池上コーチの一語一得「オーバートレーニングの弊害を理解する 」
2013年04月09日
コラム池上正さんが子どもに対する悩みや、保護者・コーチの子どもを取り巻く大人に関する疑問や悩みに答えるこのコーナー。今回はお子さんがオーバートレーニングではないかと心配している親御さんからのご相談です。
◎練習(トレーニング場面での悩みやギモン)
オーバートレーニングなので心配(質問者:小学2年生の保護者)
4月に小3になる男子の母親です。息子は現在、地元の少年団でサッカーしています。以前から、3年になったらレベルの高いチームに挑戦したいと息子がいっており検討中です。挑戦することに対しては本人の希望通りにさせてやりたいと思いますが、移籍ではなく、かけもちをしたいといっています。現状、(今の少年団では)ミニゲームになると6年チームにいれられ、同級生とは試合でしかゲームする機会がありません。同級生と一緒の試合では、噛み合わないなか、一人でチームを背負っている状況です。それでも、今のチームでサッカーが好きになったから辞めたくはないと言います。
しかし、そうなると週4回のチーム練習、スイミング、体幹教室など、試合があれば休みはありません。それに加え、父親と朝晩毎日、ストレッチ/体幹/自主練をする日々。オーバートレーニングでサッカーができなくならないか心配でしょうがありません。実際、二週間休みなく体験した結果、一週間で頭痛、二週間目で嘔吐し点滴をうけました。体が持たないと思うから賛成できない、と本人と父親に言いましたが、それでも聞いてもらえません。どうしたらよいものかと心配です。アドバイスをお願いします。
オーバートレーニングについて学習し、
「サッカー馬鹿」にならない子育てを
私の講演で、6年生の息子をもつお父さんがこう質問してきました。「息子は小4でサッカーを始めたので、まわりの子に追いつくため三つのクラブを掛け持ちしています。週7日間毎日サッカーをしていたら、倒れました。やり過ぎでしょうか?」
私は即座に「倒れたのだから、やりすぎでしょうね」と返しました。
今回の相談もこれと同じように、お父さんが冷静さを失くしてしまっているようです。しかも、お子さんが2年生。8歳の時点で、これだけ体をいじめたら心も体も壊れてしまうのは当たり前です。
最初に、ご両親に「何のために息子さんにサッカーをやらせているか」を改めて考えてほしいと思います。スポーツは遊びです。子どもにだってそれなりにストレスがありますから、そういったものを発散できる場が本来スポーツのはず。ところが、お子さんにとって、サッカー自体がストレスになっていませんか。
相談者はお母さんで「体が持たないと思うから賛成できない、と本人と父親に言いましたが、それでも聞いてもらえません」とあります。「本人」とあるので、子どもがやりたがるのだから、とお父さんは言うかもしれませんが、そこを止めてあげるのが親の役目です。
まずはお父さんに、オーバートレーニングの弊害が詳しく書かれてある本を読んでもらう、もしくはお母さんが読んで説明してあげてください。ジュニア期においていかにオーバートレーニングがいけないことかの論拠を示して、納得してもらうのです。運動をやり過ぎると体内に活性酸素が蓄積され、低身長のリスクが増えるなど多くのマイナス面があることを知ってもらいましょう。
もしくは、香川選手など現在活躍する選手の少年期について書かれた本を読んでもらってください。ほとんどの選手が小学生時代は自由で放任されて育っています。
そして、何より子どもが「サッカー馬鹿」にならない子育てを目指すべきです。いかに子どもがサッカーに没頭しても、親としては「楽しいのはサッカーだけじゃないよ」「他のことにも取り組んだほうが人生は豊かになるよ」というメッセージを送り続けることです。
昨今、サッカーさえうまければ勉強はできなくていい、他のことはやらなくてもいい、という風潮があるようです。以前、ギターを弾く私の姿を見た元女子サッカー選手が「池上さんは楽器もできるのですか?」と驚いていました。「サッカー馬鹿になりたくないからいろいろ挑戦してきたんだよ」と答えたら、「私はサッカー馬鹿ですね」と自嘲気味に言いました。
私の著書に「親子共倒れ」という言葉が出てきます。お父さんの大きすぎる期待に、お子さんがつぶされかかってはいませんか? 幸いにもお母さんは危機感を抱かれているようなので、ここはぜひ「何が子どものためなのか」をご夫婦でよく話し合ってみてください。私に相談したことも伝え、ジュニア期のスポーツのあり方を改めて学んでもらってください。
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