コーチングとは「その人が行きたい方向に進むのをサポートすること」。“発問指導”のスペシャリストが語る子どもの自立を育む秘訣とは
2017年06月02日
インタビュー子どもたちが何を思い描いているのかを知らなければならない
――主役が子どもです 。
年齢によって関わり合い方に変化が出てくるのは当然あります。でも方法や手段は変われど“自立心を育みたい”のであれば子どもが主役だという立場は変わりません。高学年になれば行動が伴うことが求められるので、そのきっかけを与えることが親の務め。とはいえ、保護者もすべて知っているわけではないから『知らないから一緒に考えてみようか』と正直に言うことで心の余裕が生まれます。解決できるものや人を紹介する形をとってもいいと思う。それこそサッカーを教えられないならJリーグを見に行く、テレビで欧州サッカーを観戦するでもいいんです
――例えば勉強をしてほしい場合は?
勉強に価値があることを知ってもらう。『この算数は何に役立つの?』と聞かれ、『いつか役に立つから』だと価値が見つけられません。親御さんが『数学が苦手だったから大学の選択肢が減ったんだよ』など経験を話すことでも十分です。素直に伝えることが大切だと思うんです。あとは簡単な目標を立ててそれに向かうことも一つのやり方です。もう一つは目の前の日常から 興味を引くものを拾ってあげること。今日たまたま海に行ったのですが、目の前にたくさんカニがいました。ずっと見ていたら興味が湧いてきて“カニ”“生態”で検索したら様々な種類がいました。前後に歩くものがいたりしてすごいですんよね。子どもの興味関心に寄り添うのは非常にいいことだと思います。分かりやすい例は、米村でんじろう先生の科学実験です
――やはり本人の意思が大事ですよね。
私のトレーニングでは、子どもたちには目標設定シートを書いてもらいます。その中で“今月やること”という枠を5つぐらい設けています。だいたいの子は全部埋めるのですが、ある子は2つしか書いていませんでした。『2つでいいの?』と問うと、『僕はまだ5つはできないから、まずこの2つをしっかりやりたい』と答えました。本人の意思がない5つと意思がある2つなら、間違いなく後者のほうが実行する力が高いわけです。何もないんだけれど、ただ埋めただけの答えが実行される確率は明らかに低いでしょう
――子どもに質問をするということは“いい聞き役”になるということですよね?
その通りです。子どもから話しかけているのに頭からそれを否定したり言葉にかぶせるように大人の話をし始めていたら『もういいや』となってしまいます。まずは子どもの言葉を最後まで聴ききることができるかどうか。それがスタートです。夕食は子どもの話を聞く時間にするとか対話の時間を作ることは自立に重要なことです
――お父さんお母さんがご家庭で子どもにかかわることは大切なことです。
少し主旨は違いますが、フィンランドは資源が少ないので“教育”に力を入れているそうなんです。そして、小さい頃からこんな質問し続けているそうなんです。『どんな生き方をしたいか』。幼稚園の頃はわからないと答えるのがほとんどなのだそうなんですが、高校生になると『こういう生き方をしたい』とみんなが答えるようになると。私たちはつい目的を忘れてしまい、こういう戦術がいいなど手段や方法を語りがちです。でも、どんなチームになりたいのか、どんなチームでプレーしたいのか、まず子どもたちが何を思い描いているのかを知らなければならないと思います
<プロフィール>
藤代 圭一
(ふじしろ・けいいち)
しつもんメンタルトレーニング代表。1984年愛知県名古屋市生まれ、東京都町田市育ち。大学中退後、スポーツメーカーに勤務。幼 児から小学生向けのスクール事業に携わる。元サッカー日本代表選手のもとでコーチを経験した際、結果を出している選手の多くは技術だけでなく人間性が素晴らしいことを実感。その後、マツダミヒロ氏のもとで心理学やコーチングを学び、2010年にフリーランスに。教育機関への「子どものやる気を引き出す」をテーマとした講演を行う傍ら、選手・保護者・指導者向けに講習会やワークショップを精力的に行う。
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