「8人制に切り替わってからボールを持つことが楽になった」。個々のスキルを大切にするクラブの客観的な見解/ディアブロッサ高田FC 川上弘仁監督 編【短期連載】
2017年03月21日
コラム一人ひとりのボールタッチ数が増え、ピッチが狭い分全員が攻守に関わりやすくなる。8人制サッカーがスタートして5年がたった。“少人数制”サッカーの採用は4種の育成の現場に何をもたらしたのか。
2017年3月6日に発売となった『ジュニアサッカーを応援しよう! Vol.44春号』の第2特集では、複数のサッカー関係者に取材協力を頂き、8人制サッカーを見つめる企画を行った。ページの都合上、誌面ではインタビューの一部しか掲載できなかったが、それぞれに内容が濃く8人制サッカーを通してジュニアサッカーを見つめ直すいい機会になると考えたため、本誌とWebの連動企画として4人のサッカー関係者のインタビューを全文公開する。
二人目は奈良で活動しているディアブロッサ高田FCでU-12の監督を務める川上弘仁氏だ。独自の育成を行う中で客観的に8人制サッカーに対する意見を持っているので、ぜひご一読いただきたい。
(取材・文●木之下潤 写真●Noriko Nagano、佐藤博之)
習得した技術を積極的に試すことを許容する心が大事
――最初に、川上さんから見た「8人制サッカー」のメリットデメリットをお聞かせください。
「メリットは、まず子どもたちがプレーに関して責任感をより持たなければならなくなったと思います。1対1の局面が多いから攻守の切り替えが必要だし、当たり前のように走ることが求められる。それは8人制のピッチが小さくプレー面においてごまかしが効かなくなったことが多くなったからです。
11人制に比べると、足の遅い子を起用しにくくなったように感じます。そういった選手の中にはボールテクニックに秀でた子が昔から多く存在していて中盤でタメを作ったりリズムを変えたりアクセントとして起用できていたんですが、うちのクラブでは少し使いにくくなったかなと」
――8人制においてはピッチサイズに対する選手の人数と、子どもの成長期によるフィジカル面の向上が大きく関わります。たとえば全日本少年サッカー大会の決勝では、センアーノ神戸は前後半オールコートのマンツーマンディフェンスを仕掛けました。
「8人制サッカーはスピードが大事になります。うちは伝統的に攻守の切り替えなどスピードを重視してきました。だから、普段の練習から切り替えを早くして連続でプレーし続けることを意識してやっています。ボールを取られた瞬間から周囲の選手がそこに連動するというか…。
それは守備というより攻撃の一部分やと捉え、ボールに対して食らいついて攻撃をやり返すという意識を持たせるように指導しています。だから、とられた瞬間の数秒間は100%の力でボールを追うことは当たり前として言い続けています」
――今言われたような局面を増やすことは8人制の狙いでありましたし、攻守の切り替え、局面の判断とその精度とその速度を上げることは目的だったと思います。そんな中、ディアブロッサ高田FCはドリブルを中心としたトレーニングをされ、個人のスキルに目を向けられている印象です。
「そうですね。うちのクラブはポゼッションなどのスタイルよりも、“ボールを自由に扱えるようになること”を目標にしています。だから、8人制になったからとか11人制に変わるからとかは関係がないと考えています。
最近感じているのは8人制に切り替わってから“ボールを持つことが楽になった”部分です。昔とは違い、ドリブラーが出にくくなったのかなと思います。一人目を抜くと、二人目が詰めてくるまでに間があるから相手の守備が緩くなった感じはします。ようするに、次々にドリブルで交わすような局面に出くわさなくなった。宇佐美貴史選手や原口元気選手や清武弘嗣選手らを小さい頃から見ていますが、彼らのような選手が今後出現するのかは疑問です」
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