清武弘嗣選手が経験した苦い全少での思い出と父の熱き教え【後編】
2013年07月11日
サッカーエンタメ最前線自分の思い描くプレーができない――中学生時代に初めての挫折を味わう
その後弘嗣少年は、中学校に入学すると同時に、新庄総監督が代表を務めるカティオーラFCに進んだ。
カティオーラは当時、創設6、7年目の新しいクラブだったが、兄・勇太さんもここでプレーしており、自分も同じところに進むのが当然だと考えた。新庄総監督も清武にふさわしい環境を用意してやろうと、U-12九州トレセンに名を連ねていた小手川宏基(大分トリニータ)ら能力の高い子どもを集める努力を惜しまなかった。
将来を嘱望された清武は、中学1年生の頃から主に上級生チームでプレーした。ところが、スーパー少年だったはずの彼が、徐々に伸び悩む。中学生は1学年違うだけでも、体の差は一目瞭然だ。成長期に差し掛かり、周りの選手たちは身長が伸びて体が大きくなっていくのに、自分だけは一向にそうならない。まるで取り残されていくように思えてきたのだ。上級生チームの中で焦りの気持ちだけが先行し、たまに同級生チームに戻っても以前のようにプレーが通じない。小学生の頃からコツコツと磨いてきた技術もフィジカルに跳ね返されることが増え、清武はよりナーバスになっていった。さらにはオスグット病も発症。練習さえ満足にできない状況に追いこまれた。
「体で負けると技術も伸びないし、自分の気持ちがどんどん落ちていったんです。周りから追い抜かれるっていうプレッシャーもすごく感じていた。新庄先生も教頭先生になって忙しいから練習にこれないし、相談できる人もいない。どうしていいかわからなくなりました」
当時、カティオーラで指導に当たっていた佐藤孝範現代表はまだ若く、指導経験が少なかった。それゆえ「日本一になることが子どもたちを伸ばすことにつながる」と考え、走らせて鍛え上げることを最も重視していた。それがクラムジー(成長期特有の伸び悩み)に陥った子どもにマイナスに作用するという知識を持ち合わせていなかったようだ。サッカー選手は中学生年代が一番難しいといわれるが、最善な対応が取れなかったことを、代表自身も今でも悔んでいる。
「九州大会とか全国とか、上のレベルまで勝ち上がれば弘嗣たちのチャンスが広がると思って、確かに無理をさせていたところは大いにあったと思います。彼のように想像を絶するほど優れた才能をもった子が来たとき、僕ら指導者が一歩二歩先を見て、冷静に対応できていればよかったんですが、あの頃の自分はそこまで勉強が追いついていなかった。本来なら世界を見せてあげなければいけなかったのに、そこまで大きな夢を抱かせてあげられなかった。今、考えると、本当に申し訳ない気持ちです」と佐藤代表は素直に反省の言葉を口にする。
この10年間は失敗を糧に、指導者としてより一層勉強を重ねてきた。
特に中学生年代に対しては「特徴をきちんと把握して、精神的なところも支えになってあげないといけない」と考え、心身ともに子どもたちをサポートできる体制作りを熱心に進めてきた。こうした努力が実り、カティオーラは近年、U-12が全日本少年フットサル大会(バーモントカップ)の大分県代表になったり、ジュニアユースが高円宮杯やプレミアナイキカップの全国大会に勝ち上がるなど、着実な歩みを見せている。勝つことだけでなく、スキルの高い個性的なタレントも育ちつつある。
僕らがサッカーボーイズだった頃
プロサッカー選手のジュニア時代
香川真司、岡崎慎司、清武弘嗣……
『プロ』になれた選手には、少年時代に共通点があった!
本人と、その家族・指導者・友人に聞いたサッカー人生の“原点”
【著者】元川悦子
【発行】株式会社カンゼン
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