「コーチには人間そのものの勉強が必要」。パフォーマンスアップの秘訣は『何をやるのか』ではなく『どんな心でやるのか』
2017年09月27日
メンタル/教育
コーチの機嫌が悪いと子どものパフォーマンスの質は下がる
──もう少し噛み砕いてもらえますか?
辻 たとえば、トレーニングの質はコーチが作る雰囲気に大きく左右されます。『今日はコーチの機嫌が悪い』と、子どもたちが感じたらトレーニングがいい方向に進まないし、コーチが一人ひとりに気を配れなくなります。どんなにコーチが『楽しくやろうぜ』と発しても、子どもが楽しくやれるはずがありません。なぜなら顔色をうかがい、子どもはどんどん機嫌が悪い状態へと導かれていきます。すると、どちらのパフォーマンスの質が下がります。
──確かに機嫌というか、気分がのったいい状態でトレーニングをすれば高いパフォーマンスを発揮できますし、たくさんのことを吸収できるような気がします。
人間は心が揺らいでとらわれて、機嫌が悪いノンフローの状態で何かをやると、自分以外のことばかり気にしてしまいます。天気が悪い、あの時ゴールを入れられなかった、あいつがミスをした…。そうなるとストレスの海に溺れてしまい、自分自身に目が向けられなくなります。そうすると、心の状態が後回しになってしまいます。
だから、人間の原理原則を理解した上で、自分の中でフローを価値化することが重要だと伝えています。コーチがフローを価値化することができれば、指導パフォーマンスの質が上がるから、同時に選手のプレーパフォーマンスが上がるのです。
テレビで長友佑都選手が話をしているシーンを見たのですが、長友選手は自分のフローの価値化を『視野の広さ』ということにおいているようでした。なぜなら、機嫌が悪い状態になると余裕がなくなって視野が狭くなると発言していたからです。彼は機嫌が悪くなると、余裕がなくなり、視野が狭くなることに自らで気づき、そこを意識して揺らがずとらわれず機嫌がいい状態、つまり自分でフローの状態を作れたからあらゆる質が向上し、あそこまでの選手になれたのだと思います。
もちろん個人的な分析ですが、長友選手をはじめ、世界で結果を出す選手たちがメンタルトレーニングを大切にしているのは間違いないことです。
──フローな状態を保ちながら何かをやり続けることは難しいように思います。
辻 私は単に『機嫌よく昼寝していきましょう』と言っているのはありません。基本に立ち返ってください。人間のパフォーマンスを作っているは『何を』『どんな心でやるのか』という2つの要素です。多くの人は機嫌よくやりましょうといえば、パフォーマンスの質を上げるための『何を』という要素をおざなりにしてしまいます。『何を』をやらず、それから逃げて機嫌よくなってもそれは偽物で、何も達成できるはずがありません。
でも、当然『何を』に向き合うほどストレスは加わります。そうなると機嫌が悪いノンフローの状態になります。だから、頭の中に新しくフローの価値を作って育てましょうというのが私のメソッドなのです。機嫌よくという言葉を使っていますが、ストレスがあるのは当たり前の中で、自分のやるべきことに向き合いながら自身をマネジメントし、新しく価値化を行うことをコーチが模範としてやらなければならないと言っているのです。むしろ厳しいことだと思います。
でも、コーチが自分の頭に新しい価値を作ることができれば選手も変えられるのです。フローの価値化ができれば人間としての機能が上がるので、やる気は出てくる。
なぜなら内発的な動機が自然に生まれてくるからです。私のメソッドでは人間の行動の構造を理解し、フローを価値化することから始まるのです。そのためには自分の心の状態に気づく力を養わなければなりません。
──辻先生の分析でも、長友選手は自分の心がどんな状態だとどうなったと気づいていました。そこがポイントなのですね。
辻 何事も自分の心の状態、すなわち『感情に気づく力』が重要になります。不安だ、がっかりした、ムカついたと自分の感情に気づくから自身をマネジメントできるのです。コーチは子どもたちを指導しますが、その行動の質はコーチ自身が土台となるから、まずはコーチが自分の感情に気づく力を養い、自分をフローの状態にマネジメントできなければなりません。
──だから、フローの価値化が必要だと。
辻 はい。フローの価値化ができれば結局パフォーマンスのレベルは『何をやるか』で決まります。だから『何をやるか』を、より具体的に厳しくすることが大事なのです。多くのコーチは指示が曖昧だから都合が悪くなると『メンタルが弱いからだ』と曖昧な言葉を使って選手を動かそうとします。指示は明確に具体的に厳しくが基本です。でも、そうするとストレスが加わってノンフローの状態になります。(フローの状態にしないと人間の行動の質は落ちるから)そこで支援を行います。指示と支援のバランスがいいコーチのもとで行動した人間はパフォーマンスの質が向上します。私が行うワークショップやトレーニングではこれを徹底的にやります。
──指示と支援についてもっと具体的に教えてもらえますか?
辻 たとえば『シュートを入れろ』『がんばれ』などという抽象的な指示は押し付けだし、何度繰り返しても曖昧だから子どもはどうすればいいかがわかりません。だから、思うように動かない。シュートが入らないのも、がんばれないのもその子たちのその時だけを切り取って発言しているから。子どもたちにも言い分があるから『なぜそうなったのか』を聞き、それを『わかってあげる』支援が大事です。
子どもの感情や意見を受け止め、それを理解して認めてあげることが支援なのです。子どもたちとの間に支援する関係性が高まると『コーチは僕のいうことを受け止めてくる』と信頼関係が高まります。そこから明確に具体的に指示をすれば子どものパフォーマンスは上がるのです。指示と支援は両方がバランスよく必要になります。
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