なぜ『PK』は決まらないのか。スポーツ心理学者が語る『PK』失敗につながりやすい“回避行動”とは
2015年12月21日
メンタル/教育ボールを受け取り、蹴るまでの時間
ヨルデットは私に、極度のプレッシャーを感じているとき、選手は通常よりも2倍の速さで蹴る準備をする、と言った。そしてPKのときに蹴る準備―ボールを主審から受け取ってペナルティスポットに置くまでの時間も含まれる―が比較的速い選手たちは、かなりの割合でPKを失敗するそうだ。彼はマルコ・ファン・バステンが蹴ったPKのビデオを私に見せた。
ファン・バステンは選手のときに100本のPKを成功させているし、1992年には3回目のバロンドールを受賞している。その年のEURO92準決勝対デンマークのPK戦でのファン・バステンのビデオだ。彼は普段よりかなり速くボールをペナルティスポットにセットし、そのPKはセーブされた。
ヨルデットは最近、ノルヴェジアン・カップ決勝に臨んだチームにも、時間をかける戦略が大事であると教えたそうだ。試合はPK戦に持ち込まれた。そこでは二人の選手が11秒という危うくイエローカードが出されそうになるほど長い時間をかけて準備し、二人とも成功した。
ヨルデットはその事例は極端だという。データは準備を急ぎ過ぎたために多くの選手が失敗したことを示しているが、より長く時間をかければ成功するということは示していない。
「5秒から10秒待つと、選手にまたあらたな心理的負担がかかる。自分のパフォーマンスをどう組み立てるかを考え過ぎてしまったりするからだ。私は選手に、あせらずにもう1回深呼吸して、0・5秒か1秒ほど待ってから蹴りなさい、とアドバイスするだろう。それ以上待つ必要はない」
プロフィール
著者:
ベン・リトルトン
ロンドン在住のフットボールライター。スポーツイラストレイテッド誌やタイム誌に寄稿するジャーナリストであり、ブルームズバーグTVでサッカーについての解説者もこなす。またサッカーのコンサルティングを業務とするサッカーノミクス社の創業者の一人で、取締役を務める。
監訳:
実川元子
翻訳家/ライター。上智大学仏語科卒。兵庫県出身。メキシコオリンピックの釜本選手のハットトリックでサッカーの魅力み取りつかれ、現在もJリーグを中心にスタジアム観戦に通う。訳書にD・ビーティ『英国のダービーマッチ』、S・ブルームフィールド『サッカーと独裁者』(白水社刊)などがある。
【商品名】PK ~最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?~
【発行】株式会社カンゼン
【著者】ベン・リトルトン
【監訳】実川元子
四六判/416ページ
2015年12月17日発売
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