ポジションは固定すべき?

2013年03月26日

コラム

池上正さんが子どもに対する悩みや、保護者・コーチの子どもを取り巻く大人に関する疑問や悩みに答えるこのコーナー。今回はよくあるポジションについて指導者からのご相談です。

◎試合(試合で修正したい悩み)

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(質問者:小学4年生の指導者)

うちの4年生チームは部員が全員で8名。試合に4年生が8人そろうことはまずありません。ですので、大会や試合は毎回、下級生に応援をたのんでいます。チームは弱小です。強豪とあたると0-10で負けた試合もありますし、チームとして10連敗以上したこともあります。4年生になると、春~秋の県のリーグ戦があり、3年生のときより格段に試合数も増えました。弱小なりに、負けないためにも子どもたちの適正を考え、勝利したときの試合を参考にしてポジションを固定させていくと、役割分担の理解もあり、去年1年間で徐々に敗北ばかりではなくなってきました。ちなみに4年になるまではポジション固定はしていませんでした。そこでお聞きしたいのは、下級生の応援を借りながら試合にのぞむ少人数の現4年生について。現在のままのポジション固定で卒業までいくべきでしょうか? 個の育成のため、現在のポジションにこだわらず、また違ったポジションを経験させてあげたほうがよいのでしょうか? 卒業までの時間は彼らの今後のサッカー人生のためにもすごく貴重な時間です。人数の少ない弱小チームとしては、彼らのポジションを今後どういうふうにすればよいのかと迷っています。

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子どもが楽しみながらいろいろなポジションを
経験できることを優先させましょう

 ジュニア時代は、いろいろなポジションを経験させるべきです。守るのが得意な子がいれば、大人はついつい守備を任せてしまいがち。でも、「攻撃もやってごらん」とプレーの幅を広げてあげることが、指導者の役割です。

 そもそも小学生の段階では、身長など体の成長、頭脳や基礎体力の進み具合も遅いこと速い子がいて進み具合はバラバラです。だんだんとその子の特性が出てきて、ポジションが定まっていくのは中学生の後半くらいでしょう。ですから、それまではいろいろなポジションを体験しながらサッカーの理解を深めつつ、特性を探っていく作業が必要です。

 一方で、大人が勝つことに執着しすぎるがゆえに、慣れたポジションをやらせることでチーム力を上げようとする指導者がまだまだ少なくありません。応援部隊でくる4年生のメンバーは毎回変えているのか、その子たち自身はやりたいことができているのかも気になるところです。試合の戦績よりも、4年生も3年生もみんなが楽しくいろいろなポジションを経験できることを、ぜひ優先させてください。

 勝利至上主義の話をすると「勝つことで子どもの自信になる」といった意見が出ますが、子どもが自分たちで考えて「こんなことをしてみよう!」といってそれをやって勝ったときにこそ成長があるのです。むやみに勝ちに走るのではなく、練習したことを発揮できるような練習試合の対戦相手にを選べばよいのです。格下とやって、勝つ楽しさを味わったら、今度はもう少し難しい相手とやってみる。そんなことを試みてください。

 余談ですが、日本と異なりリーグ戦文化が発達しているフランスでは、ジュニアの地域リーグで、連続して10点差で負けるクラブが出てきたら、それらのクラブはそのリーグから外します。リーグ途中でも外して、ほかの似たような力のチームと新たにリーグ戦を組むといった運営努力をしています。大敗続きだったクラブは新たなモチベーションをもって新たなリーグを戦えるわけです。

 フランス人からすれば「10点も差が出るのは、試合をしても意味がない」ということなのですが、日本では10点差で負けていても「頑張れ!」とか「負けるな!」と大人が言い続けています。

 どうしたら子どものためになるのか? そこを追求していけば、勝敗に一喜一憂しないはずです。根強い大人の勝利至上主義が、日本でリーグ戦文化が根づかない理由なのです。

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