一人のサッカー少年から世界チャンピオンへのぼり詰めるまで フリースタイル・フットボーラー徳田耕太郎選手インタビュー【後編】

2013年12月25日

インタビュー

前編に続き、フリースタイル・フットボーラーの徳田選手のお話をお届けします。秘技「tokuraクラッチ」の誕生秘話や、その特訓方法などもお聞きしています。またジュニア年代の子どもたちにもチャレンジしてもらいたい、徳田選手実演のテクニック映像も紹介します。

文●平野貴也 写真●編集部

(前編はこちらから)


自分のスタイルを築き上げるために

――ここからはフリースタイルの技についてお聞かせください。初めて覚えた技は、何だったのでしょうか?

ボールを蹴った足で、浮いたボールの周りを下から上へぐるっと一周してもう一度同じ足で蹴る「アラウンド・ザ・ワールド」という技を丸2日かけて成功させました。2日がけで1回成功させただけでしたけど、本で紹介されるような技は、ロナウジーニョみたいなすごい選手にしかできないものだと思っていたのに、特別に上手なわけでもない僕にもできるんだなと分かった瞬間は、すごく嬉しかったですね。その喜びが、もっと練習すればほかの技もできるようになるはずだと思う気持ちになりました。積み重ねていけば、この本の中の人みたいになれるんだと思いました。

もちろん、そのときはまだフリースタイルのプロになるんだなんてことは考えていなくて、単純に「この技ができたら、ちょっとかっこいい」という憧れだけでしたけどね。本当に練習が楽しかったです。

――オリジナルの技もお持ちですが、作るのが大変なのでは?

フリースタイルの世界では、オリジナルの技を作っていかないと勝てないという背景があります。元々、僕が最初に買った本に「自分のスタイルを築き上げることが一番のテーマ」と書かれていました。自分のオリジナルの技をどんどん作ってそれだけで構成すれば自分のスタイルになりますし、他人が編み出した技でも自分だけの組み合わせを作れば自分のスタイルになるという意味です。ですから、オリジナルの技が必要だという考えは、フリースタイルの練習を始めた頃から持っていましたし、実際に作っていました。ただ、技術的には難度が高くても、お客さんにはウケがよくない技というものもあります。

――フリースタイルには、採点競技ならではの難しさがありますよね。フィギュアスケートでは「技術点」と「芸術点」のバランスが議論されていますし、体操でも「難度」と「完成度」のどちらをより評価するかという議論があります。

フリースタイルをやっている人の多くは、自分が知っている世界の中だけで「すごいことは、これ。格好良いことは、これ」と決めつけてしまっていることが多いように感じます。でも、BMX(自転車でパフォーマンスを行う競技)やブレイクダンスを見ていると、格好良い立ち振る舞いや動作をもっと学ぶことができます。フリースタイルはいろいろな技を作って組み合わせるので個性が出ます。ただ、その中でも格好良い人は、技の選び方も組み合わせ方も格好良い。

フリースタイルをやっている人だけがわかる難易度の高い技ばかりを見せるのではなくて、フリースタイルを知らない人が見てもすごい、格好良いと思う見せ方が大事だというのが、僕のこだわりです。フリースタイルの世界はまだそういう見せ方よりも技術を重視していますが、いずれ一般の方にも分かる見せ方が要求される時代が来ると思っていますし、自分がそのようにできたらいいなと思ってやっています。難しい技に走り過ぎると、一般の人から遠いものになってしまいます。そうなったら、大会をやっても何も残らなくなってしまいます。仕事としてもショーとしても成り立たないと思うんです。フィギュアスケートでは、荒川静香さんが冬季五輪でイナバウアーをやりましたよね。やっても得点にならないけど、こだわってきた美しい技。あれと同じ感覚です。

徳田選手004

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