“小児科医が教える!強く大きな体をつくる早寝早起き術” 伸びる子は9時に寝ている!
2013年10月09日
コラム子どものスポーツ障害は睡眠不足が原因!?
最後に、サッカーなどのスポーツをするお子さんを応援する保護者の皆さんに伝えたいことがあります。それは「ブレーキを踏むのは親の役目」だということです。
そもそも子どもの心身の健やかな発達や成長を考えた場合、ひとつのスポーツをハードに継続的に行うことはあまりよくありません。もっとも影響が及ぶのが「骨」です。子どもの骨は、例えばせっけんみたいな柔らかさで、過度な負荷をかけるとすぐにつぶれてしまいます。
サッカーは疲労骨折が多く見られますし、高学年から中学生になると腰痛を訴える子が出てきます。椎間板ヘルニアと呼ばれるスポーツ障害が多いようです。20年ほど前に私が医師になった頃は、椎間板ヘルニアになる小学生などいませんでした。そのような子どものスポーツ障害が増えた背景には、ふたつの要因があります。
夜遅くまでのトレーニングで生活リズムが乱れてしまい正常な骨の発達がなされていないこと、そして、たくさんの試合や長時間の練習で負荷がかかりすぎていることだと思います。
私の知っているお子さんはダンス競技で世界的な大会で活躍していましたが、椎間板ヘルニアで競技生命を断たれました。皆さんのまわりにも、障害やそれによる慢性的な痛みを抱えているお子さんは少なくないと思います。
その子たちが好きなスポーツを取り上げられたときの衝撃は想像を超えるもの。時に心身のバランスを壊すまで追い込まれてしまうようです。
私はふたつの病院で小児心理外来を開いていますが、さまざまな競技を頑張っていたけれど、けがのためやめざるを得なかった子どもがたくさん訪れます。スポーツだけを自分のアイデンティティにして生きてきた子たちは、挫折感にさいなまれ無気力になって、ひきこもりや不登校になったりします。
きちんと睡眠をとっていない子が多く、元気ホルモンであるセロトニン不足になっているため自分の力で不安をはねのけられないのでしょう。「この子がやりたがるので、させてきた」親御さんたちはおっしゃいます。
子どもは「今の自分」しか見えませんが、親はその先に起こりうることを見てあげなくてはいけないと思います。生活リズムとともに体と心の状態をよく観察し、よりよいサッカー人生を送れるようサポートしてください。
プロフィール
成田奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部特別支援教育専修教授
小児科医。医学博士。子どもの脳科学に詳しく、文部科学省などと連携し「早寝早起き、朝ごはん運動」など、子どもの正しい生活習慣の確立に尽力している。著書に『5歳までに決まる! 才能をグングン引き出す脳の鍛え方、育て方』(すばる舎)など著書多数。小児心理医としてもさまざまな心理疾患症状を出現した10代の子どもたちを診療。茨城県発達障害者支援センター・土浦児童相談所嘱託医。1女の母。
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