「攻めること」ばかりに焦点を当てていいのか?日本に足りない守備の個人戦術

2018年09月03日

コラム

バルセロナやバイエルンのような華麗なサッカーは見る者を魅了します。子どもたちはそんなプレーに憧れ、鮮やかな攻撃のためのトレーニングを積みたいものです。しかし、指導者が『攻めること』ばかりに焦点を当ててもいいのでしょうか。(2016年)3月に、中野吉之伴氏が親交のある大豆戸FCの協力を得て指導者クリニックを開催しました。今回はその体験をもとに『守備の個人戦術』にスポットライトを当てて日本の守備を考察します。

文●中野吉之伴 写真●佐藤博之、Getty Images

『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol41』から一部転載


SARANSK, RUSSIA - JUNE 19:  Maya Yoshida of Japan and Radamel Falcao of Colombia  during the 2018 FIFA World Cup Russia group H match between Colombia and Japan at Mordovia Arena on June 19, 2018 in Saransk, Russia.  (Photo by Clive Mason/Getty Images)

技術と戦術と同様に攻守はそもそも切り離せないもの

 普段、私はなかなか日本のサッカーを見る機会がありません。たまに日本代表やJリーグの試合、また知り合いのチームの動画をチェックしたりするぐらいです。だから、帰国したときはさまざまなカテゴリーの試合や練習に足を運ぶようにしています。 そのとき、いつも気になる部分があるのです。それは日本でのゴールやチャンスシーンの見方についてです。
 
 テレビ中継に目を凝らしていると、解説者の方までもがサッカーを攻撃側の視点でばかり語っていはいないでしょうか?「素晴らしいコンビネーションでした」「○○選手の突破力はすごいですね」「電光石火の攻撃」
 
 もちろん、目の前の攻撃がうまくいったことを「褒めるな!」と言っているのではありません。ゴールは何がきっかけで生まれたものなのかを語るのは当たり前です。ただ相手が守備をほぼ狙い通り貫徹しながらも、攻める側がそれをすべて上回り得点に結びつけたのか。あるいは、ゴールを守ろうとしているチームが基本的な戦術ミスをしたがために起こったものなのか。そういう守備の観点からの考察も、同時に重要だと知ってほしいのです。
 
 そもそもサッカーは『攻撃』と『守備』とを明確に分けて考えられません。ボールを持っているときにも、奪われたときを想定としたポジショニングについて頭を働かせておかなければなりませんし、相手のボールを追っているときも、どこで奪うことができそうで、奪い取った場合、どう攻めに転じることができそうなのかと策を練っておく必要があります。
 
 そのため、トップレベルでは攻撃の過程でボールを失うことも想定に入れた戦い方が準備されているのです。だからこそ、相手がパスを狙っているにもかかわらず、曖昧な判断で当てずっぽうにパスを出し、ボールを失ってカウンターという図式は絶対に許されないものだといえるでしょう。
 
 昨今は、育成年代でもそのメカニズムをしっかり考慮し、順序立てたトレーニングを積むことが求めらています。
 
 まず小学1〜2年生までは大まかな形で 『やると、ピンチになってしまうプレー』と『できると、チャンスになるプレー』を覚えます。そこから守備戦術として『できないと、ピンチになってしまうプレー』、攻撃戦術として『できないと、チャンスにならないプレー』という観点で少しずつ引き出しを増やします。それらを、徐々につなぎ合わせていくことが大切なのです。

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