“トレセン”はどうあるべきか。JFAユース育成ダイレクターが語る「多くの選手に刺激を与えつづけること」の意味
2017年08月08日
コラムヨーロッパを筆頭に、日々進化をつづけるサッカー界。“世界”から取り残されないためには、A代表を強化することも大事だが、安定した地盤をつくるために“育成”の質を高めることが重要になってくる。では、日本サッカー協会は育成に対してどんな考えをもっているのだろうか。2016年からユース育成ダイレクターを務める須藤茂光氏に話を聞いた。
JFA地域統括ユースダイレクター・城福浩氏が語る“日本サッカー強化論”。技術は「身につけるだけでなく、どう使うかが大事」
(文●河治良幸 インタビュー写真●編集部 写真●松田杏子、編集部)

“今いい選手”の発掘と同時につづけるべき環境づくり
今年5月のU-20W杯で5大会ぶりの出場となった日本はベスト16に進出した。もちろん代表メンバーとして大会に出場した選手たちは世界を肌で感じる良い機会になったはずだが、収穫は彼らにとどまらない。韓国でU-20W杯を視察したというJFAの須藤茂光ユース育成ダイレクターは育成年代の代表チームがアジアを勝ち抜き、世界で戦う重要性はその経験や刺激が日本サッカーの指導者や同世代の選手に共有されることにあると指摘する。
「自分と同じ世代の選手たちが世界で戦った、戦い方だとか、背景にあるものを含めて試合を“観て”いくというのは大事ですよね」
しかし、そうした代表チームの体験を情報として共有するだけで日本サッカーのレベルアップをはかれるわけではない。そのためにも普段から、できるだけ多くの選手に似たような経験をさせることができるかが成長の鍵を握ることを指摘する。
海外で開かれる国際大会に参加し、また新潟国際ユースやSBSカップのように定期的に海外のチームを招待するなど、代表チームの“ラージファミリー”を広げることも方法の1つだ。“内山ジャパン”が韓国でU-20W杯を戦っているほぼ同時期にU-19日本代表がフランスのトゥーロン国際大会に参戦し、イングランドやアフリカのアンゴラといった未知の国と対戦する機会を得たのは象徴的な事例といえる。
U-19の選手たちはU-20日本代表の候補だった選手たちであり、久保建英のように、さらに下の年代から“飛び級”でU-20日本代表メンバーに残った選手もいる。その中でトゥーロンに参加した選手の多くは内山監督のチームに招集された経験を持ち、惜しくも最終選考から“漏れた”選手たちだ。その一方で、トゥーロンで初めて日の丸をつけた選手もいる。
「間違いなく可能性のある選手が増えてきています。10人選びなさいとなれば、その時点で10人を選ぶしかないですが、その時は目立たなくても、実際にはもっと伸びしろのある選手はいるわけです。トレーニングやゲーム環境が整い、いい選手が増えてきているからこそ、多くの選手にさまざまな刺激を与えられる環境を整えていくことが重要なんです」

【須藤茂光ユース育成ダイレクター】
その意味でも須藤氏は「より多くの選手にチャンスが与えられる環境をつくっていければ」と語るが、それは今よりもピックアップの“パイ”を広げても、数十人程度が対象となる代表チームの経験を意味するものではない。その年代でボールを蹴っている全国の子どもたちが試合でプレーして、体験しながら学べる環境の提供だ。
「例えば、ヨーロッパで育成にたずさわる指導者に話を聞くと、プロになれるどうかは『17歳にならないと分からない』とはっきり言います。若い年代から代表に選ばれる、あるいはエリート教育を受けた選手たちが最終的にトップカテゴリーの代表につながっているかと言えば、それほど多くはないわけです」
その理由が子どもの成長速度と変化の大きさにあることを須藤氏は指摘する。「“今いい選手”を発掘することは大切です。しかし、そこで評価を受けなかった選手にも何らかの刺激を常に与えつづける環境を整えていくことも大切です」。
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