鄭大世が語るストライカーに必要なメンタル。理想の選手像は「内田篤人」
2017年09月13日
メンタル/教育
FWとして「どっちつかず」の選手になってしまった鄭大世を変えた出来事
――鄭大世選手はストライカーとしての考え方が変わるきっかけがあったそうですね。
韓国にいた3年目だから、あれは 2015年。ちょうど子どもが生まれたのが大きなきっかけになるんです。それまでは自分のゴールという結果しか気にしていなかったのですが、それでは全然うまくいかなかった。川崎フロンターレを出てから行き詰まってしまい、何かを変えないといけないと思っていて、一度、ゴールへの欲を捨ててみたんです。
もうシュートを打たないようにした。全部パスを出したんです。するとチームが勝ち出した。3、4点入るようになった。そうなると今度は自分にパスが回ってくるようになったんです。マークが分散されて、周りもゴールが取れるし、自分も取れるし、試合には勝つし、いいことばっかりになった。これか!と思ったんです。
昔、川崎フロンターレ時代に中村憲剛さんに『周りを使ったほうが最終的にお前が楽になるんだよ』と言われていたのに、僕は受け入れられなかった。自分のストライカーとしてのフォームを崩してゴールが取れなくなったらあなたは責任取れるの?これが俺の強さなんだから俺はこれで勝負する!と心の中で思っていた。でも、やっぱりうまくいかなかった。でも、子どもができたことで欲を捨てられたんです。
――子どもができたことでなぜ欲を捨てられたんですか?
自分が変わるきっかけにしたかったんだと思います。それまでの自分はずっとジレンマの狭間で揺れていたんです。守備もしっかりできるなどFWとしての能力全体を上げるのか、シュートを打ちまくってゴールを量産できるスタイルをより磨くのか。ずっとどっちつかずで、中途半端な思いでやっていたときに子どもが産まれた。一家の主になったので責任をもってやらないといけない。そこで今までの自分を一新して、全部欲をなくして、シュートも一切 たずにパスをした。そうしたら開眼したんです。
――韓国時代に子どもが産まれて、そこで変わっていくわけですね。
3ヵ月間の公式戦で11ゴール、9アシスト。アシストが増えたのが自分にとって大きかったんです。昔はアシストなんて数えてもいなかったのに、このとき、アシストをした仲間が今度は自分にパスをくれるようになった。プライベートで仲間に良くしてあげるのも一つの手で、仲良くすればピッチでパスを出してくれるのが人間の心理。
試合中も苦しいときに仲間を助けてあげたり、仲間がボールを失ったときに思いっきり追ってボールを奪い返したりしてあげれば、その選手は僕に感謝して、いざチャンスになったときにパスをくれる。一番簡単なゴールを決められるようにしてくれるんです。
――そういう繋がりがチームにはあるんですね。
チームはそういうことが絶対的に大事なんです。日本人の選手が海外へ行ったときに成功できずに帰ってくるのはチームでのコミュニケーション能力が足りていない側面があると思います。それは僕も同じでした。言葉の勉強も一生懸命にしたけれど、心の深い部分でチームメイトと仲良くなれていない。ギブ&テイクの関係になれていなかった。こっちからギブがなければ、相手からのテイクもないんですよ。
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