「考え方は、既にプロ」「向上心が傑出している」。久保建英の成長に学ぶ、FC東京の新たな“育成メソッド”とは

2017年08月14日

コラム

クラブユース選手権で2連覇を達成したFC東京U-18。ファイナルの浦和ユース戦で貴重な決勝ゴールを奪ったのはJ3でも出場をつづける16歳の久保建英選手だった。10歳からおよそ4年という歳月をバルセロナで過ごした彼はやはりスケールの大きさを感じさせる選手だ。では、現在所属しているFC東京は、“久保建英”の成長から何を学び、それをどう生かそうとしているのか。発売中の『フットボール批評issue17』から一部抜粋して紹介する。

(文●加部究 写真●佐藤博之、Getty Images、ジュニサカ編集部)

フットボール批評issue17』より一部転載


Kubo

久保建英の成長にクラブも学ぶ

16歳の最年少Jリーガーは、チームの内外を問わずエースと認識されている。昨年15歳でJ3にデビューした時は、さすがに手荒い洗礼はなかった。しかし現在はFC東京の立石敬之GMが「エースですよ」と認めるだけではなく、対戦チームも相応の警戒網を敷いている。

 FC東京U-23を率いる中村忠監督が言う。

「試合後に相手の監督や選手たちと話をしても、ミーティングで一番名前が挙がると言っていました。やはり“あそこはやられてはいけない”と、かなり意識されていますね。長い目で見ると彼にとっては良いことだと思いますが……」

 久保建英に活躍されれば、目先の勝敗に直結するだけではなく、メディアが話題にする。ダメージは倍加するのだ。

 中村監督は、2年前にU-15むさしの監督として久保を迎え入れ、U-18コーチを経て現職に就いた。同監督の原点となる東京V(旧読売クラブ)は、過去に森本貴幸、菊原志郎、戸塚哲也など最年少でトップリーグにデビューした選手を輩出してきたが、彼らと比較しても手もとの原石の輝きは格別だ。

「まさかこの短期間でルヴァンカップやJ3、さらにはU-20ワールドカップにも出場するなんて考えてもいませんでした。正直なところ、僕自身が驚いています。今まで16歳でこれだけのプレーをする日本人選手は見たことがないですね」

 周知の通り、久保は10歳から約4年間、バルセロナのカンテラに在籍していた。

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【バルセロナ在籍時の久保建英選手】

「考え方は、既にプロですよ。そこはやはり日本育ちの子とは全然違います」

 そう言って、中村監督は続けた。

「世界のトッププレーヤーとして活躍するために、今何をするべきかを常に考えています。もちろん学校には通っていますが、サッカー中心の生活をしている。とにかく負けず嫌いで、自分に対しても厳しい。出来ないことを出来るように、という向上心が傑出しています」

 さらにプレーだけではなく、どのカテゴリーのどんなチームに入っても、すぐに溶け込んでいく順応性も際立っているという。単身異文化の中に飛び込んだ国際経験は、確実に活きている。

「普通16歳でトップチームに行けば、コミュニケーションを取り、自分を表現するのは難しいものです。その点でも、彼はとても優れています。やはりスペインに行けば、自分の居場所を確保しなければいけなかったわけですから」

 久保の前例を見ない大幅な飛び級経験は、クラブにとっても貴重な教材となり、活性剤にもなっている。

「いずれ彼は海外に出ていくとは思いますが、今は僕らのもとで育っている。次にこういう選手が出てきた時にどう対処するか、あるいは育てていくために何をしていけばいいのか。クラブ内での基準、水準を高く保っていかなければならないと思います」

 立石GMは、そう語る。だが反面、周囲に黒船のような刺激を与え続ける久保は、クラブでも日本代表でも、基本的に2つのチームをかけ持っている。心身への疲労蓄積が気になるところだ。

 立石GMが続ける。

「さすがにU-20ワールドカップへの出場には、少し心配しました。このレベルの試合になれば、コンタクトを受けずにはプレー出来ません。一方でコントロール、ポジショニングなどを工夫して、プレスをかいくぐる術は、その中で経験しないと判らない。

 本人と話してみてまったく怖れていなかったし、モチベーションも十分に高かった。ここは本人の意思を尊重し、僕の物差しを一度捨てるべきだと考えました。

 僕らの物差しで考えると、僕らの基準でしか育たないと思います。もちろんJFA(日本サッカー協会)とは、身体のサイズ、筋量などコンディション面も含めて、相当密に連絡を取り合っています。ただし身長も伸びているし、どこかで少し休む時期を作らないといけないとは考えています」

(つづきは、フットボール批評issue17でご覧ください)

TOKYO, JAPAN - NOVEMBER 20:  (EDITORIAL USE ONLY) Takefusa Kubo of FC Tokyo U-23 in action during the J.League third division match between FC Tokyo U-23 and Cerezo Osaka U-23 at Yumenoshima Stadium on November 20, 2016 in Tokyo, Japan.  (Photo by Etsuo Hara/Getty Images)


フットボール批評
【商品名】フットボール批評issue17
【発行】株式会社カンゼン
B5判/160ページ
2017年8月7日発売

⇒サッカーの勝敗は戦術で決まる。超一流の戦術眼
【主な特集内容】
◎ピッチ上の哲学者の「戦術眼」
・遠藤保仁(ガンバ大阪)ロングインタビュー
「代表はずっと日本人監督でやるぐらいの勇気があってもいい」
「相手に合わせるのも大事ですけど、自分たちの武器を持って戦うほうが僕は好きですね」

◎本物の「戦術眼」でサッカーを読む
・乾貴士(SDエイバル)「スペインで最も学んだのはポジショニングの大切さ」
・風間八宏(名古屋グランパス監督)「パサーが見なければいけないのは『敵の一歩』」

◎育成哲学の作り方
・立石敬之・中村忠(FC東京)
「育成大改革」―久保建英を始めとする新たな若手選手育成メソッド―
・須藤茂光・城福浩(JFA)
「日本サッカー」強化論 「水をやり続ける指導者をもっともっと増やし続けていく」

◎ポジションとは何か?
・山村和也(セレッソ大阪)原点回帰 トップ下で輝く理由
・川島永嗣(FCメス)「日本では、GKは“受ける”という発想しかなかった」
・ラウール・ゴンサレス 引退後の人生「今はどこもかしこも時間に追われ、余裕がなくなっている」

◎新連載スタート
・武田砂鉄『スポーツ文化異論』
第一回 試合終了直後のインタビューの意味
・木村浩嗣『スペインフットボールジャーナル』
メッシ、ロナウドよ、そこに愛はあるのか?
・佐藤拓也『西村卓朗のチーム強化論』
第1回「激論」
・中村慎太郎『サッカーをつむぐ人』
第一回 サッカー本の意義


 

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