ビエルサが仕掛けるマンツーマン。時代に逆行した戦術が持つ「個」の育成という側面

2020年12月07日

戦術/スキル

プレミアリーグの前身となるリーグ(フットボールリーグ)で最後に優勝したクラブであるリーズ・ユナイテッド。長らくプレミア2部と3部を行き来していた古豪を16年ぶりのプレミア復帰に導いたのが、マルセロ・ビエルサだ。ゾーンディフェンスが主流となっている現代サッカーにおいて、アルゼンチン人指揮官が採用したのがマンツーマンだ。時代に逆らうこの戦術は、格上のチームと戦う機会が多い「持たざる者」にとっては、勝利のための戦術という側面だけではなく、個の育成という側面をも兼ね備えている。マスチェラーノやビダルを育てたビエルサが仕掛けるマンツーマン戦術を、本日発売となる『フットボール批評 issue30』から一部抜粋して紹介する。

『フットボール批評 issue30』より一部転載

文●龍岡歩 写真●Getty Images


マンツーマン戦術が持つ「個」を育成という側面

 昨季アタランタの躍進や、CL優勝のバイエルンが見せたハイプレス時の「狩り」はまさにゾーンからマンツーマンへ移行するスイッチで、人を捕まえるという意識を極限まで高めた代物だろう。勿論、ビエルサのプレミアリーグ参戦もその流れをさらに加速させる一因になり得る。

 また、マンツーマン戦術が持つもう一つの可能性として時に規格外の選手を育てる、という側面も忘れてはならない。戦術家としてのイメージが強いビエルサにしても、実は優れた「育成家」としての側面も持っており、これまで数々の面白い選手を育ててきた。

 中でもビエルサの戦術において特に肝となるアンカーはその登竜門的ポジションだ。守備ではマンツーマンで相手に張り付きながら、ボールを奪うやいなや反対のゴールまで駆け出していく。そんな規格外のプレーエリアと判断力が求められるからだろう。

 過去ビエルサのチームでこのポジションを務め飛躍した筆頭株と言えばマスチェラーノだろうか。彼がまだ歳だった頃、リーベルの下部組織でプレーしていたプロ契約前の少年をA代表としてデビューさせてしまったのが、何を隠そう当時アルゼンチン代表監督を務めていたビエルサ、その人である(当たり前だがプロ契約前の選手のA代表デビューは世界でも異例中の異例)。

 マスチェラーノの個でボールを奪える強さはマンツーマンにうってつけで、無尽蔵のスタミナを活かしてプレーエリアを制限することなく、規格外のアンカーとして見事に開花させている。同じようにチリ代表監督時代にビエルサの薫陶を受けたビダルも世界トップクラスのプレーヤーへと駆け上がった。


全文は『フットボール批評 issue30』からご覧ください。


フットボール批評 issue30

【商品名】フットボール批評 issue30
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2020/12/07

【書籍紹介】
プレミアリーグ謀略者たちの兵法

監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。

さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。

もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。

BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。

ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。

「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。


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