん、これが無観客となれば手拍子すら起こらず、終始“サイレントフットボール”が展開されることになるのだが……。

 しかし、それでもスタジアムが我々の劇場であることには何ら変わりはない。 河川敷の土のグラウンドで繰り広げられる名もなき試合も“誰かの劇場”として成立するのがスポーツ、フットボールの普遍性である。 我々は無観客劇場に足を踏み入れる覚悟はできている。


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