「どんな監督にも評価される選手を育てたい」。本田圭佑選手や宇佐美貴史選手の恩師が語るG大阪の育成論
2016年03月03日
コラムJYでレギュラーでもなくても可能性はいくらでもある
――昌子源選手(鹿島アントラーズ)や鎌田大地選手(サガン鳥栖)、本田圭佑選手(ACミラン)などはユースに昇格できませんでしたが、彼らのその後の成長をご覧になってどうでしたか。
「本田と昌子は驚きだったけど、鎌田については予想できました。いいものを持っていたし、本人にもお父さんにも『絶対に伸びしろはある』と伝えていましたから。鎌田はひょろひょろで、線が細かったし、当時はそれほど上手くないというか、決定的なプレーが少なかった。
本田もそうでしたけど、フィジカルが弱くて身体に安定感がないと技術に影響するでしょ? 余裕がないと少し当たられてもパスがブレたり、やろうとしていることは素晴らしいんだけどプレーのスピードというかキレがなかった。だから技術もそれほど発揮しきれていなかったんです。それが高校に上がってフィジカルがついてくると、技術を表現できるようになってきたんでしょうね。ただ、当時それを見極めるのはなかなか難しいんです」
――ユースに昇格できず挫折を味わった選手が、その後ブレイクすることで、何か指導観や考え方に影響を与えましたか。
「昌子はガンバでも悩んでいましたし、本当に身体も小さかった。本人も気持ちが強いからこそ、出られなくなって悩んでいたんです。あの当時はそういう子は難しいんかなと思っていましたけど、環境が変わって、指導者が変わって違うポジションを与えられたりしたら、いくらでも可能性があるんだなと昌子を見ていると自分も勉強になりますよ。だから今のジュニアユースで、レギュラーじゃない子たちでもいくらでも可能性があると思っているし、今はレギュラーじゃない子たちにも可能性があると思いながら接しています。Bチームの試合にもできるだけ足を運んで、『良かったらAに上げるよ』という姿勢は子どもたちに伝えていますね」
――宇佐美選手や同年代の大森選手はもちろん、22歳の西野選手には今後も益々期待がかかります。アカデミー出身の選手の活躍をあらためて見返すなかで、育成の現場にフィードバックされたものや今後目指す方向性をお聞かせ下さい。
「他のJクラブの指導者と話をしている時に、『アカデミーで育てた選手をトップの監督が使ってくれない』って、話をされる方がいらっしゃいましたが、それはしょうがないと思うんですよ。トップの監督は勝つ事が目的だから、アカデミー出身を優先して起用する必要はないと思います。
今は長谷川監督が戦力だと思っているから、アカデミー出身も選手が出場しているんだと思います。それが本来の姿で、アカデミー出身だろうが外からきた選手だろうが関係のないことで、どんな監督にも評価される選手を僕らは育てたい。ガンバのいいところは、自分たちのクラブでも活躍し、下平(匠)やアキ、寺田(紳一)、奥井(諒)、岡本(英也)……、他のクラブでも評価されている選手が多いというところじゃないでしょうか。それは僕も嬉しいところで、評価されるべき点だと思うんですよ。
ガンバのアカデミーの指導者が長年思っているのは、サッカーの原理原則は変わらない。それをいかに選手に身につけさせて良いサッカー選手にしていくかということです。長く同じスタンスでやっているのはガンバの良さだと周りからは言われます。ただ、そのことは大切にしながらも我々指導者がさらなるレベルアップをしなければいけないと思っています」
ガンバ大阪ジュニアユース監督を務める鴨川幸司氏
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