なぜベルギーは世界的なタレントを輩出できるのか? 国内トップクラスの育成組織に聞くシビアな環境【インタビュー前編】
2021年11月12日
育成/環境ベルギーにおける指導者の意外な実情
――週末のリーグ戦には他国からもスカウトが集まるそうですが、そういったタレントを育てている指導者にも優秀な人材が揃っていますか?
僕自身、いろいろ考えさせられることはあるのですが、まずベルギーの指導者が置かれた環境についてお話しますね。一例としてSTVVでは育成部門に携わるフルタイムのスタッフが僕を含めて、ヘッドオブコーチングやオペレーションマネージャー、U-18監督など6人しかいません。他のアシスタントコーチは全員パートタイムかボランティアです。実はフルタイムのスタッフが少ないのはSTVVだからではなく、他のクラブでも当たり前なんです。
ベルギーの労働法ではフルタイムの労働者が働いていいのは週に38時間までと決まっていて、仮にそれを超えるようなら帰宅しても全く問題ありません。しかも、2つ以上の仕事を掛け持ちしている人も多く、それが公に許されていて、サッカー界でも暗黙の了解で副業が当たり前と認識されています。
日本ではプロクラブのアカデミーになればU-10やU-12にも元プロ選手の指導者がフルタイムで雇われていて、休みなく働くことになろうと預かった選手は最後まで責任を持って面倒を見るのが当たり前です。もちろん現実的には適度に休暇をもらうのは当然ですが、街クラブのコーチでも学校の部活で指導するコーチや顧問の先生も、お金を重視せず、指導者として少しでも成長したい、そのうえで選手たちも育てたいという高い意識を持って活動されています。
だからこそ指導に直接関係ない分野からも学び、新しいことを取り入れようというとする、職人的な観点があります。日本の「匠の文化」は今のサッカー界の土台になっていて、素晴らしいことだと思っています。
一方、ベルギーでは「38時間」という枠にとらわれてしまっている側面があります。「ボールがこう動いたら相手がこう動いて、こうなるから次はこうプレーすると、こうやってチャンスができるよね」という論理的な要素や局面での駆け引きなどを細かく教える考えを持った指導者は少ないです。
勝つための戦術も教えますが、あくまで効率的に勝つための方法であって、細かいところまでは言及しません。選手たちが自発的に考えて動かなければならない環境が自然にできているとも言えるんですね。
日本の場合は戦術的なことも細かくチームに落とし込んで、連動して、組織で戦って勝とうという考え方が主流だと思います。ベルギーでは多くの指導者がパートタイムやボランティアなので、自分の職を失うリスクを強く恐れて、「目の前の試合に勝たなきゃ!」という意識になりがちです。
極端に言えば、デカくて速い選手を揃えたら抜かれはしないし、失点もしない、だから勝てると考えます。連動とか繊細さは追求しないですよ。中盤の選手にボール捌きも教えますけど、それよりも個の戦いが大事で、最優先されます。
【インタビュー後編】「ベルギーでは戦術的な動きを日本ほど教えない」。子どもたちの可能性を広げる、欧州の評価基準とは
ベルギー1部シント=トロイデンVVがU-14世代のトライアウトを日本で開催!
■トライアウト概要
<大会名称>
Jヴィレッジチャレンジ powered by シント=トロイデンVV
<開催日時>
2021年12月25日、26日、27日
<応募期間>
2021年10月5日〜2021年11月14日
<応募資格>
・2021年12月25日時点で満14歳以下のサッカー経験者
・心身ともに健康であること
・トライアウト全日程に参加可能であること
・保護者の同意を得ていること
<会場>
Jヴィレッジ
〒979-0513 福島県双葉郡楢葉町大字山田岡美シ森8
※本トライアウトに係る移動費、参加中の宿泊費は参加者ご自身のご負担となります。
※Jヴィレッジの宿泊施設(有料)への宿泊となります。
■詳細、エントリーはこちら
https://j-village-challenge.jp/
▽プロフィール
髙野剛(たかの・つよし)
1973年10月4日生まれ、福岡県出身。東海大学付属第五高等学校卒業後、アメリカに渡りセントラル・ワシントン大学時代に指導者の道へ。サンフレッチェ広島ではミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとでアシスタントコーチを務め、2010年に渡英後はハダースフィールド・タウンのアカデミーコーチや、サウサンプトンFCのアシスタントコーチを歴任。その後、帰国してアビスパ福岡のトップチームコーチやギラヴァンツ北九州のアカデミーダイレクターを経て2019年よりJリーグで育成改革プロジェクト「Project DNA」の立ち上げに携わる。2021年8月よりシント=トロイデンVVでユース マネジング・ディレクターとフットボールストラテジー&ディベロップメントに就任。
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