マヌエル・ノイアーの驚愕プレー集から見る新しいゴールキーパーのプレーモデル

2015年06月24日

サッカーエンタメ最前線

これからのゴールキーパー像 
 
 最後に紹介されているのは、「足元の技術」です。相手のプレッシングを回避するために個人のボールコントロールテクニックも必要ですが、ここで紹介されているのは、主に攻撃の起点となるパスです。

 ゴールキーパーがバックパスを受ける場合、ディフェンスラインが相手フォワードのプレスに晒され、前線にボールを運ぶことが困難な状況に陥ってしまっている場合が多いので、ゴールキーパーはリスク回避で前線にクリアしてしまうのが定石です。

 しかし、ノイアーのように足元のテクニックがしっかりしているゴールキーパーを擁するチームは、パスで前線にボールを運ぶことが可能になります。

 ノイアーの場合は、長短のパスで攻撃の起点になることができます。単純にクリアせざるをえない状況でも、意図のあるロングキックを前線に蹴ることができます。さらに、ディフェンスラインと細かくパスをつなぎながら、中盤に縦パスを入れることもできます。

 昨年のワールドカップ、ドイツ代表対フランス代表の試合は、そのあたりのゴールキーパーの質が顕著に出ていました。

 ドイツ代表は、フランス代表のゴールキーパー、ウーゴ・ロリス(トッテナム)が足元の技術やキック精度が低いことを見抜き、前線からプレスをかけて、ゴールキーパーに簡単にボールを下げさせるような戦術をとっていました。

 ロリスのキックは味方に渡ることが少なく、フランス代表がなかなかリズムをつくれずにいると、次第にディフェンスラインも簡単にバックパスができなくなり、その影響からパスミスを頻発してバタつくシーンもありました。

 ロリスもシュートストップなどで存在感を発揮する世界最高峰のゴールキーパーですが、もし、ノイアーのように足元の技術も備えていたら、ドイツ代表はこういった戦術をはとらなかったのではないでしょうか。

 今回の動画で紹介しているのは、良い部分を編集されたものですが、こういった明確なメリットがあるプレーモデルには確実にデメリットも存在します。

 ノイアーがパスミスして失点ということもあるでしょうし、前線にポジショニングしすぎてロングシュートを決められたり、早いタイミングで飛び出してしまい、簡単にかわされゴールを決められてしまうというシーンもあるでしょう。

 忘れてはいけないのは、ノイアーのプレーモデルにこういったデメリットがあったとしても、純粋にキーパーとして「ナンバー1ゴールキーパー」と呼ばれるだけの確固たる基礎能力の高さがあることです。

 ただ、これからのサッカーは、キーパーにノイアーのようなプレーを求めることが増えていくことでしょう。そういった場合、必要になってくるのは、“サッカーを知っている”かどうか、ではないでしょうか。

 フィールドの最後方から戦局を見極め、状況を判断してプレーを選択する。これは、なにもゴールキーパーでなくともサッカー選手全員に必要な能力です。

 これからのゴールキーパーは、基礎能力とともに「サッカー選手としてどれだけ優秀か」という点をシビアに見極められるのではないでしょうか。そういったことを、身体を張って新しいゴールキーパーのプレーモデルを実践するノイアーから感じるのです。

MUNICH, GERMANY - APRIL 28:  Goalkeeper Manuel Neuer of Muenchen battles for the ball with Marcel Schmelzer of Dortmund during the DFB Cup semi final match between FC Bayern Muenchen and Borussia Dortmund at Allianz Arena on April 28, 2015 in Munich, Germany.  (Photo by Boris Streubel/Getty Images)

<関連リンク>
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