地区トレセンの今。「強化や選抜が目的ではない」伊勢原トレセンの取り組み
2017年11月13日
コラムみんなと一緒に頑張れる子に参加してもらいたい
そうしたことからも、より多くの意欲のある子どもたちがチャンスを掴めるようにと伊勢原トレセンでは門戸を開いている。基本的には、毎年3月にセレクションを開催して、U-11の選手選考を行う。参加資格はない。所属チームの指導者からの推薦もいらない。その理由を安倍監督はこう説明する。
「推薦制度を設けてしまうと、所属チームの指導者の好みが反映され、限られた子どもだけの活動になってしまう可能性があります。以前は推薦制度もあったのですが、推薦された子どものなかには、自分のチームでサッカーをやるのはいいけれど、トレセンも含めて、他のチームではやりたくないというようなモチベーションの低い子もいました。やはり意欲のある子に参加してもらいたいということです」
例年、セレクションは、新5年生の参加者が60から70名あり、フィールドプレーヤーであれば約30名が選ばれる。ゴールキーパーに関しては全員が合格となる。ゴールキーパーの技術向上を目的として、日本サッカー協会のゴールキーパー指導資格を有する専任のコーチによる指導コースが開設されているため、ゴールキーパーは全ての希望者が伊勢原トレセンでトレーニングを受けることができる。
「保護者の間では、トレセンに選ばれる子は強くて上手いようなイメージがあるようですが、そうではありません。私たちはあくまで「がんばれる子」を中心に選んでいます。サッカーを始めたばかりの子でもトップを目指している子でも関係なく、意欲があって、みんなと一緒にがんばれる子。そういう子にチャレンジをしてもらっています」
もし、セレクションに不合格となってしまったとしても、伊勢原トレセンのスタッフが常にスカウティングを行っていることで、追加招集されるチャンスもあるほか、10月頃にはもう一度セレクションが実施させる。
「子どもというのは、どのタイミングで上手くなるのかわかりません。伸びる可能性はあったけれど、いろいろな事情があって4年生の段階では伸びなかった子もいます。そういう子にもチャンスを与えてあげる必要があると考えています」
この方針はセレクションのときだけではなく、伊勢原トレセンの指導方針として一貫している。どの子どもにも高水準の試合を経験させる。試合のメンバーは固定しない。栃木県宇都宮市への遠征、厚木市での招待試合、コパベルマーレに参加するメンバーは、みんなバラバラだったりする。子どもたちの育成が優先されているからだ。
そのことは、子どもたちにも伝えられている。この日、練習後の片付けやグランド整備を終えて集まってきた子どもたちへの締めくくりとして、安倍監督は、このような言葉をかけた。
「僕は優勝を目指すためにやっていません。ここ(伊勢原トレセン)で優勝カップをもらうのが目標ではありません。君たちを育てるためにやっています。君たちの未来を見据えて指導します。みんなに平等にチャンスがある。みんなにハイレベルの試合を経験させます。けれども、君たちは、もちろんトレセンで練習し、試合をするからには全力で取り組みなさい。目の前の勝負にはこだわりなさい。そういうところを意識してトレーニングに取り組んで、誰がどの試合に行っても『これが伊勢原トレセンです!』って、全員が気持ちを揃えて言えるような技術とメンタルをつくりましょう!」
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