安定したビルドアップを生む共通認識「パス3原則」とは

2021年05月26日

戦術/スキル

安定して主導権を握るサッカーをするためには、共通認識を持ってボールを動かすことが重要になります。その際にプレーを選択する基準になる「パス3原則」を『勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル』から一部抜粋して紹介します。

著●倉本和昌 写真●佐藤博之

※書籍からウェブ用に一部編集して掲載しています


受け手の三つの状況におけるプレーを明確化

 私が4年間在籍していた大宮アルディージャでは、「パス3原則」と言われる共通認識があります。以前、アルディージャの監督を務めた故ピム・ファーベック氏が導入・指導したもので、この3原則をベースに質の高いサッカーを披露していました。ここの質が飛び抜けていなくても全員でボールを動かして、なかなか奪われないサッカーを展開していましたが、その秘密が「パス3原則」にあります。

 アカデミーでも実践していけばよりよい選手が育つだろうということで、ときにさまざまな解釈が生まれることもありましたが、言語化・映像化を行うなどして、各カテゴリーで同じイメージを共有することができました。アルディージャのアカデミー強化に欠かせないメソッドになっていると言えるでしょう。

 パス3原則は端的に言えば、

●安定してビルドアップで相手のFWラインを突破する
●意図的にゴールチャンスを作るために、相手のDFとMFの間で前向きの選手を作る

 この二つが大きなテーマになっています。相手との位置関係からパスの受け手に生じる三つの状況に応じて、出し手・受け手のプレーをまとめています。ここでは、センターバックからサイドバックにパスを出す局面で三つの例の中から『原則1』をご紹介します。

原則1 受け手がフリーのとき

キーワード:ハードボール→ターン

 「ハードボール」とは、スピードのある強いパスのことで、当時のアルディージャでも共通語になっていました。強いパスでないと、フリーの状況が無駄になってしまいます。日本人はパススピードが遅いので特に強調されていました。

 日本のジュニア年代でもよくみられるのですが、この場面でセンターバックは右サイドバックの選手の「右足を狙おう」と指導されるケースが多いでしょう。すると、強く蹴ろうとすることで内側に巻いてしまい、右足より前方にずれるケースが増えてしまいます。もちろん、技術が高くて右足にピタリとつけられるケースもありますが、受け手も出してもフリーなのにミスになってしまうケースが少なくありません。

 そのミスをなくすために、「サイドバックの選手の体の真ん中を狙う」ことを共通認識としていました。体の真ん中を狙えば、少しずれたとしても、受け手は対応できる可能性が高いからです。

 受け手はできるだけ高い位置を取った状態で、ファーストタッチでしっかりと前を向く、”オープンコントロールする”ということです。蹴り足の小指付近にボールをコントロールできれば、ワンステップでどこにでも蹴ることができる状況が作れます。


残り2つの原則など、つづきは『勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル』からご覧ください。


【商品名】勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2021/05/18

【書籍紹介】
コーチが学んで行動し続けることでチームははじめて強くなる
コーチの成長=チームの勝利

これまで、スポーツ界では、チームの「勝利」を目指すことと
選手を「育成」することは対比的な言葉として扱われてきました。

チームの勝利を優先しすぎたチームは、選手個々が成長する機会を失い、
育成を優先しすぎたチームは、勝敗から目をそらすことで、
スポーツの本質を見失っている、と言われてきました。

しかし、新しい時代を担うアスリートを育成しなければならない指導者は
チームの勝利という結果を得ながらも、チームの選手全員の「成長」に
目を向けることができなければ、新時代を生き残っていくのはむずかしいでしょう。

そこで“サッカーコーチのコーチ”でセミナー参加者は1500人を超える著者が
自身のスペインやJリーグのサッカークラブでの指導経験や
心理学、脳科学、組織マネジメント理論等をミックスさせた
メソッドをあますことなく公開しました。

サッカーコーチのコーチが綴るサッカーコーチのためのサッカー指導マニュアルです。


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