「子どもは”1つのきっかけ”で劇的に変化する」。滝川第二高校の元監督が説く、選手の育て方
2018年04月21日
コラム岡崎慎司選手(レスター・シティ)、金崎夢生選手(鹿島アントラーズ)など、数多くの日本代表選手を指導してきた黒田和生氏(滝川第二高校サッカー部 元監督)。黒田氏は子どもたちを指導していた神戸FC時代に、「子どもは1つのきっかけを与えると劇的に変化する」ことに気づかされたという。そんな知恵を得た背景には、黒田氏のアプローチによって「劇的に成長した」2人の少年の存在にあった。
再構成●ジュニサカ編集部 著●黒田和生
『人の心を耕す 怯まず、驕らず、溌溂と。サッカーで「心の芯」を育てるコーチング道』から一部転載
【台湾の選手たちを指導する黒田和生氏。神戸FC、滝川第二高校サッカー部で選手たちを指導した後、63歳で台湾へ。ユース育成統括、U-13・18代表監督、A代表監督を歴任した】
「子どもというのは1つのきっかけを与えると劇的に変化する」
神戸FCには13年間いましたが、数えきれないほど多くの子どもたちとの出会いがありました。レベルもさまざまで、和田や寺川のようにJリーガーになった選手もいれば、小学校のわずかな時間だけプレーした選手、その後、指導者や教員になった選手など、実に多彩だったと思います。
彼らと接する過程でまず気づかされたのが、「子どもというのは1つのきっかけを与えると劇的に変化する」ということでした。
私の脳裏に深く刻まれている2人の選手がいます。1人は、私が神戸FCに入って5~6年後、27~28歳の時に教えた少年です。
彼はボーイズの20人中、10番目くらいの実力の選手。性格的には少し受け身で、なかなか自信を持てないタイプの子どもでした。
「技術的には決して下手ではないけど、何かが足りない。気持ちの部分が変われば、選手としても大きく成長できるのに……」と感じることが少なくありませんでした。
その年は兵庫県優勝、全日本出場を目指していましたから、試合毎にスターが変わるようなチームを作りたかった。才能があるのに、足りないところがある子どものレベルを引き上げ、選手層を厚くすることが、チームにとっても重要な課題だったのです。
その子とはたまたま家が近かったので、私は「一緒に朝、住吉川沿いを走らないか」と誘ってみることにしました。
住吉川沿いの道は傾斜が急で、健康維持のために走る人が結構いるんで、私も走ってみたいと感じていました。1人ではなく、教え子とであれば、なおさらモチベーションが高まる。そう考えて声をかけたら、彼も乗ってきて、2人で1時間ほど走るのが日課になったのです。
それをしばらく続けていたら、彼は体力がグングンついてきた。食事の量も増え、体力が目に見えて向上した。試合に出しても走り負けしなくなり、自信を持ってピッチ上で戦えるようになりました。この時期の急成長で自信をつけたこの選手は、高校までサッカーを続け、兵庫県国体選抜まで上り詰めた。その話を聞いて、私自身もすごく嬉しくなりました。
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