「個人を大切にしてほしい」。元Jリーガーコーチに掛けた言葉の真意とは

2018年07月16日

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「個人を大切にしてほしい」

――そうするとそこから指導方法も変わっていった?……

渡辺「変わりましたね、180度。そこに気づかせてもらえたのが、本当によかったですね」。

――それは何歳ごろのことですか。

渡辺「今から8年前ですかね。ちょうど野洲(高校)が優勝する前の年に変えたんですよ。そのときは、クラブとして行き詰まってましたね」。

――行き詰まっていた。

渡辺「自分のクラブと他のクラブの子どもの差が見えなかった。自分のクラブで育って高校行って、試合に出ますよね。うちの選手もいるし隣のクラブの子もいる。でも誰が見ても「変わらないよね」という感じなんですよ。もちろん成長してますよ。でかくなっているし速くなっている。

 だけどスタンドで見てて、突出して『こいつ凄いな』と思わない。勝ち進んで、準決勝や決勝にも出る。だけどその選手の姿を見て、うちのクラブに入ってもらえるだろうか、と思ったんです。本人も努力しているし、選手のために周りの大人も一生懸命やってきたのに、なんかこれは違うんじゃないかな、と。自分たちが育てた選手を見ていて、ワクワクしない。

 そこで関西行って衝撃を受けたんです。やっぱり一人一人がボールを持てて、自分で判断できる。そういう選手を育てよう、と考えるようになったんです」。

――関西では大会に参加されたんですか?

渡辺「いや、交流試合だったんですけどね。同じ会場でやっていた小学校三年生の試合を見たことがありまして、大阪のチームと奈良のチームがやったんです。で、後半の10分だけ見たんですけど、パスが3回しかなかったんです」。

――えっ!!

渡辺「ずーっとドリブルしている。凄くて。ベンチで大人が『おーい、悔しかったら取り返せよー』とか言ってるんです」。

――(笑)。

渡辺「これが関東だったら『ディフェンスは持つな』と叫んでますよ。ボールが持てるのはエースだけ。千葉県だったら、小学三年生のときからポジション決めて『お前はサイドバック、お前はセンターバック』ってやってます。片や『悔しかったら取り返せよー』ですからね」。

――そのあと野洲のサッカーが話題を呼んで、あそこから出てドイツに行った乾は活躍している。

渡辺「野洲がいい、とかっていうよりも、要するに一人ひとりの技術とか判断を大切にできる環境が小さいころからあれば、もっともっと日本のサッカーのレベルが上がる。その中から切磋琢磨して代表のレベルも上がっていく。今はごく一部の、本当に能力の高い選手がやっているだけですけど。ほとんど蹴って走りますからね。もちろん蹴って走るんですけど、サッカーは」。

――Jリーガーをやめてコーチになる人たちにしても、やはりどうしても自分のサッカー観を子どもに投影して「やらせる」ようになってしまいませんか。

渡辺「全部が全部ではないと思うんですが、そういうことは多いと思いますね。去年あるJのチームとやったときに、その方は引退してすぐ中1を見たんだけれども『わからない』と。わからないですよ、そりゃ。経験もないし。わかるわけがない。で、1年契約じゃないですか。ひょっとしたら 1月31日で辞めさせられちゃうかもしれない。すると、選手の方を向くよりも、解雇されないように上を向くんですよ」。

――そのときはどんなアドバイスをされたんですか。

渡辺「そのJチーム全体の指導方針があるじゃないですか。ところが僕のアドバイスというのは、その真逆を行ってるんです。だからアドバイスできないんです。だから『チームとしての育成の柱からずれすぎないように、個人を大切にしてほしい』とは言いましたよ。ただ個人よりもチームの結果が求められますから、個人を追及しているとクビになっちゃうんですよ」。


裸のJリーガー

【商品名】裸のJリーガー
【著者】大泉実成
【発行】株式会社カンゼン
四六判/256ページ
2018年7月11日発売予定
※発売日は変更になる場合がございます。


 

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