「U-15」と「U-12」年代のサッカーで起こっている「課題が同じ」なのはなぜか?【4月特集】

2018年04月05日

コラム

3月末に神奈川で行われた「U-15 キリンレモンCUP 2018」と4月初旬に開催された「U-12ダノンネーションズカップ2018」を取材し、ある共通した課題があることに気づいた。それは「中盤」を活用したサッカーの展開が圧倒的に少ないことだ。特にボランチやセントラルMFを通るパスが少なく、Uの字型にボールが行き来する。このことはJFAがジュニアで8人制サッカーを推奨し始めてから数年の間により顕著に現れている。

取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部、佐藤博之


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【中井卓大選手が所属するレアル・マドリード カデーテBは圧倒的な強さを発揮して「U-15 キリンレモンCUP 2018」初代王者となった】

日本では「判断を伴うトレーニング」が圧倒的に少ない

「U-15 キリンレモンCUP」で、レアル・マドリード カデーテBが見せたサッカーは日本のものに比べると異質だった。いや、その見方はむしろ逆かもしれない。日本のサッカーが異質なものだった。

 レアルの選手たちが見せるDFラインから中盤を経由してサイドやFWに展開するサッカーはオーソドックスだが、U-15ながらすでに成人した選手と同じ価値観を持ってプレーをしていた。もちろん状況に応じてロングキックも多用していた。でも、そこには前提として判断が存在していた。基本的に展開される中盤を活用したオーソドックスなサッカーは未完成ながらも「年齢を重ねるほどプレーの精度が上がり、アイディアも増えていくだろうなぁ」という成長の余地を感じさせるものだった。

 一方、日本チームの選手たちが見せるサッカーは単調で、状況に応じたプレーとは程遠いものだった。自分たちの得意のパターンにハマれば、時折驚くようなテクニックやスピードでプレーするが、その再現性は低く、対戦相手が慣れるほどトーンダウンは否めない。なかでも、最も気になったのは「8人制から11人制へと切り替わっているのに団子サッカーの延長線上にあるようなチープなサッカーが展開される」ことだった。

 守備時に人が密集するのは構わない。しかし、攻撃時にも変わらぬ光景が広がる。ボールを奪った後、狙いを持って攻撃を仕掛けているのかはかなり疑問が残る。状況を把握して近くの選手同士でパスを回して攻撃を仕掛けるのと、近くの選手しか見えていないからとりあえずボールを預けることを繰り返していることはプレーの質でいえば差が大きい。私が見た限りだと、後者にしか映らない。なぜなら、U12でも同じサッカーが展開されるからだ。

 では、U12からU15にかけて一体何を積み上げているのだろうか?

 ここで現状の育成を客観視するため、二人のスペイン人指導者の言葉を紹介したい。まず、昨年8月末に開催された「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」に出場したFCバルセロナ インファンティルBの監督ダビド・サンチェス・ドメネに聞いた日本チームの通用するところと課題だ。

「日本人選手の良いところは選手にスピードがあること、そして、ディフェンスのオーガナイズがしっかりできていることだと思います。 一方、ボールを扱う技術の質は非常に高いものがあるのですが、試合の中でボールを前進させる判断の部分で、前に進めることができるであろう状況においてもボールを後ろに下げたりしていました。日本人選手たちは前に進められる状況の理解の範囲が狭いように感じます。明らかに前に行ける状況でしか前進しないというか、積極的になれないようです。 あとはフィフティ・フィフティのボール、ぶつかって戦わなければいけない場面で少し怯えるというか、そこを強く出られないというところがあったように思います」

 次に「U-15 キリンレモンCUP」で優勝を飾ったレアル・マドリード カデーテBの監督ペドロ・サンチェスの日本チームと選手に対する印象だ。

「本当に組織力、結束力のあるチームが多かったと思っています。個人のテクニックも高く、なかにはうまくてビックリした選手もいました」

 この大会は取材時間に関する規制があったため、参考までに自チームに所属するMF中井卓大(通称「ピピ」)に対する同監督の評価を記し、補足させてもらう。ちなみに彼は9歳の時にスペインに渡っている。

「ピピの良いところはテクニック。ボールコントロールやドリブルはすばらしい。ただ改善すべき点はゲームの理解だ。戦術の理解を深める必要がある。テクニックはすばらしい。テクニックの高さを維持しつつ、戦術の理解を学ばなければならない。各シチュエーションで、どういったプレーをしなければならないのかという判断の部分を磨いていけば、より完成された選手になるのではないかと思う。今後はグループでの戦術練習をすること。個人に向けては練習や試合から『自分がどういうところを改善しなければいけないのか』を動画で見せながら説明していく必要があると考えている」

 両監督とも日本人が必死に磨いているテクニックは認めているし、むしろ驚きすら感じている。だが、味方や敵がいる状況下で判断が伴う戦術的なプレーに課題があるのも共通して指摘している。

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