人生最大の挫折――。本田圭佑がガンバユースに昇格できなかった本当の真相【後編】
2018年06月16日
読んで学ぶ/観て学ぶセレクションに合格し、ガンバ大阪ジュニアユースに所属することになった本田圭佑選手(摂津FC/ガンバ大阪ジュニアユース/星稜高校)。しかし、ユースに昇格することができず、星稜高校に進学することになりました。なぜ、本田選手はガンバユースに上がることができなかったのか、本当の真相とは。
【前編】「お前なんか絶対に一流になられへん」。”努力家”本田圭佑の原点
文●元川悦子 写真●GettyImages
ガンバ大阪ジュニアユースでの日々
99年春、通学区内にある摂津四中に入学した本田は、ガンバ大阪ジュニアユースに通い始めた。三つ上の弘幸さんは高校サッカーの名門・帝京高校へ進み、家を出て東京へ行ってしまった。幼い頃からつねに背中を見続けてきた兄と初めて離れ、本田はプロへのチャレンジを一人で本格的にスタートさせることになった。
練習場のある大阪モノレールの万博記念公園駅は、自宅に近い南摂津駅から5駅。最初はごく普通にモノレールを利用していた。1〜2カ月が経ち、ようやく学校にもクラブにも慣れてきた頃、父・司さんが息子の行動に物言いをつけてきた。
「お前、なんでモノレールで行っとるんや。チャリンコで行くのもトレーニングやろ」
本田にも意地がある。すぐさまモノレールを使うのをやめ、自転車でのクラブ通いに切り替えた。
「ウチの親父はラクをしようという考え方が大嫌い。そういう気持ちを少しでも持っていたら絶対に許さへん。怒られるのはいつもメンタルのことでした。おじいちゃんも相変わらず厳しかった。ガンバの練習が終わって家に帰ると、晩酌に付き合いながら『お前は甘い』と怒られる。普通の中学生じゃないですよね。逃げ道なんかなかったし、いつも自分との戦いでした。Jのアカデミーに入ればお金もかかりますけど、親父は金銭面に関しては一度も口に出したことはなかった。文句ひとつ言わずに全面的にサポートしてくれましたね」
厳しくもあり温かくもある家族のサポートを本田は成長へのエネルギーに変えた。自分との戦いは家の中だけではなかった。エリート集団のガンバに行けば、熾烈な競争が待っている。特に誕生日が一緒で同じレフティである家長の存在は、本田にとって大きな壁であり、刺激だった。
「アキはクオリティが高かった。小さかったけれど、ドリブルに優れていたし、ボールタッチの仕方、体の使い方……、すべてが抜きん出ていました。でも自分も負けていなかったですよ。ガンバの練習は1対1、2対3、4対4、6対6とかほとんど対人で、体をぶつけ合うことばっかりやっていたけれど、俺だけじゃなくて、みんなアキに負けたくない気持ちは強かった。俺らのライバル意識って、人より多く飯食ったほうが勝ちとか、人より牛乳多く飲んだほうが勝ちとか、そのくらい凄まじいものがあった。俺たちの学年は個性にあふれていたから面白かったですね」
彼はレベルの高い仲間に真っ向から勝負していた。
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