「フットサルって足下がうまくなりますよね」。それだけじゃないメリット “重要な決断” が繰り返される価値とは【8月特集】

2018年08月22日

育成/環境

今月は「少人数制」をテーマに特集を組んでいる。サッカーは11vs11で行うスポーツだが、なぜトレーニングやジュニア年代のサッカーでは人数を減らして行われるのか。それは前回のコラム(改めて考えたい「8人制サッカー」の意味。少人数制で“判断力”が養われる理由)を読んでほしい。そして今日からは「ジュニア年代にフットサルをうまく活用する方法」を考えていく。フウガドールすみだで強化本部長兼監督を務める須賀雄大氏に話を伺った。須賀氏へのインタビューは今回を含め、全5回でお届けする。

文●木之下潤 写真●橋本健、佐藤博之、ジュニサカ編集部


フットサル特集01

育成年代でフットサルを取り入れるメリットとは何か

――世界を見渡すと、育成年代では少人数制からサッカーの楽しさや原理原則に慣れ親しみ、11人制へと上手に移行していくのが一般化しています。そこには「認知-判断-実行」における「認知」と深く関連していることは言うまでもありません。そう捉えると、ジュニア年代にフットサルをうまく活用することは子どもたちにとっても大きなメリットを生むと考えています。実際に、「フウガドールすみだ」の強化本部長兼監督の立場からジュニア年代のサッカーにフットサルがどういう学びにつながっていくのかという率直なご意見をいただきたいです。

須賀氏「フットサルというと足下の技術、テクニカルな部分だけがクローズアップされがちです。実際に『フットサルって足下がうまくなりますよね』と言われることも多いです。もちろん、そういう側面もあります。でも、足下がうまくなる以外の要素はないのか、テクニカルじゃない選手はプレーができないのかというと全くそういうことはありません。

 私は足下がうまい選手というのは、あくまでその選手の個性だと考えています。それよりもっと深いところにフットサルをやるメリットがあると思っています。フットサルをプレーする上で最も重要な要素は『ボールを持って決断をすること。そして、それが重要な決断であることの回数が多い』ということです。

 サッカーも、フットサルも、ピッチ上でいろんな決断が起こっていると思うんです。例えば、センタリングを受ける選手がどうマークを外すのか、どうボールを受けるのか。私が育成年代で一番やってほしいのは、ボールを持った時にどういう決断をするかを繰り返し真剣勝負の場で反復して行うこと。そこが一番の願いです。

 フットサルはそれらが一番当てはまるスポーツだと思っています。その大きな理由は、ピッチが狭く攻守が激しく繰り返され、絶えず決断に迫られる状況に出くわすからです。サッカーに比べると、単純にその回数も多いです。選手にも様々なレベルの子どもがいますが、フットサルであればどの子も少なからず試合の中で重要な決断をしなければならない状況に出くわします。それはゲームを変えてしまうような重要な決断です。例えば、その場面でいいバスが出せたらアシストにつながった、その場面でワンテンポ早くシュートが打てたらゴールになった、その場面でスライディングしていればシュートを防げた。チャンスも、ピンチも、すべてが重要な決断です。

 ただサッカーボールはフットサルボールよりもよく弾むので、その重要な決断をルーズにしてしまっているケースが多いように感じています。

 弾んでいるボールを正確にコントロールしてつなぐというプレーよりも、まず失点しないように弾き返すとか。そうなると、だいたいチーム内でエースを担うような選手がボールを落ち着かせて重要な決断になるようなプレーをするという流れになっていきます。ボールの流れに目を向けた時、両チームともにキーになるような選手の決断が圧倒的に多いです。逆に、それ以外の選手については決断の回数が少ないという印象を持っています。

 これはフットサルにも当てはまります。チームの中心となる選手が起点になるのはフットサルの世界でも変わりませんが、その頻度とルーズになるプレーの回数が少ないので必然的に試合のキーになるプレーというのは多くなりますし、出場している選手全員がそのプレーに関わります。例えば、キックイン一つにしても一歩間違えれば即失点に直結してしまう、逆にゴールに直結する中で行われるスポーツだということです。そういう意味では、ジュニア年代にフットサルをプレーすることは大きなメリットになるんじゃないかなと思います。

 私自身の考えですが、フットサルをトレーニングではなく、スポーツとして取り組むことが大事だと考えています。なぜなら真剣勝負の場だからこそ自主的に学ぶ意識が沸き起こるからです。

『5対5のミニゲームでいいんじゃないの?』

 そう言われたら、真っ先にこう答えます。『真剣にプレーして、その中に戦術があって、それに没頭するから始めて意味がある』と思うんです。ミニゲームで負けて涙を流すことはないでしょうが、フットサルをスポーツとして取り組めば涙を流すこともあります。『あそこの守備がダメだったのか』としっかり振り返り、『あそこの場面はもう一つ寄せた方がよかったんじゃないか』『あそこはスライディングに行かずにがまんした方がよかったんじゃないか』、『シュートはもう一つ早いタイミングでダイレクトだったら決められたんじゃないか』と真剣だからこそ失敗した場面が心に残り、どうすればよかったのかと向上しようとするマインドになっていくのではないでしょうか。

 だからミニゲームではなく、フットサルというスポーツに没頭することが大事だと思うんです。子どもたちはパッケージを与えたら必然的に真剣に向き合い、『どうやったら勝てるのか』と考えるようになります。指導者が変にゴチャゴチャ言わなくても、『あの場面はどうすればよかったんだ?』と自主的に考えます。ミニゲームだとそこまで真剣に取り組んで考えないし、楽しかったねで終わると思うんです。私は真剣勝負の中で学ぶ場として、フットサルを取り入れてほしいと思っています。

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