「走るのが苦手で辛かった」 日本代表・川島永嗣がゴールキーパーになるまで

2018年07月05日

コラム
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「ゴールキーパーをやりたい」

「私はお姉ちゃんの中1のときの担任で、家庭訪問に行ったことがあります。お兄ちゃんが小3、永嗣が小2で、親御さんから『練習サボってばかりなんですよ』と相談を受けました(笑)。それが彼との最初の出会いです。次に永嗣を見たのは小6のとき。ウチの中学と少年団が練習試合をしたんですが、センターバックをやっていて非常に大柄。小学生にしては目立っていました。その子が入ってきたんで、どのポジションが希望か尋ねると『GKをやりたい』と。私は子どもたちには好きなポジションをやってほしいと考えていたので、本人に『それなら、やっていいよ』と言いましたね」

 およそ 20年前の出来事をこう述懐するのが、柏監督だ。川島にしてみれば、念願だったGKを堂々とやれるのが、心から嬉しかったに違いない。普通の公立中学で、もちろんGKコーチはいないが、3年生の先輩がキャッチングやセービングを直々に指導してくれる日々は刺激的だった。

「同学年に1人、2年に1人、3年に3人と合計6人のGKがいて、みんなで回しながら練習しました。自分はGKをやれる喜びを感じながらやってました。僕はホントに止めることが好きだとしか言いようがないから。昔から(元アルゼンチン代表のセルヒオ)・ゴイコチェアとか世界的GKの映像を見て『カッコいいな』と思ってましたし。仲間同士でもシュートを止めたときの快感は格別でした」と、川島はGKとして新たな一歩を踏み出した充実感を味わっていた。

 もちろん課題にも直面した。その一つがキックだ。中学入学当初はゴール前から蹴ってもペナルティエリアの外に出せないほどボールが飛ばず、同学年のもう1人のGKに大きく水を空けられていた。人一倍負けず嫌いの性格ゆえに、川島は練習前にいち早くグラウンドに出てパントキックを繰り返し蹴り続けた。この努力によって、中3の頃にはロングキック1本で一気にカウンターを狙えるくらいまでレベルアップした。

「永嗣はGKというポジションに対してのモチベーションが誰よりも高く、上のレベルを進んで求めていく選手でした。180㎝の長身で、声を出せて、先輩や同級生が持っているものを吸収できる力もあって、グングン成長していった。中2から埼玉県トレセンに行き始めて、専門コーチにイチから基本を叩き込んでもらったのも大きかった。私自身はサイドバックなんで、フィールドプレーヤー側から見たGKとの関係しか指導できなかったので、専門的な技術を学べたのは、確かにその後の成長につがなりましたね」と柏監督は彼の変化に目を見張っていた。

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