指導者は「実現可能な目標を立て続けることが任務」。ミゲルが語る“挑戦”の意味
2018年02月07日
コラム目標は限界以上の力を出せば、具体的には101%の力を出せば実現ができるものを立てるべきだ。子どもたちには、そんな目標を持たせ続けることが「やる気」と「モチベーション」につながる。チームが目標を達成するためには一人ひとりの力が大切だから、それを個人に落とし込んで各自に目標を立てさせる。そして、もしそれを忘れかけたら思い出させ、常に目標に向かって楽しくプレーさせることが子どもたちの成長の秘けつだ。
【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法
企画・取材・文●木之下潤 写真●松岡健三郎、佐藤博之、Getty Images
挑戦や目標は限界をほんの少し超えたものであるべき
日本で使われる「挑戦しろ」は「達成する」ことが目的です。
ただ、私は「何かを乗り越える」という意味にもとらえています。スペインのフットサルクラブ「ガハ・セゴビア」で監督を務めていた頃、FCバルセロナなどの強豪チームと対戦するときは選手に「彼らに勝つためには『小さい奇跡』が必要になる」と伝えていました。勝つのが『夢』だといえば、その実現が不可能に感じてしまいます。でも、小さな奇跡だとすれば「可能性がある」という意志のこもった伝え方になります。
例えば、カズ(三浦知良選手)を招集した2012年のワールドカップ。
私はJFA(日本サッカー協会)に国旗を用意してもらい、選手たちに「この国旗に各々の『挑戦』を書け!」と言いました。そして、練習には必ずそれを掲げ、常に各自の挑戦を思い出させるようにしました。ようするに、大会を戦い抜く上でのシンボル、乗り越えるべき目標にしたのです。
挑戦とは、限界を出し切れば超えられる、達成できるものでなければなりません。
つまり、手が届き、実現できるものです。選手に毎日その国旗を確認させることで、自分にとっての挑戦を明確にさせ、モチベーションを高めるための準備をしました。大会ではブラジル、ポルトガル、リビアという死のグループに入ってしまいました。決勝トーナメントに進出できたら奇跡だというほどの厳しい予選が予想できました。だから、勝ち点を計算しなければなりませんでした。
「日本にとっての挑戦とは何か」
そう考えると、ブラジルとポルトガルを相手に両方から勝ち点を獲ろうとした場合、選手たちにそれを伝えても「何を言ってるの?」という現実感のない反応が返ってきてしまいます。すると、「両方から勝ち点を獲るなんて無理でしょう」というマインドに陥ってしまいます。だから、私は「ブラジルからは勝ち点を獲らなくていい」と言い切りました。そうなると、逆に選手たちは「何を言ってるの?」という顔をしました。
続けて「ただ、ポルトガルが相手なら自分たちが力を出し切れば、現実的に勝ち点1は獲ることが可能だ。その代わり、それぞれの選手がこれまで出したことのない限界を少しだけ超えた力を引き出さなければならない。それがあって初めて、この挑戦は達成できる」と。これをブラジルを相手に言っても、選手たちには通用しません。彼らが酔っぱらってプレーしない限り、現実的に難しいのです。具体的な勝ち点の獲り方を明確に伝え、日本の挑戦が可能であることを認識させました。
もっと掘り下げて『挑戦』を説明すると、100%以上のものを出してこそ達成できるものでなければならないのです。101%の力を出し、『自分の限界をほんの少し超える』ことが重要なのです。そのときに子どもたちが「そうだ、できるんだ」と思えることが大事なのです。あまりに大きな目標を据えてしまうと、心の中で「本当にできるのかよ?」と感じてしまいます。私たち指導者にとっても難しい仕事ですが、常に実現可能な目標を立て続けることが任務なのです。
【2012年のフットサルW杯でミゲルはサッカー界のスーパースター三浦知良選手を招集した】
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