ジュニア年代でも使える? プレミアを席巻した新戦術“オーバーラッピングCB”とは
2020年12月04日
戦術/スキルマンチェスター・ユナイテッドやリーズ・ユナイテッド、ニューカッスル・ユナイテッドを筆頭に、多くのクラブが「ユナイテッド」の名を冠しているが、現存する最古のユナイテッドこそが「シェフィールド・ユナイテッド」だ。由緒正しい英国のクラブで今、「オーバーラッピング・センターバック」という興味深いフットボールが展開されている。最終ラインでチームを支えるセンターバックが積極的に攻撃参加をしていくこのシステムは、言葉だけ聞けば斬新だが、うまく落とし込むことができれば、日本の8人制サッカーでも有用な戦術かもしれない。では「オーバーラッピング・センターバック」とはどんな戦術なのか。12月7日に発売となる『フットボール批評 issue30』から一部抜粋して紹介する。
『フットボール批評 issue30』より一部転載
文●結城康平 写真●Getty Images
現代サッカーでも革新的なセンターバックの攻撃参加
本来は最後尾に位置するセンターバックが、アタッカーとして前線をサポートする。一見長い距離を走らなければならないことから非効率にも思えるが、シェフィールド・ユナイテッドは守備の要をアタッカーとしても活用していく。ただ、センターバックの攻撃参加自体は古くから存在するトピックだ。西ドイツの皇帝と呼ばれたフランツ・ベッケンバウアーは最後尾から自由に攻撃に参加するリベロのポジションを確立し、ビルドアップやラストパスを配球することで攻撃の軸となった。ローター・マテウスもキャリアの晩年にはリベロに転向しており、当時は攻守の要としてチームの中核となるポジションだった。役割としてのリベロは戦術史の中で失われていくが、攻撃参加を好むセンターバックは近年でも存在感を放つ。バイエルンやインテルで活躍したブラジル代表のルシオは大胆な攻撃参加と繊細なテクニックを代名詞としたプレーヤーであり、今ではアーセナルに所属するダヴィド・ルイスが攻撃を好むセンターバックとして知られる。彼らは敵陣での直接フリーキックでもゴールを狙うなど、その積極性でチームを勢いづけてきた。同時に3バックと可変システムの流行に後押しされた、本職サイドバックのセンターバック起用も興味深い。ミケル・アルテタは左サイドバックを本職とするキーラン・ティアニーのセンターバック起用を戦術の肝としており、3バックから自然に4バックに近い陣形に可変。そうなればティアニーが本来のポジションから攻撃参加可能となり、精度の高いクロスボールやコンビネーションでチャンスを演出する。アントニオ・コンテのチェルシーでは、3バックの右側に起用されたアスピリクエタが駆け上がりながらアーリークロスを狙うパターンが組み込まれていた。当然ながら、本職サイドバックの選手はクロスボールの精度やボールを運ぶプレーの技術に優れている。
そのようなアプローチとシェフィールド・ユナイテッドが一線を画するのは、オーバーラップしてくるセンターバックの使い方だ。「オーバーラッピング」という言葉通り、シェフィールドのセンターバックが ボールを運んでくることは少ない。彼らは起点になるというよりも追加のアタッカーというイメージに近く、長い距離を走りながら攻撃をサポートしていく。テクニカルで小柄な本職サイドバックではなく、筋骨隆々とした大柄なセンターバックが駆け上がってくる姿は形容し難い迫力を誇り、英国下部リーグのチームらしい勢いを感じさせる。センターバックの動きも単純にサイドバックの外側を追い越すだけではなく、もともとのポジションを活用してインサイドのハーフスペースに侵入するようなパターンもあり、ハーフスペースで縦パスを待つセンターバックという珍しいものを見ることも可能だ。リスク管理とビルドアップの効率化を組み合わせることを目指し、中盤がセンターバックのエリアをカバーするシステムも整備されている。
つづきは『フットボール批評 issue30』からご覧ください。
【商品名】フットボール批評 issue30
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2020/12/07
【書籍紹介】
プレミアリーグ謀略者たちの兵法
監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。
さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。
もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。
BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。
ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。
「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。
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