両足を肩幅で立つ!セービングの距離を最大化する立ち方と“やってはいけない”姿勢とは

2022年05月18日

戦術/スキル

ゴール集などで際どいコースに決まった素晴らしいゴールを見ると、「これはどんなGKであっても止められない」と感じる人は少なくない。では、本当にそのゴールは止められないゴールだったのだろうか。どこかに止められなかった原因はないのだろうか。世界レベルのGKコーチであるジョアン・ミレッ氏による“正しい立ち方・姿勢”から考えてみよう。

『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』より一部転載

著●倉本和昌 監修●ジョアン・ミレッ


オーバースタンスが失点の原因に

 ゴール集を見ていると、GKがセービングしたけれど届かずにシュートが決まっているものも多くあります。その中で、「サイドネットに突き刺さる素晴らしいシュート。GKはどうしようもないですね」という解説もよく聞きます。でも、本当にすべてがそうでしょうか?

 失点シーンを細かく分析すると、GKがオーバースタンスで立っていたため横に動けずにシュートが入っていることが多いものです。決して「素晴らしいシュート」ではないのです。したがって、私たちが指導する際には最初の立ち方、姿勢でやってはいけないことを伝えないといけません。

 「海外の選手もやっているじゃないか」「ほかの国はこれで止めている」という人も当然いるでしょう。でも皆さん、実際に両足を肩幅よりも広げて立ってみてください。そもそも横に動きづらいですし、この姿勢からさらに横に足を踏み出すのも難しいのがわかっていただけると思います。これまで常識だといわれていることも「本当にそうなのか?」と、きちんと検証する必要があるのです。

 一方で、両足を肩幅で立ったほうが重心移動がしやすくなり、横への踏み出しも簡単です。肩幅のスタンスで立っていて横に出せる一歩と、オーバースタンスで立っていて横に動かせる一歩とでは、どちらが大きく出せるかは明らかです。1歩目の踏み込む位置が違えば、セービングの距離にも差が出てきます。

 セービングの距離と深い関係があるのが、跳んだときに体が描く軌道です。オーバースタンスからのセービングでは1歩目が体の近くになってしまうので、跳んだときに体が上から落ちるような、イメージとしては山なりの軌道を描きます。したがって、距離があまり伸びません。一方で、肩幅のスタンスからだと1歩目を体の遠くに踏み込めるので、体がより直線的な軌道を描いて遠くへ跳ぶことが可能になるのです。

 さらに、オーバースタンスで立っていると、横に動くためにセービングする方向とは逆側に足を抜く選手もいます。右側に跳びたいのにもかかわらず、左側に足を踏み込んでしまうので、セービングの距離にロスが生じます。この数センチ、十数センチ分が届かないことさえあるかもしれないのです。


つづきは『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』からご覧ください。


<プロフィール>
ジョアン・ミレッ
1960年11月1日生まれ、カタルーニャ州出身。85年、怪我のため選手を引退しGKコーチを始める。02年からバスク州にあるゲルニカ市 に拠点を移し、同クラブにて育成/トップのGKコーチを務める。バスク州サッカー協会にてレベル1から3までのGK戦術技術指導講師。2013年に来日し、湘南ベルマーレのアカデミーGKプロジェクトリーダーを経て、2017~2018年までFC東京のトップチームGKコーチなどを務めた。2022年から浦和レッズトップチームGKコーチに就任した。

【商品名】『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座 技術編』
【発行】株式会社カンゼン
2022年5月20日発売

【書籍紹介】
 スペイン人GKコーチ、ジョアン・ミレッ氏が30年以上GKのプレーを分析し導き出した、GK技術の真髄を伝授!

 ポジショニング、セービング、1対1の型など、ミレッ氏が独自に突き詰めた“真”のGKスキルバイブルです。全GKコーチ必読の書。


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