学校では教えてくれないサッカー栄養学 世界で闘うための選手の食事【前編】
2014年01月11日
コラム世界の舞台で闘うための栄養補給のポイントとは?
──日本代表選手に指導するポイントとして大事にしていたことは何でしたか?
①量を食べる、②バランスよく食べる、③ハーフタイム+試合後に栄養補給をする、この3つですね。
まず、量をしっかり食べるということはとても重要です。体重が増えたり減ったりしないように、練習量に見合う量を食べる。量をしっかり食べていないと、試合中の後半ガソリンがきれて走れなくなる、集中力が切れるということが起こってきます。
2つ目はバランスを大切にすること。食事メニューは①主食、②おかず、③野菜、④果物、⑤乳製品、この5つをそろえるのが基本です。「栄養フルコース型」と名づけています。ご飯と果物で、糖分のエネルギー、おかずと牛乳でたんぱく質、カルシウム、鉄という体の材料、野菜と果物で、ビタミン、ミネラル、食物繊維というコンディショニングの栄養素が摂れる。5つそろったメニューなら、大事な栄養素が2回ずつ入ってくることになるのです。
──普段の食事でもすぐに応用できますね。
そうです。お昼の定食に牛乳、果物をつければ「栄養フルコース型」になりますよ。
3つ目は、試合の前後に栄養をしっかり摂ること。代表選手の場合、試合の3時間前に補食としてうどんやおにぎりなどの軽食を摂るようにしています。
そしてハーフタイムに糖分をしっかり摂ることが何よりも大事。後半動くためには、まとまった糖分を入れることが重要なんですが、短時間で糖分をたくさん摂るのは大変です。走って汗を大量にかいて、少し脱水症状になっているところに濃い目の糖分が入ってくると、濃縮されて胃にたまってしまう。そこで、代表選手の場合は糖分を吸収しやすいスポーツ飲料を冷やして飲んでいます。
──試合が終わった直後は何か栄養補給しているんですか?
終わってすぐに、ハーフタイムに飲んだドリンクにさらにアミノ酸の粉末を入れ混ぜたものを飲みますね。着替えてからはゼリーでプロテインの補給をします。
食事まで時間がありますが、なにも補給しないでいると、どんどん疲れていってしまう。エネルギーが必要なのに、ないという状態だと自分の筋肉から少しずつたんぱく質をこわしてアミノ酸にして……と、体の分解が少しずつ起こってしまいます。そうならないよう、糖、アミノ酸、プロテイン飲料を試合後すぐに補給しておくのです。
──代表選手の食のポイントは育成年代にもまるごと応用できますね。ハーフタイムに飲むドリンクは市販されていますか?
明治製菓のザバスというブランドから、「ピットインリキッド」という商品名で出ているもので、実は私自身が開発したものです。フランスワールドカップの前に大学院へ行き、サッカーのハーフタイムの糖分補給についての研究を始めました。その結果できたものです。代表選手たちは今もこれを飲んでいます。
プロフィール
杉浦克己(すぎうらかつみ)
立教大学 コミュニティ福祉学部
スポーツウエルネス学科 教授
1957年東京生まれ。静岡大学理学部生物学科、同大学院修士課程を終えて85年に明治製菓株式会社に就職。ビフィズス菌の研究を経てスポーツ食品の企画に携わり、アスリートの栄養指導業務が主となる。98年に東京大学大学院で博士号を取得。2006年より立教大学教授となる。2002年日韓ワールドカップではトルシエジャパンの栄養アドバイザーを務めた。著書に、『選手を食事で強くする本』(中経出版)『ダイエットフィットネスの基礎知識』(福村出版)等がある。
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