“育成”と“指導”の違いとは? コーチの究極の役割は「選手をやる気にさせる」こと

2021年05月07日

育成/環境

育成と指導の違いを意識したことはありますか? 両者には明確な違いがあります。育成には選手をやる気にさせることが求められます。では、子どもたちにやる気を持たせるために、指導者ができることは何なのでしょうか。5月18日発売予定の『勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル』から一部抜粋して紹介します。

著●倉本和昌



(写真●佐藤博之)

「やる気」を引き出すために必要なものとは?

 小中高生に関わる中で、よく使われるのが「指導」と「育成」という言葉ですが、私は両者には違いがあると思っています。文字通りの意味は辞書などに譲りますが、私なりの定義は、

●指導…手段や方法を教えること
●育成…やる気にさせること

です。そして、コーチの究極の役割は、選手をやる気にさせることだと考えています。言い換えれば、コーチは選手を育成する、育てることが求められます。

 選手を育成する、育てるにあたり、コーチである皆さんは自分がどんな人を育てたいと思っているか、はっきりと決まっていますか?私は、人や選手を育てるからには、「こういう人、こういう選手を育てたい!」というゴールを明確にする必要があると思っています。ゴールがあることによって、常にその方向へのアプローチが可能になります。

 私は「主体的、創造的で戦術的解決できる人+周りによい影響を与えられる人」を育てると決めています。いつ実現できるかわかりませんが、こうなるようにアプローチし続けると決めています(ちなみに、育成の目標がはっきりと定まっていない人は、手段や方法を教えるといったうわべだけの指導へと流れてしまう傾向があると思っています)。

 コーチが、何を伝えるにしても、まずは選手がやる気・その気になっていなければ意味がありません。そのためにも、「安心・安全」を感じられる環境である必要があります。

 例えば、選手がコーチに対して少しでも「怖い」と感じていたら、本当の意味でやる気・その気にはなれないでしょう。先ほどにも例示しましたが、「怒ると怖いから、言われた通りにやる」「怒られたくないから、仕方なくやる」という環境は、安心・安全とは対極の状況になります。

 小学生のときに怖いコーチに教わっていた子が、「もう怒られたくないから」という理由で、中学でサッカーを続けられなくなるケースがあります。また、ある学年のときに怖いコーチに教わっていた子が、次の学年で別のコーチに教わったときに、言われたことをやらなくても怒られないという理由で、コーチの言うこと聞かなくなったこともあるようです。いくら子どもたちに「失敗してもいいから、どんどんトライしろ!」と言っても、コーチが怖かったら(ミスして怒られたら)トライするはずがありません。

 これらのケースは子どもが悪いのでしょうか?そんなはずはありません、悪いのは、明らかにコーチです。選手をやる気・その気にするためには、やはり安心・安全を感じられる環境を整えることが近道になるのです。


つづきは『勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル』からご覧ください。


【商品名】勝利と育成を両立させる新時代のサッカーコーチングマニュアル
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2021/05/18

【書籍紹介】
コーチが学んで行動し続けることでチームははじめて強くなる
コーチの成長=チームの勝利

これまで、スポーツ界では、チームの「勝利」を目指すことと
選手を「育成」することは対比的な言葉として扱われてきました。

チームの勝利を優先しすぎたチームは、選手個々が成長する機会を失い、
育成を優先しすぎたチームは、勝敗から目をそらすことで、
スポーツの本質を見失っている、と言われてきました。

しかし、新しい時代を担うアスリートを育成しなければならない指導者は
チームの勝利という結果を得ながらも、チームの選手全員の「成長」に
目を向けることができなければ、新時代を生き残っていくのはむずかしいでしょう。

そこで“サッカーコーチのコーチ”でセミナー参加者は1500人を超える著者が
自身のスペインやJリーグのサッカークラブでの指導経験や
心理学、脳科学、組織マネジメント理論等をミックスさせた
メソッドをあますことなく公開しました。

サッカーコーチのコーチが綴るサッカーコーチのためのサッカー指導マニュアルです。


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