「どんな監督にも評価される選手を育てたい」。本田圭佑選手や宇佐美貴史選手の恩師が語るG大阪の育成論
2016年03月03日
コラム『素走りは上手くならない、練習させて』中学生の本田と宇佐美が言った言葉
――スカウトで獲得しながらも結果的にその後伸びない選手もいますよね。
「そりゃ、たくさんいますよ。テクニックだけ上手い子はたくさんいるけど、小学校ってプレッシャーが弱いからテクニックがあったり、ちょっとフィジカルが強かったりすると、簡単にいいプレーができるんです。でも中学になると守備が組織化されるし、周りのフィジカルのレベルも上がってきます。そうなるとドリブルだけではアカン。自分の持っている技術をどう生かすとか、判断力が求められます。
判断力や学習して自分を成長させる能力がない子は変われずに他の子に追い抜いていかれますよ。市丸(瑞希=ガンバ大阪)も入ってきたときはそれほど上のレベルじゃなくて中ぐらい。中学1年の後半ぐらいからぐっと良くなってきた。中学2年の2月から、Aチームに入りだして夏の全国大会ではレギュラーになっていましたね。そういう例があるから、この世代は誰が伸びてくるのかなかなか分からないですよ」
――お山の大将でプレーしていた才能ある子どもたちが集まるのがジュニアユースです。大森選手は中学1年生のときのアカデミーの指導者にいい意味で天狗の鼻を折られたのがその後につながったと話をしていました。
「大森らの代もいいメンバーがたくさんいたから、ちょっとサボって天狗になっていたらレギュラーを奪われてしまう環境ではありました。ただ、こちらも『日本代表か何かしらんが、お前みたいな奴はナンボでもおるで』とキツい言い方を宇佐美や律にした時期もありましたよ」
――宇佐美選手は自らの振る舞いが原因で鴨川監督の怒りをかい、チーム全体で罰走をさせられたことを懐かしげに振り返っていました。
「あった、あった(笑)。夏の暑い時期で、パス練習かボールを使っている時に皆がダラダラしていたんです。だから『一生懸命やらんのやったら、走ろう』って言って延々走らせた。僕も怒ったらムッチャ怖いから。他の子は何も言えずに走るだけでしたけど、中学2年の宇佐美は仲間を引き連れて『ちょっといいですか』って僕のところにくる。
そして『素走りしても上手くならないので、練習させてください』って言いました。本田(圭佑)もそうでしたけど、問題意識を持っている子は素走りや罰で走らされても意味がないと思っているんやね。僕自身も日頃は『罰で走らされることほど意味がないことはないぞ』と言っているし、滅多にそんなことはしないんだけど、走らせる時は謝ってきても絶対に止めない。だから、その時も最後まで走らせましたけどね」
――鴨川さんの厳しさでいうと、西野選手も中学時代にヘディングが満足にできず、鴨川さんからメンバー外にされていい意味で刺激を受けたと振り返っていました。
「それはタカだけに言ったことじゃないので、僕自身は覚えてなかったですね。ただ、こないだもCBの子に同じことを言いましたよ。CBやのにヘディングの練習をおろそかにしていて、試合中にできないんですよ。だから『お前じゃなくて、もっとビルドアップの上手いCBを使うわ』って理由も伝えて外しました。『お前が試合に出ているのは背が高くてヘディング強いからやろ。それならヘディングだけは磨かないとアカン』と」
――上野山さんも鴨川さんを長年ジュニアユースの監督に置いているのは「育成の肝」だからと話されています。過去に様々な名選手を指導されていますが、今後、こういう選手をつくりたいという理想や目標とは。
「持っていないものを植えつけるのは難しいから、関西圏にいるポテンシャルの高い選手を発掘して、その子らの良さを伸ばしたい。ドリブラーならドリブラー、CBならちょっとぐらい下手でも強さと高さが持ち味なら、そのストロングポイントを生かしてあげたい。まんべんなくできることも大事だけど、特長に秀でた選手をもっと輩出しないといけないですね」
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