「最も衝撃を受けた選手」。C大阪元スカウトマンが語る、香川真司のルーツ
2018年06月21日
サッカーエンタメ最前線ロシアW杯初戦のコロンビア戦で自ら獲得したPKを冷静に沈め、日本代表の”大金星”に大きく貢献した香川真司選手。そんな香川選手が飛躍を遂げた原点はセレッソ大阪時代にあります。高校在学中に加入すると、2009年シーズンにJ2で得点王に輝き、翌年にブンデスリーガのドルトムントに移籍。世界へと羽ばたいていきました。香川選手の”ストロングポイント”はどこにあるのか?なぜ獲得をしたのか?香川選手を幼いころからよく知るセレッソ大阪の元スカウトマン小菊昭雄氏(現セレッソ大阪トップチームコーチ)が教えてくれました。
文●小田尚史 写真●Getty Images
※取材 2013年
衝撃を受けた香川真司との出会い
──香川真司選手が当時、セレッソ大阪に加入した経緯には、小菊さんの存在があったとお聞きしております。
そうですね。当時、私はスカウトを担当していました。スカウトをやる前までは(セレッソ大阪の)ジュニアの監督をやっており、そのまま中1を持ち上がるという話で進んでいました。ただ、当時スカウトをされていたネルソン吉村さんが体調を崩され、そこで、私が代役として白羽の矢が刺さり、「将来間違いなくいい経験にもなると思うから」と。
結局、そこからスカウトを4年やりました。この間、多くの指導者に素晴らしい話を聞かせてもらい、(香川)真司も含めていろいろな選手も見させてもらい、貴重な4年間でした。
──小菊さんが選手を見るにあたって、大切にしていたことは何ですか?
一番は“本当にサッカーが好きかどうか”ということです。16、17歳の選手をチェックするにあたって、そういった選手たちは完成形ではないので、これからどう伸びるかを見ていかないといけない。もちろん、センスや技術、スピードやフィジカルという部分も見ますけど、私が一番大事にしていたのは、“どれだけサッカーが好きか”という部分。
ずっと見続けていたら、だいたい分かります。どれだけ技術的に惹かれても、普段の練習やふとした合間に、この子あんまりサッカー好きじゃないなと感じた子どもにオファーはかけなかった。その意味で、真司は常にボールを触っていました。本当に成長する選手というのは、空いている時間にも友達を捕まえて1対1をやったり、キックの練習をしたり、コーンでゴールを作ってミニゲームしたりと、とにかくボールに触っていますね。
2つ目に大切なことは、人間性です。プロになったとしても、どこかのタイミングで我慢しないといけない時期は必ず来る。“サッカーが好きか”という話にもつながりますけど、自分としっかり向き合って、謙虚に努力し続けることができるか。真面目にコツコツ頑張ることができるか。自己犠牲ができるか。チームのために、攻守のために働けるか。そういった人間性も見ていました。センスや体格といったことより、“サッカーが本当に好きか”と“人間性”。この2つを大事に、選手を見ていたつもりです。
──香川選手も、決して技術ありきで選んだわけではなかったと?
そうですね。スカウトは選手を見るのが仕事ですけど、ああいう衝撃を受けたことはなかった。監督にやらされている、チームメイトに怒られるから一生懸命やる、という選手も多い中で、真司は常に自分からイニシアチブをとってやっていた。ボールに触りたい、試合に勝ちたい、という気持ちでやっていた。そういう選手は案外少ないんですよ。多くの選手を見てきた中でも、最も衝撃を受けた経験を覚えています。それくらい、真司は印象に残る選手でした。
──サッカーがうまくても、そういう面が伝わってこない選手もいる?
そうなんですよね。いわゆる、「俺にボールをよこせ。おいしい所はやる」といった、昔のゲームメーカータイプですよね。攻撃の中心となるが、攻守ともに切り替えが遅かったり、守備は全くしなかったり、点をとれるところにランニングしないなど。
でも、真司は技術のある選手なのに、ゴール前まで戻ってスライディングしてピンチの芽も摘んだり、チャンスならゴール前にも飛び込んでいく、そういうプレーも自然とできていました。これまで自分が気持ちよくサッカーができればいいという選手はいっぱいいましたけど、真司みたいな攻守ともにバランスのとれた選手はあまりいなかった。年代的にも中3から高1に上がる時期ですし、気づけない年ごろでもありますからね。彼はあの年代で何が大切なのかを、気づけていたのが凄い。
私も実際に練習を見ましたけど、チームのための自己犠牲や、戦う、走る、球際を頑張る、声を出して鼓舞する。そういった彼の人間性が素晴らしかったですよ。
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