ビルドアップ能力を自然に高めるスモールサイドゲーム。スペインで行われるトレーニングデザインとその意図とは

2024年03月13日

育成/環境

近年、様々な戦術理論やトレーニング方法が提唱されているが、まずは子どもたちにゲームをやらせてみてから指導者が分析をし、子どもたちに経験させたいポイントを見つけて、それが自然に発生するようにゲームに制約を設けて工夫する必要がある。このようなアプローチをスモールサイドゲームによって行うことができる。そこで今回は『サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門』より、ビルドアップ能力が自然に高めることができる環境をもたらすスモールサイドゲームの一例を一部抜粋して紹介する。

著●内藤清志


ビルドアップのトレーニングに最適なスペインの7人制サッカー

 スペインで行われている7人制サッカーにはオフサイドラインが設定されています。(図4)コートのサイズはフルコートを利用すれば2面つくることができるサイズです。

 日本であればフルサイズのコートは縦105m×横68mが大半ですが、スペインはどの町にもサッカーコートがある一方でコートサイズはまちまちですから、大体フルコートを2分割したサイズと考えればよいのではないでしょうか。

 オフサイドラインはゴールラインから12メートルの位置に引かれていて、オフサイドラインを越えるまではオフサイドは適用されないルールになっているのです。その他のルールはサッカーと変わりません。タッチラインを出ればスローインで再開しますし、コーナーキックもあります。20分ハーフで試合は進められていきます。

 守備側からしたらコンパクトな陣形をとりにくいというものです。通常であれば、最初のオフサイドラインはハーフウェイラインになりますが、オフサイドラインは、それよりも低い位置(守備側からすると)になるからです。守備がコンパクトにしてきたら、相手のフォワードは残って待ち伏せしていればいいのです。つまり守備側は“間延び”した形になりやすいといえるでしょう。(図5)攻撃しているフォワードの選手からしたら、ディフェンダーの背後にポジションをとることができます。

 ビルドアップについては、人数は7人制なので、うしろからつないでいくと次第にずれが生じます。2-3-1の陣形が主流となっており、中盤の3人の選手のうちサイドの2人は外側に張り出したプレーをするようになります。そして、うしろの2人(センターバック)が数的優位な状況ですのでビルドアップは容易になります。たとえ、センターバックがミスをしても相手のアタッカーと1対1になりにくいわけです。(図6)

 このオフサイドラインの付いた7人制サッカーでは、オランダのフィルジル・ファン・ダイクのように対人的に強いセンターバックというよりは、自分で持ち上がることのできるビルドアップ能力の高いスペインのパウ・トーレスのようなプレーヤーを生み出しやすい環境といえるかもしれません。

 一方で前述のようにオフサイドラインを意識するため、日本の“団子サッカー”のような状態にはならないという利点が考えられる反面、あえていうならば、密集したところから個人技で抜け出すような選手が育ちにくいという点が考えられます。

 スペインでは狭いスペースから広いところに展開したり、サイドに張っていたり、あるいはオフサイドにならない絶妙なポジションで待つなど、組織の一員として対応しなければならないことを理解したサッカーになります。どのようにボールを動かすか、どこにポジションをとるかなどが重視されます。

 指導者も技術的なミスはあまり指摘せず、「ここに来たらこうする」というようなボールの道筋(基本的な動かし方、ゲームモデルなどと表現される)を指導している印象があります。


全文は『サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門』からご覧ください。


【商品名】サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで解決するためのトレーニングデザイン入門
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2024/03/14

【書籍紹介】
エコロジカル・アプローチにもつながる本質的なサッカーコーチングバイブル

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