「ゴールは存在しない」という考え方が重要。シュート自体を未然に防ぐGKのポジショニングとは

2022年08月30日

育成/環境

世界的なGKコーチであるジョアン・ミレッ氏は「ゴールは存在しない」という考えを持っている。この考え方はどういう意味なのだろうか。そして、どのようなイメージをもってGkのポジショニングを指導すればいいのか、『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』より一部抜粋して紹介する。

著●倉本和昌 監修●ジョアン・ミレッ


「スペースを守る」という考えを持つ

 1冊目でも触れましたが、ポジションのポイントをもう一度おさらいします。忘れてほしくないのは、「ピッチの両サイドにある、白いポールで作られたゴールは存在しない」という考えを持つことです。「ゴールは存在しない?」と驚く人もいると思いますが、この話は1冊目に詳しく書きました。「ゴール」を守ろうとするから、「スペースを閉じる(守る)=自分が優位にプレーするためにシュート自体を未然に防ぐ」という考え方が持てなくなるのです。

「スペースを守る」という考えを持てたとしても、GKが少なくとも守るべきペナルティーエリアは決して狭くありません。でも、一つひとつ正しい位置取りをしていけば、それぞれの場面で守るべきエリアは実際のゴール幅(7・32メートル)よりも狭くなります。

 もう一ついえば「守る」という言葉は「ディフェンス」にも置き換えられ、受け身のニュアンスが感じられますが、皆さんにはアグレッシブにスペースを閉じに行くというイメージを持ってもらいたいです。


【ゴールから離れたところでボールが動いたとき、図2-2のようにGKが動く距離は短くなるが、 ボールの移動距離につられて動きすぎてしまい、ゴールを空けてしまうケースが見られる(図でGKは左に動きすぎている)】

「車輪」の外周と中心のイメージで

 後ろにあるゴールの存在にとらわれることなく、どこにポジションを取ればスペースを効果的に守れるのでしょうか。それは感覚でできるものではありません。好きなように動けばというものではないのです。

 例えば、サイドチェンジされた場合は、そのときにいたポジションから逆側に移動すればよいのですが、ボールが長い距離を動くと、自分もつられて大きく動かなければいけないと錯覚しがちです。

 車輪の外周と中心をイメージしてください。中心から遠ければ遠いほど動く距離は長いですが、対応する中心近くの距離は短くなります(図2–2)。

 これと同じで、ペナルティーエリアの外でどれだけボールが動こうが、GKが動く距離は短くてよいことがわかりますか? このポジショニングの基準がないと、GKは必要以上の距離を動いてしまい、適切なポジションからずれてしまうのです(図2–3)。

 ボールは長い距離を移動しても、GKが動く距離はそれよりはるかに短い。ただし、ボールが長い距離を動けば動くほど、GKも動かないといけないと感じて、その分動いてしまうケースが多いものです。図を用いて説明すれば簡単に理解できることですが、実際の試合を見ていると基準通りにポジションが取れているGKは少ないのが現状です。


つづきは『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』からご覧ください。


<プロフィール>
ジョアン・ミレッ
1960年11月1日生まれ、カタルーニャ州出身。85年、怪我のため選手を引退しGKコーチを始める。02年からバスク州にあるゲルニカ市 に拠点を移し、同クラブにて育成/トップのGKコーチを務める。バスク州サッカー協会にてレベル1から3までのGK戦術技術指導講師。2013年に来日し、湘南ベルマーレのアカデミーGKプロジェクトリーダーを経て、2017~2018年までFC東京のトップチームGKコーチなどを務めた。2022年から浦和レッズトップチームGKコーチに就任した。

【商品名】『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』
【発行】株式会社カンゼン
2022年5月20日発売

【書籍紹介】
 スペイン人GKコーチ、ジョアン・ミレッ氏が30年以上GKのプレーを分析し導き出した、GK技術の真髄を伝授!

 ポジショニング、セービング、1対1の型など、ミレッ氏が独自に突き詰めた“真”のGKスキルバイブルです。全GKコーチ必読の書。


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