なぜベルギーは世界的なタレントを輩出できるのか? 国内トップクラスの育成組織に聞くシビアな環境【インタビュー前編】
2021年11月12日
育成/環境最前線で感じる欧州のシビアな育成事情
――ベルギーからはワールドクラスのタレントや将来有望な若手選手が次々に輩出されてきます。実際に現場をご覧になって、ベルギーの育成環境にはどんな特徴があるとお考えですか?
まず育成年代において「欧州」がまるで1つの国のように機能しているような感じがしています。どういうことかというと、ベルギーに限らず欧州では近隣の国から毎週末の試合にスカウトがやってきて、我々はいかに選手を引き抜きから守るかを迫られます。そうした競争だけでなく、育成に関するコンセプトやシステムなどを各国の現場が横のつながりで共有して、切磋琢磨しながら一緒に成長していこうという方向性が欧州全体にありますね。
また、欧州では物事の入れ替わりがとても早いです。日本では育成システムが「6・3・3」という学校制度と合致していますよね。一方、欧州サッカー界は「半年」あるいは「1年」というサイクルでシーズンが変わっていきます。まだシーズンが開始してから3ヶ月ほどですが、我々もU-13からU-18まで、来シーズンのチーム構成をどうするか話しはじめています。そうなるとスタッフの方も選手たちの育成に対して非常にシビアになりますし、選手たちも「1年間ここで生き残らなければ」「もっと成長しなければ」というプレッシャーに常に晒されています。
欧州では16歳になるとプロ契約を結ぶことができますし、選手たちもそれを当たり前のこととして理解していますので、早い段階で契約を勝ち取ろうとします。もちろん23歳くらいまでプロ契約できるチャンスはあるのですが、年齢を重ねるごとにチャンスは狭まっていきますからね。当然、世代別代表に入るような選手たちは他国のビッグクラブからも狙われますし、クラブとしてはそうした有望な選手をいかに自分たちのもとにキープするかを考えます。なので、どのクラブにも中学校を卒業したら1人か2人はプロ契約の選手がいる感覚です。本当に子どもたちは真剣で、自分の人生を賭けてやっているし、次の契約を獲得するために、来年の場所を自分で獲得するためにという意識は非常に高いです。
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