優れた“判断力”を持つ選手を育てるには、まず環境を整えよ。「このピッチ、このサイズのボール、このルールを与え、その中でプレーをしましょう」【8月特集】
2018年08月23日
育成/環境試合に近い状況を生むインテグラルトレーニングを行う
――一貫した指導環境という視点で見るとフットサル界でもそうでしょうが、サッカー界を含めてもすばらしいクラブづくりです。
須賀氏「今は、そこまで大きく喋る必要がありません。でも、最初の2〜3年の間は本当に大変でした。別のサッカーチームに通っている子も多かったので、頭を切り替えるのが非常に難しかったです。様々な価値観を持つ指導者の元でプレーしている子どもが集まっていましたから。『足の裏を使うな』と言われているんですけどとか。『なぜだかわかる?』と聞いても『わかりません』みたいことは日常茶飯事でした。ここ数年は環境自体が整ってきたのでフットサルというスポーツ自体の本質が出るようになってきています。
私たちは『いかに試合に近い状況につなげていくか』をトレーニングのテーマに掲げています。トレーニングの手法でいえば『インテグラルトレーニング』と呼ばれるものです。インテグラルトレーニングにはいくつかの手法がありますが、例えば、フットサルはシュートを打ったら次に相手のゴールキーパーからスローが始まり、すぐにカウンターが発動するというスポーツ上の特性があります。
例えば、フットサルはシュートを打ったら次に相手のゴールキーパーからスローが始まり、すぐにカウンターが発動するというスポーツ上の特性があります。だから、そういう要素をオーガナイズの中に入れなければなりません。2対1のトレーニングを行った場合、シュートを外した時は必ず3対2で守備をするような要素を加えます。そうなっていれば2対1で攻めた後に攻撃の2人はシュートを決めなければ必ずカウンターを食らうので、必然的に攻守の切り替えを素早く行って守備をどうするのかという対応をしなければなりません。つまり、そういうオーガナイズをすることで、なるべく試合に近いトレーニングをするようにしています。
そういう状況がオーガナイズされたトレーニングをたくさんしているので、試合の時も『自分の中の引き出しから似たような現象を引っ張り出してきて、この状況はこうだったからこういうふうにプレーしよう』という柔軟な頭脳を作ることができます。『こういう場合はこうなんだ』と言うよりは『こういう場合はこういうことが起こり得るね』というトレーニングの積み重ね方です。
即座にプレーを引っ張り出せるような柔軟な頭脳は、なるべく繰り返し似たような状況でトレーニングするから生まれると思います。あとは試合をやること。そういう環境づくりをすることで再現性が高いプレーが実行できるし、その中に『認知-決断-実行』があるからこそどれかにエラーがあったかが明確にわかります。それがなければ修正すべきことがわかりません。最終的には、どれがうまくいかなかったんだろうという点にフォーカスできるようなインテグラルトレーニングにはなっているのかなと思っています」
――フットサルというスポーツの特性とトレーニング環境で自然に学ぶ場が作られている印象です。今ジュニアチームに在籍されている選手は他のチームには籍を置いていないということですよね?
須賀氏「今年からはそうです。昨年からサッカーチームとしての登録をして、選手たちにとってはいきなりの選択だったので急な調整は難しいだろうということで、私たちも一年間移行期間を設けて選手と保護者に丁寧に話をしました。6年生についてはチームを移籍するのは難しい年齢だということはわかっていたので6年生は現状のまま、5年生以下についてはお互いにとって中途半端になるよりは『ここで一つに決めていただいて、どちらを選択するか』という決断をしてもらいました。ただ、うちはスクールも運営しているので、もちろんそこでもフォローできますよということは伝えています。
だから、来年以降はまた楽しみが増えていくはずです。これまでは選抜が入ったなどサッカーチームの都合で練習と試合の経験が積み重ねられない状態で、今一つチームになれない状況が起きてしまっていたから。来年以降は技術とか能力とかではなく、一つのチームとして機能性を持ってプレーできる環境が生まれるので非常に興味深いです」
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