「攻めること」ばかりに焦点を当てていいのか?日本に足りない守備の個人戦術

2018年09月03日

コラム

KAISERSLAUTERN, GERMANY - OCTOBER 08:(L-R) Thomas Mueller, Antonio Ruediger, Lars Stindl of Germany and Ramil Sheydaev of Azerbaijan battle for the ball during the FIFA 2018 World Cup Qualifier between Germany and Azerbaijan at Fritz-Walter-Stadion on October 8, 2017 in Kaiserslautern, Rhineland-Palatinate.  (Photo by Matthias Hangst/Bongarts/Getty Images)

ドイツでは守備の戦術をどのように指導している?  

 ドイツでは、どのように守備戦術を指導しているのかを簡単にご紹介します。
 
 基本的に戦術は『個人』と『グループ』、 そして『チーム』とに分けられます。数学で例えると、個人戦術は足し算と引き算、グループ戦術は掛け算と割り算、チーム戦術はそれらを用いた連立方程式となります。
 
 足し算と引き算ができないと、掛け算と引き算ができず、そこで足が止まってしまいます。当然、その先の難解な数式には手が出なくなるように、サッカーも同じです。個人戦術の習得がとても重要であり、小学生の間に深いところまで身につけなければならないものです

 では、個人戦術とは一体なんでしょうか。 攻撃だとドリブルで相手を交わしたり、抜いたり、取られないようにキープしたりとある程度イメージしやすいかもしれません。
 
 しかし、守備の個人戦術ではどうでしょうか。イメージできますか?ドイツでは、次のような優先順位で守備を考えます。

1.ボールを奪う=マイボールにする
2.カットする=フィフティボールにする
3.ピンチになりそうなプレーをさせない

 
 大切なことは、この優先順位を知ったうえで、それぞれの状況に応じて、どのプレーを選択すべきかの判断ができなければならないことなのです。
 
 1対1の対応といっても、どれだけの局面があると思いますか?
 
 2003年に、私はドイツサッカー協会公認C級ライセンスを取得しましたが、そのときの講習会では『守備の個人戦術』に ついてこう叩き込まれました。

1.マークしている相手がすでにボールを持っているのか否か
2.相手との距離は近いのか、遠いのか
3.場所は敵陣か、中盤か、自陣か
4.サイドなのか、センターなのか
5.相手はゴールを向いた体勢をとっているのか、背を向けているのか

 
 この5つの状況に分けられ、それぞれの対応が整理されていなければならないのです。このような基準を知らないと、駆け引きも対応もできないはずです。
 
 悪い例として挙げたいのは、ボールを奪うのが一番いいからと、不用意にインターセプトを狙ったり、足元に飛び込んで相手に交わされてしまうことです。知人の指導者に聞いた話ですが、とある指導者講習会で「積極的にインターセプトを狙うべき」と教えられたコーチが、どんな状況でも構わずインターセプトを狙わせた結果、相手にどんどん裏を取られて失点ばかりになってしまったそうです。
 
 インターセプトでボールを奪えればベストですが、どんな条件をクリアしていれば、インターセプトできるのかがセットで習得されていなければ、守備戦術としては意味を成さないのです。
 
 気持ちが大事だ、ということばかりを強調し、スライディングタックルする子どもに「ナイスガッツだ」とそれさえすればOKだという印象を与えるのはよくありません。気持ちだけのタックルはアリバイの守備でしかありません。なぜならスライディングタックルをして相手に抜かれたら、その選手は次のプレーに関与できませんから。
 
 一度、地面に倒れてそこから立ち上がり、 体勢を整えて走り出すまでの間に、相手はもうシュートチャンスまで持ち込んでしまっています。スライディングタックルは最後の手段なのです。 「ここで滑らなければ、本当に危ない」そんな場面か、確実に奪える局面以外では使うべきではありません。重要な局面で 使えるようになるためにはチャレンジすることが欠かせませんし、その局面を知るには失敗が貴重な経験です。しかし、やみくもなものと、その背景を理解したうえでのトライとは分けて考えられるべきです。

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