「日本ほどすばらしい才能に溢れた子どもが多くいる国を見たことがないが…」ドイツから見た日本の育成年代が抱える問題点とは

2017年01月24日

コラム

メソッドをコピーしてはいけない。自分たちにあった取り組みを

――足りない部分を埋めるために練習するのは悪いことではありません。あまり体に負荷がかからない技術練習ならやってもいいわけですから。しかし、3時間あると思って練習すると、どうしてもどこかで余力を残そうとします。すると、全力でプレーするという習慣が身につかない。このことは、先ほどのゴール前のプレーの質ともかかわる点です。私たちはまだまだ他国から学ぶことがたくさんあります。でも、自分たちを見ることも大切です。

「その通りだ。コピーはしてはならない。自分たちのメンタリティ、美徳にあった取り組みがなければ。もう少し日本は待たなければならないと思う。今、サッカーをしている人が増えてきている。情熱を傾けてサッカーに取り組む人が増えてきている。彼らが指導者となり、後進を育てる環境ができることを、今は待つ時間なのだ」

――私も同じことを考えていました。今すぐに世界のトップ10に入るとかではなく、自分たちにとって揺らぐことのない確固としたベースを築き上げるこが大切なのだと。そして、海外で活躍した選手たちや指導者たちが将来さらに日本の成長を促してくれるようになるはずです。

「君の言う通りだ。JFAのアイデアもわかる。2050年までにという目標だったかな。それは正しい。2018年までという短期的なものではなく、将来を見据えての目標だからね。成長していくことは時間が必要になるものなんだよ」

HENNEF, GERMANY - JULY 03:  Football coach Bernd Stoeber reports during the DFB Youth coach congress at Sportschule Hennef on July 3, 2015 in Hennef, Germany.  (Photo by Christof Koepsel/Bongarts/Getty Images)


ドイツ年代別メソッド
【商品名】
世界王者ドイツの育成メソッドに学ぶ
サッカー年代別トレーニングの教科書

【発行】
株式会社カンゼン


【著者】
中野吉之伴(ドイツサッカー連盟公認A級ライセンス保持者)
1977年7月27日生まれ秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成年代指導のノウハウを学ぶためにドイツへ。現地で2009年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームでの研修を経て、元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-16監督、翌年にはU-16/U-18総監督を務める。2013-14シーズンは、ドイツU-19の3部リーグ所属FCアウゲンでヘッドコーチ、16-17シーズンから同チームのU-15で指揮をとる。

【書籍あらすじ】
長く世界トップの実力を誇ったドイツは、2000年の欧州選手権に惨敗。ただ数年前から低迷を続けており、その兆候はあったが、ずっと見て見ぬ振りをしていた。そこで、ドイツサッカー協会は低迷の理由を徹底的に分析し、育成年代の強化と改革に乗り出した。近隣国に勉強へ行き、育成プロジェクトを立ち上げた。以降、そのコンセプトを国全体が共有し、新たに年代別のトレーニングの指針を示した。さらにブンデスリーガの各チームに育成機関を義務化し、エリートシューレ(育成システム)を設置、シュツットプンクトの整備、グラスルーツからの指導者育成など……こうした成果が15年の歳月を経て、2014年のワールドカップ優勝につながった。こうしたドイツの成功事例は、日本の育成年代の指導者たちに参考になるはずだ。


 

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